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連載企画 儲けの出る製造業のカイゼン活動 (2)TPM活動が目的になっていないか

儲けの出る製造業のカイゼン活動の連載の第2回目はTPM活動の実態について、TPM推進者としてまたは生産技術者として工場を見てきた経験を踏まえ考察していきます。

TPM活動とは

TPMはTotal Productive Maintenanceの略であり歴史は古く、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会(JIPM)によって1971年に提唱されています。その活動は数人の小集団をつくり、様々なロスを発見し情報の共有、改善を進めて設備総合効率(OEE)を等の指標を高めるカイゼン手法で、組織のケイバビリティ向上につながります。また、社内外で大会も多く開かれており、賞を取られた現場の作業者の方々の誇らしい笑顔には見ている方も元気づけられます。

TPM活動自体が目的になっていないか

そのような日の当たる活動の陰で、解決したいことはあるがコストの問題や、技術的な問題で装置化が進まないサークル(小集団)や、活動をやりつくした装置などでは給油は継続しているものの、TPM活動の時間の大半を資料作成などに時間を割いているサークルを多く見かけます。TPM活動は主にSTEP展開を踏んでPDCAを回す仕組みとなっていますが(図1)、PDCAを回そうとするあまり初期清掃や現状把握がおろそかになり以下のようなことに陥っていることも多く見かけます。

①活動内容にかかわらず活動時間を決めてしまう為、負荷時間そのものが減少し、生産量が低下する
 ※図2でTPM活動時間を計停(計画停止)に組込み、生産可能な時間そのものが少なくなる
②清掃して終わり⇒STEP1が不十分で以降のSTEPでの活動のポイントがぼやける
③資料作成がメインと勘違い⇒現場の改善に時間が使われていない
④改善ネタがない(マンネリ化)⇒人材育成(教育)が目的となってしまう

特に図1のStep1にある現状把握、復元を十分に行わずに次の改善のサイクルに進むと効果が出ないばかりか改造コストだけがかかることがあります。過去に半製品の不良品が大量に出る海外工場の改善活動をさせてもらう機会があり、不良品発生率を10分の1にまで削減することが出来ましたが、その8割は設備の復元でした。設備の復元は地味な作業で継続性が求められます。また、新しい技術を発見したわけでもないので力感はほとんど得られません。TPMの手法に沿って初期清掃と現状把握をしっかりと行えばおのずと改善が進み、結果はついてくるこということが体感できました。TPM活動は、本来は非常に地味な活動です。目的をはっきりと定めて、STEP1だけでも表彰制度をつくるなど監督者(経営者)が放置せずしっかり伴走をすることが重要であると思っています。

内部改善だけでは儲けが出にくい現代の原価構造

TPMからは少し視点を引いて現代の原価構成を「中小企業の原価指標」平成16年発行(中小企業診断協会発行)の製造業総平均の製造原価構成比率で確認すると、直接労務費と間接労務費を合わせて16.9%しかないことに対して直接材料費は49.1%となっており、材料費が大半を占めております。吉川武文氏の書籍「管理会計実践マニュアル」によると100年前のフォードの例では労務費が約50%、材料費が37%ということから労務費の削減が至上命題であり労務費削減のための様々な手法が生まれてきたと書かれています。装置の自動化も進んでいる現代では昔と同じように設備稼働率などの内部改善だけでは経営に直結するような効果を出すのが難しい原価構造となっています。また、36協定や同一労働同一賃金など労働条件の整備が進んでいる中で作業者全員の自主的な参加を求めるには難しい時代背景もあり今後はより活動の目的の明確化が必要となってきます。

次回は小ロット化・納期短縮の目的について考察していきます。

【松田 陽介】

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