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(連載企画)診断士における伴走型支援の在り方について(第2回)

 連載2回目の今回は「伴走支援の在り方検討会報告書」のⅠ章について深掘りしていきたいと思います。

「伴走支援の在り方検討会」においてまとめられた報告書

Ⅰ章目 「経営環境の変化が激しい時代における中小企業支援の在り方」
昨今、経営環境の変化はこれまでにもなくその度合いとスピードが高まっており、その変化は不可逆的になっています。報告書にある変化の具体的な例としては

① 技術革新の進展やDX

近年のデジタル技術の革新は非連続の変化を引き起こすきっかけとなっており、自動車産業におけるCASE(Connected:車の繋がる化、Automated:自動運転、Shared:シェアリングサービス、Electrified:電動化)やブロックチェーンや暗号化技術、ビッグデータ、機械学習、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、6Gの移動通信技術、ゲノム解析の進展など破壊的イノベーションを引き起こす可能性のある技術革新によって市場や競争環境が劇的に変化する可能性が高く、変化への柔軟な対応が求められています。

② SDGs、脱炭素(カーボンニュートラル)への対応

 SDGsを踏まえた経営や脱炭素(カーボンニュートラル)への対応は今や当然のものとなりつつあり、
企業も対応を迫られています。また、関連するもう一つの大きな流れとしてESG投資がありこれを企業が意識しておかないと投資の引き上げというリスクも存在します。

③ 国際情勢と政策の不確実性

 ウクライナ情勢による原油高や資材価格、食料価格の高騰、北朝鮮による弾道ミサイル発射、中国による台湾有事の可能性など予測困難な政治的変化が起きるようになっており、政策の不確実性の高まりも経済活動に影響を与える要因になります。また、安全保障を理由とする機微技術の範囲の拡大や流出防止策の強化、自国産業を中心に据えた産業政策が世界的に進んでおり、こうした要因も経済に大きな影響を与え得る要素であります。

④ 人口減少

 日本の総人口が2050年までに1億人を切ると予測されるほど人口減少が急速に進んでおり、それに伴って国内市場が縮小しています。特に地方での急激な人口減少は、地域経済、社会の維持を困難にする恐れがあり、更に労働力人口の減少によって、中小企業、小規模事業者は深刻な人材難に見舞われており、人手不足への対応は喫緊の課題であります。

⑤ 自然災害

 世界的に見ても自然災害の発生回数、被害総額とも拡大傾向にあり、特に日本は人口1人当たり災害被害総額が他国と比べて高い水準にあります。自然災害はビジネス上の大きなリスクであり、直接的な被害に加え、取引先の被災、物流の混乱、サプライチェーンの途絶など間接的被害も懸念され、臨機応変に対応するため、BCP(災害時の事業継続計画)を策定していく必要があります。

⑥ 新型コロナウイルス感染症

 新型コロナウイルス感染症の影響はいまだに大きく、経営環境を急変させている要因の一つと言って過言ではありません。ただでさえ不確実性が高まっている時代において、今後の見通しをますます立てにくいものとしています。そしてポストコロナ時代に向けて消費者心理や嗜好の変化、生活様式の変化などを踏まえて経営環境への対応が必要となります。

 そして報告書は、上記の例のような経営環境が不可逆的に変化する状況の中においては、企業経営の革新の必要性を説いており、日本経済が成長していくためには地域経済の担い手である中小企業、小規模事業者の活力を維持しなければなりません。不確実性の高い時代にあってはこうすればうまくいくという必勝の方程式(ビジネスモデル)を見出すことが困難となっており、様々な着想(アイデア)、基盤(シーズ)技術、人的つながり(ネットワーク)、売り方・買い方(マーケティング)等の経営資源を余すところなく活用して、付加価値の高い製品を提供し、適切に価格転嫁することにより、中小企業、小規模事業者のマークアップ率を高める形で中小企業経営モデルを再構築することが必要となります。
 そのためには中小企業、小規模事業者においても「経営力そのもの」が大きく問われることになり、経営者自らが、環境変化を踏まえて経営課題を冷静に見極め、迅速果敢に対応・挑戦する「自己変革力」が求められています。

更に不確実性が高く経営環境の変化が激しい時代において、中小企業、小規模事業者が経営改善や成長を追求することは限られた経営資源の中において、独力で行うことは難しく第三者による支援が重要となってきます。基本的に経営者、その支援者が取るべきプロセスとしては、「経営課題の設定→課題解決策の検討→実行→検証」であり、課題設定を「入口」として課題解決を「出口」とするものになりますが、必ずしも一方向に流れるものではなく、課題解決策の検討の過程で課題設定に戻ったり、実行の過程で解決策の再検討を行ったりというように、行ったり来たりすることになります。

出典:https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220315002/20220315002-1.pdf

 

 経営者に「自己変革力」が求められているものの、自社の経営問題としての意識を十分に持てず手が打てないとか、そもそも自社の経営課題は何なのかという意識すらできない中小企業、小規模事業者が多いのではないでしょうか。そこで「伴走支援の在り方検討会報告書」では変革を求められているのは中小企業、小規模事業者だけでなくそれを支える経営支援の在り方も、当然変革を求められると述べております。では、中小企業、小規模事業者を支える経営支援はどのように変革をしていけばよいのでしょうか。

 報告書では①経営課題の設定に対する支援の重要性、②経営者の「腹落ち」の必要性を説いています。順に説明をすると①については、これまで、直面する経営課題の解決策の検討、実行プロセスにおける支援が広く行われており、補助金申請サポートのような伴走支援も行われていました。これは従来型の産業構造の下では課題解決策が大きく外れることがなかったため、こうした支援が比較的有効に機能していました。しかし、経営環境の変化が激しく、複雑さを増した時代においては、企業の直面する課題は個々別々であるため、経営者が自ら課題を見立てることが難しく、これを誤れば課題解決策も誤ることになり、課題解決策の検討や実行プロセスから支援を行っても効果を望みにくくなってしまいます。そこで、そもそも経営課題が何であるのかということについての正確な分析から入らなければならない。また、課題解決に取り組んでいる中で、別の経営課題に直面し、その課題分析を行った上でなければ効果的な経営改善に至らないといったケースがあり、これまで他のプロセスと比べて支援対象としての意識が薄かった課題設定プロセスを、課題解決策の検討プロセス等と同様、あるいはそれ以上にしっかりと支援すること、経営者本人にとっての「本質的経営課題」にまで遡って特定、把握することが求められると述べております。

 続いて②についてですが、経営者の「腹落ち」すなわち、多くの課題を乗り越えていくためには経営者自身に困難な壁に直面してもやり切る意思、状況に応じて臨機応変に対応できる柔軟性、経営者の独りよがりにならず社内全体を巻き込む統率力等が求められます。リーダーシップ研究者 R・ハイフェッツ(ハーバード大)の考えに基づけば、既存の解決策が応用できる「技術的課題(Technical Problems)」ではなく、既存の解決策がなく、当事者のマインドセット自体を変える必要がある「適応を要する課題(Adaptive Challenges)」そのものであり、誰かに言われたことを鵜呑みにして課題解決にあたるのではなく当事者である経営者が十分に「腹落ち」(納得)していなければ、その考えや行動を変えることはできないことを意味しています。経営者が腹落ちすれば、「内発的動機づけ」が得られ、困難があっても最後までやり切ることができるようになり、結果として企業・事業者の「潜在的な力」が引き出され、それが最大限発揮されると述べています。

 上述のように経営者が「腹落ち」(納得)した状態に達すれば、経営課題の解決に向けて「自走化」できるようになり「自己変革力」を身に付けたと言えますが、経営者が独力で腹落ちに至ることは容易ではありません。多くの中小企業、小規模事業者に見られる自己変革を妨げる典型的な障壁(下図を参照)があります。そこで、第三者である支援者から課題設定プロセスへの支援を受けながら、課題解決に向けた取組に腹落ちしていくことになり、また、腹落ちに至った後のフォローも支援者が行うことで「自己変革力」の会得までしっかりとした道筋が描かれたことになります。

出典:中小企業庁経営力再構築伴走支援研修導入動画.pdf

 ここで、経営が危機に陥っていて、対策を講ずることが待ったなしの状況にある企業、事業者には速やかな収益力改善支援、事業再生支援、場合によっては廃業を促し、円滑な廃業を支援しつつ、経営者の再チャレンジを促すことなど経営者が腹落ちするケースばかりではなく、むしろ経営者が嫌がるようなことを敢えて迫る厳しい姿勢も必要となる場合もあります。一方、経営者の腹落ちを促すことで企業の潜在力を引き出すことは、比較的健全に経営が行われていて、事業の成長、持続的発展を目指している企業・事業者、経営改善が必要ではあるが一定の時間をかける余裕がある段階にある企業・事業者を対象とすることが適当なモデルと報告書は述べており、経営者の課題設定力を高め、経営者や従業員の腹落ちによる潜在力を引き出すためには、支援者による伴走支援によって経営課題の設定プロセスに重きをおくことで中小企業、小規模事業者の「自走化」を促すと報告書はまとめています。

出典:中小企業庁経営力再構築伴走支援研修導入動画.pdf

 Ⅰ章目のまとめとして、支援者が課題設定と経営者の腹落ちに支援の重きを置くことにより、経営者の課題設定力を高め、経営者や従業員の腹落ちによる潜在力を引き出し、中小企業、小規模事業者の成長力を一層高め、円滑な事業承継を促し、停滞している経営改善を後押しするといった実際の行動や成果に結びつく可能性を高めるものと考えており、自ら成長や持続的発展を実現できることが期待されるとしています。そして、中小企業・小規模事業者の自己変革力・経営力の発揮により、事業による付加価値を生み出す力を高めることは、従業員の賃金引上げや人材投資といった人的資本への投資余力を生み出すことにつながり、いわゆる新自由主義の弊害を乗り越え、大企業と中小企業・小規模事業者の共存共栄、人口減少に打ち勝つ地域経済社会の創出等により、日本ならではの「新しい資本主義」を実現することが可能となるのではないかとまとめています。

 最後に我が国421万企業のうち99.7%を占める中小企業・小規模事業者に対してこうした支援を行い日本経済の成長を促すことは中小企業診断士の使命であり、我々の存在価値であると私は考えています。次回はⅡ章以降の深掘りをしていきたいと思います。

引用:中小企業伴走支援モデルの再構築について 伴走支援の在り方検討会

【鈴木 洋路】

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