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(連載企画)トレンドを見据えた成長戦略(第4回) デジタル化との向き合い方

 一企業の努力だけではどうしようもない外部環境の変化があることは、コロナ禍が突き付けた、厳然とした事実の1つです。そして今、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、外部環境の大きなうねりは収束するどころか益々激しさを増しています。中小を含むすべての企業には、こうした外部環境の変化・トレンドに沿った戦略が求められます

デジタルの力は企業成長に欠かせないものの

 デジタルが加速しています。特にAIの進化は目覚ましく、人間の能力を超えるのもどうやら時間の問題の様です。こうしたデジタルの力は企業の成長には極めて有用です。ただ、そんな中、やれデジタイゼーションだ、いやいやこれはデジタライゼーションだ、今はデジタルトランスフォーメーションの時代だとか、カタカナ言葉も溢れています。そして、兎に角やってみなきゃ、早くやらなきゃ乗り遅れるといった雰囲気も強くなっています。しかし正直何が何だかさっぱり分からない、本当に役立つのかな、使いこなせるのかな、と半信半疑の経営者も多いのではないでしょうか。私もその一人です。20代にパソコン普及期を迎えた私は、パソコン通信やら何やら色々な事を比較的早い内から始めた積りです。それでも今、若い方の能力に全くついていく事が出来ません。早くやらなきゃ乗り遅れる的なメッセージが私には少し虚しく聞こえます。 

スマートに対する素朴な違和感

 思うにカタカナ言葉の多くはITベンダーが作ったものです。彼らは、その時々で流行り言葉を作り、顧客を煽ります。今はDXプロジェクトと称して、業務革新の為に投資しましょうと言う事なんだと思います。少し前にはスマート化という言葉もありました。人手を掛けてやっている業務を、センサーを使って、データを駆使して、自動化ツールを使いこなしてスマートにしましょう、と。しかし天邪鬼な私は、このスマートという言葉にも違和感があります。私は前職、総合商社に勤務しておりましたが、スマート商社にしましょう等とベンダーから提案されていたら、我々はスマートじゃないのか、と少しむっとしたでしょう。そもそもスマートって何だよと。寧ろそんな恰好いい言葉ではなく、デジタル化して、もっと合コンが出来る商社、海外出張でもう少し観光の時間が作れる商社にしましょう等と言われたら、提案を聞きたがる若い商社マンも多いのではないかと、愚考します。例えば、スマート農業という言葉の代わりに、孫の運動会をゆっくり参観できる農業とか、年金受取りの日に友達とゆっくりお茶出来る農業とか、そんな表現の方が高齢の農家の方にはしっくりくるのではないでしょうか。

いつやるか、必要と思った時にでしょ

 デジタル化は急速に進展しています。成長戦略実現に向けてデジタルの力を活用する事は極めて有効です。しかしDXの時代だからとか、若い人に受けがいいからとか、そんな理由で始める必要は無いと思います。多くの企業がシステム投資で失敗しているのも概ねこんな動機で始めたからに違いありません。リソースが限定される中小企業の場合、自社のニーズにきちんと即して行う事が肝要です。合コンや孫の運動会はさておき、社員の残業を減らしたい、歩留まりを上げたい、新しい顧客を開拓したい等、やりたい事や目標が、経営とデジタル推進者との間で明確になっている事が何よりも重要と考えます。

 デジタル化は日々民主化しています。これからも益々使いやすく、廉価になっていきます。もっといいものを、とずっと待ち続ける事も出来ます。だからこそ、デジタル化に踏み切るタイミングを決める唯一の物差しは、この課題をいち早く解決したいという切迫感であるべきと思います。

ロシアの侵攻後1年で見えてきたもの、最後に

 冒頭の枕言葉から始まるこの連載を開始したのは昨年夏の事です。あれから1年近く経ちました。地政学リスクの高まりに加え、物価高、急激な為替変動、人件費上昇等、激しい変化が現在進行中です。これからを予測する事は益々難しくなりそうです。しかし諦める訳には行きません。外部環境変化に対する感度を高める事、そして自らも変化を厭わない事、中小企業にはこうした姿勢が今まで以上に重要になるという想いを以て、連載してきました。少しでも役に立つことがあったのなら幸いに存じます。駄文にお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。

【小泉 孝朗】

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