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連載企画 コロナ禍、中小企業の支援に注力する地域金融機関について(第2回)

 

【はじめに】

 長期化するコロナ禍の中で資金繰りなど中小企業の経営を支えている地域金融機関を紹介します。今回はその2回目で平塚信用金庫(愛称:ひらしん)様です。
同金庫は県央地区8市1町に24店舗を有し、1932年の設立と長い歴史を持つ地域金融機関です。緊急事態宣言明けの10月初旬に(一社)神奈川中小企業診断士会の豊田稔理事(中小企業事業部)とともに、平塚信用金庫 営業統括部 地域・経営サポート課 課長代理 鹿島様、係長 猪股様にお話を伺いました。

なお、文中に特に断りがなければ2021年9月末時点の情報です。また図表・画像は上記を含め同金庫の「ホームページ平塚信用金庫について|平塚信用金庫 (shinkin.co.jp)」、プレスリリース、チラシより転載しております。

平塚信用金庫は「街のベストパートナー」を経営理念に掲げていらっしゃいますが、どのような金融機関を目指していらっしゃるのでしょうか?

 当金庫は『信頼される、地元になくてはならない、魅力ある』信用金庫を目指しています。「長期経営ビジョン2032」を策定し「ともに歩みつづける~街のベストパートナーひらしん~」をキャッチフレーズとして掲げました。ここには街の皆さまの暮らしに寄り添い支える、その中心的存在でありたいと願う当金庫の願いが詰まっています。
当金庫の特徴としては、まず、製造業のお客さまとの取引に厚みがあることです。営業地区内に『さがみロボット産業特区』があり、工業団地が数多く設置されていることも背景にあります。建設業や駅前の小売業のお客さまも多いです。また、当金庫は県央地区がメインですが、かながわ信用金庫さん、および、さがみ信用金庫さんと業務提携(愛称:TRIbank)し、県内エリアを強化しています。

自治体や公的支援機関などとの連携の状況はいかがですか?

 平塚信用金庫のコロナ禍で地域事業者へ情報提供をしたいという熱意に共感いただき、金融庁地域課題解決支援チームの協力で『神奈川・ひらつかダイアログ』を開催しました。この取り組みは国の施策・補助金・助成金などに関する対話を通じてコミュニケーションを図り、事業者様の知識を深めることを行っています。
 また、対話をメインにすることでコロナ禍でも事業者同士の交流が図れ、新たなネットワークづくりにも繋がっています。

 次に、地域内では、平塚市・平塚商工会議所・神奈川県信用保証協会との4者連携により平塚市内の中小企業へ包括的に支援を行っています。取り組みとしては、定期的に勉強会を実施し、互いの活動を共有したり、地域の課題に対して、各機関の共催にてセミナーを開催しております。

貴金庫は幅広い支援メニューを展開されていますが、特に注力されている領域は?

 創業、事業承継および経営者交流に注力しています。店舗窓口や自治体経由で創業の相談は多く寄せられます。ここ最近では小売業や建設業が多いですが幅広い業種で創業がみられます。

 創業支援の内容については、まず入口として、特定創業支援等事業として『ハンズオン支援』を行っております。内容としては経営・財務・販路拡大・人材育成など一通りの経営知識の提供や創業計画書作成の支援を行っております。

 そのほか、創業者向けセミナーも各種団体と共催し定期的に開催しております。また創業5年未満の方を対象にした『創業応援パッケージ』を用意し、業務効率化につながるインターネットバンキングの他、HP作成やビジネスマッチングが活用できる中小企業向け経営支援プラットホーム『ひらしんBig Advance』等を一定期間無償で提供しております。

 次に、事業承継です。経営者の高齢化と共に案件は多くなっています。承継ができず事業をたたんでリタイアしてしまう方も多く、対応が急がれます。

 しかし、日常の運営が忙しくて承継を考える余裕がない、子供が他所で働いているため後継者候補がいなくて諦めている、といった方が多く、経営者が自ら承継の相談に来られるケースは多くはありません。

 そこで、4月から、ご高齢の経営者には、後継候補の有無などにつき事業性評価シート(※)を用意してヒアリングを始めました。時には、支店長もヒアリングで陣頭指揮をとります。経営者からは『当社の将来をそこまで真摯に考えてくれているのか』と承継を前向きに考えるきっかけになったという声をいただいています。

 また、地域4者連携での取り組みも積極的で、公的な承継の支援機関(神奈川県事業承継・引き継ぎセンター)だけでなく、比較的大きな案件向けに民間の支援機関(事業承継センター(株))とも連携して、手厚い専門家派遣スキームを準備しています。セミナーも経営者向け、後継者向けに、親しみやすいような企画内容で工夫を凝らし開催しています。

(※)執筆者注:経済産業省のローカルベンチマークのように、財務情報および経営者に対するヒアリングベースでの非財務情報を一覧したもの。

 経営者交流にも力を入れています。中でも取引先事業経営者向けの『信友会』や若手経営者を対象に立ち上げた『ひらしん次世代ビジネスクラブ』など会員数は750名程度に成長しました。コロナ禍以前は対面による全体交流会や支店単位での交流会を実施し、異業種同士の交流を深めております。現時点ではコロナ禍の代替案として、前述の「神奈川ひらつかダイアログ」による広域な交流会などでオンラインの対話を通じて交流の場を提供しております。交流を通じて、異業種の方との人脈づくりやビジネスチャンス獲得につながったという声もいただいています。コロナ禍の収束以降は対面での実施を検討しており、今後も経営者同士の交流を深める機会も増やしていきます。

コロナ感染関連の支援で大変な繁忙感があると思いますが、事業者様の状況をどうみられていますか? 

 平塚信用金庫では定期的に事業者へ景気動向調査を実施しております。コロナ禍で二極化が進行し、飲食関連は厳しい状況が続いている一方で、明るさの見える業種もあります。

 まず、飲食関連では、借入残高が年商を超えている事業者様もいらっしゃいます。ゼロゼロ融資の後(※)も、収入が元に戻るかどうか、不透明な中、借り増しや返済据置の相談が多くなっています。

 昨年は、1年程度でコロナが落ち着くとみて借入したものの、どう返済していこうかと悩んでいらっしゃいます。ここには診断士を含め外部のコンサルタントへの支援ニーズがあります。他方、製造業では、ものづくり補助金や事業再構築補助金を活用し既存技術を応用して新事業分野へ進出するケースが増えています。また、リモートワークや移住ブームなどを背景に平塚市内では不動産に人気が出てきており、土地・建物の仕入れに伴う借入の相談があります。
(※)執筆者注:売り上げ減少など一定要件を満たす事業者向けの実質無利子・無担保融資。2021年3月末に民間金融機関による本融資の受付は終了。

既に診断士をご活用いただいていると伺っていますが、伴走者として診断士が充分機能しているか、など診断士への期待や要望、コメントがありましたら、お知らせください。

 当金庫では補助金関連の支援案件が増加しています。しかし、公的書類を作成することに経験が少ない事業者様が大半であることから、当金庫と診断士の伴走支援による対応が必要です。また、SDGsに関連した環境分野の補助金も増え、専門領域での知識・経験の不足等もあり、当金庫だけでは事業者様のニーズに対応しきれない状況です。補助金関連は引き続き診断士に特に協力をお願いしたい分野です。

 また、経営支援の仕組みについて期待があります。日々の事業運営に忙しく腰を据えて改善をすすめる余裕がない事業者様が多いのですが、そうした場合は診断士が企業の中に入って支援すると大きな助けになるのではと思います。短期のピンポイントでの支援も有効ですが、長い期間にわたって企業内に深く入るような支援であればより効果的です。顧問契約は費用が高めで長期のコミットが求められるため、ハードルが高く感じられるようですので、顧問契約とピンポイント支援の中間で、たとえばタイムチャージベースで必要な期間と回数を訪問してもらえるような仕組みがあると事業者様に喜ばれるのではないかと思います。税理士も経営改善の支援をされますが、数値面が中心になる傾向がありますので、診断士には実務と事業の近くでバランスのとれた支援を期待します。

 コロナ禍で苦しい飲食関連などの事業者様がどう困難を切り抜けていくか、診断士の皆さんから知恵を借りる機会が増えます。事業者様の中には課題認識が不明確な方もいらっしゃいますので、課題に気づかせ、解決のヒントをあたえてもらえればと、また、金融機関と一緒に伴走型で事業者様をガイドしていただければと思います。

【おわりに】

 ワクチン接種が進んできたことなどから、景況感を示す指数では全体的に改善がみられるこの頃ですが、実際には二極化が深刻化しています。そうした中で、事業者の事業存続・発展のために、地域金融機関は創業や承継などで知恵を絞られています。診断士には、より深く企業に入り込んでの支援を期待していることと理解しました。診断士への期待の大きさや具体的な支援のあり方について理解を深める有益な機会となりました。ご対応いただきました、鹿島様、猪股様に厚く御礼申し上げます。

【宮村康彦】

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