連載企画 コーチングスキル(第1回)
企業内・独立を問わず診断士として求められている重要なスキルの1つにコーチングスキルがあると私は思います。今回は2回に渡り、これまで私が実践・意識してきたコーチングのポイントについて紹介していきます。
【気付いたらコーチングの機会に溢れていたこの10年】
現在29歳の私ですが、思い返すと学生時代から今までコーチングの機会で溢れておりました。大学時代、個別指導塾での塾講師、家庭教師を3年間経験し、小学生から高校生まで約60名の子供達に勉強を教えてきました。大学卒業後は、大阪府内の公的スペースでロビーワーカーのボランティアとして高校生や大学生の話を聞き、進路・就職など将来のキャリアについて助言を行ってきました。そして現在、コロナ渦で苦しむ大学生を支援するため、キャリア支援活動に取り組んでおります。具体的には、エントリーシートの添削・フィードバックに取り組んでおります。改めて、これまで数多くの学生の方々と接する中で、日々実践の場で習得してきたコーチングについて紹介していきます。
【「答え」ではなく「気付き」を与えるのがポイント】
以前、大学入学を控えた高校生とお話をする機会がありました。その学生は勉強熱心であり、希望する大学への進学が決まり、大学進学後も勉強を頑張りたいという思いで英語の予習勉強に取り組んでおりました。そこまで頑張るということは、将来何か大きな目標があるのではないかと思い、学生に聞いてみた所、「将来はコンサルタントになりたいです。でも、まだどんな業界なのか具体的に分からないので、正直目標として良いのか自信がないです。」と仰っておりました。ここで、私が「コンサル業界とは~です。」と答えを出すのは、学生本人がコンサルについて理解することには貢献できるかもしれません。しかし、学生にとって「自信がない」という部分を解消できたかと言えば、解消できたとは言えません。
一方、このようなアプローチはいかがでしょうか。私はその学生に対し、「例えば、飲食店を始めたいという友達がいた場合、あなたはどういうアドバイスをしますか。」と質問しました。すると、学生から「お金はどうやって用意するのか。場所はどこにするのか。どうやってお客さんを集めるのか・・・を考えるよう、アドバイスします。」という回答が返ってきました。私は「どれも正解です。こういう風に企業の課題を経営者と一緒に考え解決していくのがコンサルです。」と返答した所、学生から「なるほど、よく分かりました。自分の言葉で説明できて、自分が思っている以上に色々な視点でアドバイスできると分かり、自信が付きました。」と納得した表情で答えてくれました。このアプローチでは、私から「答え」を直接伝えるのではなく、学生に質問を投げ掛け、自分の頭で考え、言葉に発信してもらうことで学生自身が気付いてもらうように努めました。
このように、コーチングの重要なポイントは、相手に「答え」を直接伝えるのではなく、「気付き」を与えることだと私は考えます。気付きを与えることで、納得でき自分のものになり、相手が成長できるきっかけになります。
【日頃の会話から身に付くコーチング】
最近では、街の書店でもコーチングをテーマとした書籍をよく見ます。勿論、書籍からノウハウを身に着けることは大事ですが、コーチングのスキルは何より日頃の会話での実践から身に付くと私は思います。私が塾講師のアルバイトを始めた10年前、私自身はコーチングということを意識していた訳ではありませんでした。しかし、個別指導塾ということで強みは子供達との距離感であったので、この強みを活かすために子供達との対話を重ねた結果、身に付いたスキルでした。
私の場合に限らず、コーチングスキルは日頃の何気ない対話の場面でも高めていけるスキルです。診断士として経営相談に応じる場合だけでなく、会社の同僚や部下との対話、親子間での対話など、対話をする限り、コーチングの機会があります。故に、書籍で専門スキルを学ぶのも大事ですが、日々の対話で自分なりにコーチング、まずは相手に「気付き」を与えるためにはどのような工夫が必要であるかと意識しながら対話をすることが重要であると思います。
次回も引き続き、コーチングのポイントについて紹介していきます。
【金谷 浩司】
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