協会活動のご案内

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 会報
  4. (連載企画)2050年の日本(第2回)

(連載企画)2050年の日本(第2回)

今号では、2050年の日本が望ましい姿となるために、以下レポートが示す課題について概観します。

1.三菱総合研究所「未来社会構想2050」(2019年)

 以下5点を実行できれば、2050年の日本は社会課題を乗り越え、「豊かで持続可能な社会」を実現できると述べています。

1)日本の良さ・強みを活かした世界への貢献

 世界は、覇権国がいない多極化した世界になり、新たな国際秩序の形成が必要になります。そこには、地球規模の課題解決に向け、各国の利害を調整するリーダーが必要です。
 この点こそ、日本が役割を果たせると述べています。その理由は、戦後の日本は、国際社会への貢献を通じて、文化や政治的価値観といったソフトパワーを培ってきており、他国から自発的に支援を集め、支持を獲得してきた事実があるからです。成長と安定を両立する社会モデル、社会課題を解決する技術など、日本の良さ・強みを活かすことが求められるとしています。

2)デジタル×フィジカルで新たな付加価値を創造

 日本の匠の技術などフィジカル面での強みと、デジタル技術を掛け合わせれば、環境や防災など世界の社会課題をイノベーションで解決することができます。
 そのためには、先鋭的な価値を創出する中小企業と、豊富な経営資源を有する大企業の融合が重要であり、さらに、人的資本の強化、デジタル技術を活用した経営の高度化など競争力の強化が必要だと述べています。

3)地域マネジメントを強化し、持続可能な地域社会へ

 デジタル技術が浸透した社会では、住む場所や通勤距離の制約が緩くなり、地方の県庁所在地などで人口が増加する可能性があります。このため、中核市などを中心とした圏域単位での地域マネジメントが重要になります。
 圏域内の市町村の特性に応じた機能分化と連携で、行政サービスを効率化・高度化すれば、個別市町村の強みをつなげ、地域の魅力を高める効果も期待できます。広域の地域単位で人材育成や研究開発など長期的な成長の種まきも可能になるとしています。

4)多様な価値観に基づく「自分らしい」暮らしを実現

 AI・ロボット化、労働市場のボーダーレス化で、人に求められるタスクがより創造的な領域へシフトするため、個人の能力と所得の連動性が一段と高まるため、厳しい状況に陥る人が出てくることが予想されます。
 そこで、ニーズに応じた個人の継続的スキルアップ、学び直しで、経済格差が教育や健康格差を増幅・固定化しない社会のしくみづくりが求められます。

5)人生100年時代を支える財政・社会保障制度へ

 2050 年までに健康寿命は約7歳伸びる可能性がある一方で、財政面からみれば、健康寿命の延伸だけではむしろ社会保障支出が増え、財政の持続可能性が危ぶまれると述べています。
 健康寿命の延伸と財政の持続可能性を両立するには、高齢者が社会で活躍できる環境整備や、社会保障制度の抜本的な見直し、社会保障分野以外の行政コストの見直しもあわせて進める必要があると述べています。

2.みずほフィナンシャルグループ「2050年のニッポン~課題を乗り越え、輝き続けるために~」(2017年)

 本レポートは、2050年の日本がめざすありたい姿を「誰もが安心して安全に暮らせる社会」とします。そして、この姿を実現するには、以下5点の課題を指摘しています。

1)持続的成長と財政健全化の実現

 ①日本の稼ぐ力を高める ②財政の悪化に歯止めをかける ③人口減少に歯止めをかける

2)日本が目指すべき社会像

 ①ジニ係数 ②相対的貧困率 ③健康寿命 ④失業率 ⑤1人当たりGDP ⑥ビジネス環境 を測る指標において、いずれも世界トップレベルを実現する。

 企業は、①株主 ②従業員 ③顧客 ④環境 ⑤社会 に配慮した経営を行う。

3)課題を乗り越えることで存在感の高まる日本

 人口減・高齢化、テクノロジーとの調和などは今後世界も直面する課題なので、これらを乗り越えた日本のソリューションをグローバルに展開すれば、世界から尊敬され、存在感が高まると述べています。

4)アジアの課題に寄り添い、アジアの発展を支える日本

 アジア各国は、今後、高齢化や都市の過密化など、経済成長や社会の活力喪失につながりかねない課題に直面します。

 そのとき、日本は、経済力ではなく、課題解決力でプレゼンスを示し、アジアの経済発展・社会的豊かさを支える存在になることが重要としています。

5)時間的猶予がわずか(今後10年が勝負)

 「ありたき姿」を実現するには、大胆な取り組みが必要不可欠であり、政府による環境整備などだ   けでなく、企業や個人の意識改革・行動変容が求められると述べています。

 そして、これまでも苦難を乗り越えてきた日本には、まだ十分チャンスがある、と結んでいます。

3.おわりに

 日々、目前のことに追われていると「計画におけるグレシャムの法則」に陥ってしまいます。2050年日本のありたい姿を示すレポートを読むと、当然ながら視野が広がります。

 一方で、課題解決の難しさも感じます。「中小企業」と一括りにはできない様々な会社がある中で、広い視野と深い専門性をもって、多くの人たちと力を合わせながら、1社1社と向き合い、漸進的ではあっても変わっていくしかないと、改めて考えました。

出典:本文中に明記したとおりです。

【関澤 充】

第1回はこちらからお読みいただけます

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

関連記事

活動のご報告