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連載企画 アフターコロナを見据えた企業・金融機関の動き(第3回)

 

 この連載では、アフターコロナを見据えた企業及び金融機関の動きについて、インタビューに基づくリアルな声をお届けしております。
 第3回目の今回は、アフターコロナに向け経営改善に着手している企業(以下B社と表記)についての記事となります。

1.B社の概況とコロナの影響

 B社は靴の小売業を営んでおり、『メンズ』『大きいサイズ』とターゲットを絞り込むことで固定客を多く確保しております。長い業歴の中で、東京と神奈川で2店舗経営するまでに成長をしてきました。しかし、コロナにより地方在住の固定客が来店できなくなり、またテレワークの拡大によりビジネスシューズの売上が落ち込み、大きな影響を受け赤字が生まれるようになってしまいました。

2.事業再構築補助金の検討

 落ち込んでしまった売上を回復させるため、既存事業である靴の小売業に関連する商品を販売することを検討し、シナジー効果の見込める事業への進出を検討しました。しかし、売上が大きく落ち込んでいる中、新たな分野に進出し、商品在庫を抱えることにはリスクがあると判断しました。このように、補助金を活用し新規事業に進出することは、メリットだけでなくデメリットもしっかりと検討した上で判断することが非常に重要です。

3.改善の方向性を再検討

 事業再構築補助金を活用した新規事業への進出による改善の方向性は無くなりました。しかし、コロナの収束が見込めない中でも、赤字が続いてしまう状況から一刻も早く脱却しなければなりません。どのような改善施策を実行すべきか、以下の観点で検討しました。

①売上面:売上は2店舗での売上とネット販売による売上がありました。コロナ前から半減してしまい、コロナが継続する限り大きな回復は見込めません。新たにメルカリショップでの販売を開始するなど販路の拡大は施策としたものの、売上を急激に回復させるのは困難という前提で、計画を立案する必要性があります。

②変動費:靴の小売業なので、仕入先は大手メーカーです。仕入の値引きや、販売価格の引き上げなど、変動費率を改善させる施策は取れません。

③固定費:売上・変動費を大きく動かせないため、P/L改善のためには固定費を削減するという施策しか取れない状況となりました。

4.固定費を削減する

 2021年10月の緊急事態宣言解除により、客足が少し改善しました。それでも、前年比50%から70%へ戻ったという程度でした。そこで、前年比70%の売上においても利益を出せる体質づくりをすることを目標とし、具体的に固定費の削減案を詰めていきました。
 勘定科目を1つ1つ確認し、人件費・交通費・光熱費など数千円単位から改善目標を立てていきました。例えば、OPEN~CLOSE時間を平日のみ1時間短縮することでも、アルバイトの人件費は月で数万円減少します。社長も積極的に案を出し、店舗間の移動を車から電車にするなど、細かいところまで削減案を実施するようになりました。
 このような細かい積み重ねにより、月の固定費が100万円減少し、前年比70%の売上においても利益が出る体質に近づいてきました。ここに、ネット販売による売上増加の効果が少しずつ出てくることで、黒字転嫁することになります。

以上、今回はアフターコロナを見据えて、『先行きが不透明だからこそ、現状においても利益を出せるよう体質改善をする』という選択をしたB社の紹介を致しました。コロナ蔓延当初は、融資を受けてじっと耐えるという選択を取った企業が多かったです。しかし、既に2年が経過し依然先行きが不透明です。このような外部環境を、体質改善の機会と前向きに捉えることができた点がB社の素晴らしい点だったと思います。                              


【北村 之寛】

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