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コロナ禍中小企業の支援に注力する地域金融機関について ~きらぼし銀行様に伺いました~

【はじめに】

 長期化するコロナ禍、診断士の皆様が日々事業者様への支援活動に取り組まれている中で、資金繰りの相談は増えてきていること存じます。
 改めてここでお伝えするまでもなく、資金繰りの支え手は主に地域の金融機関です。しかし現在、金融機関がどのように支援を検討し実際取り組んでいるかを、私も含めた経験の少ない診断士にはあまり知られていないと思います。そこで今号から数回にわたり、県内の中小企業を主要な取引先とする地域金融機関に、コロナ禍の支援取り組み状況や中小企業診断士への期待をお伺いし、会報でご紹介することに致しました。
 初回は、首都圏に164店舗(135拠点、20年9月末時点)、うち県内では、相模原市を中心に36店舗を有するきらぼし銀行様を紹介します。きらぼし銀行は、首都圏に地盤を持ち、東京都民銀行・八千代銀行・新銀行東京の3行を母体に2018年に発足した新しい銀行で、「東京きらぼしファイナンシャルグループ」の中核銀行です。同グループは傘下にコンサルティング・出資・証券等の機能を分担する15のグループ会社を保有しており、一体となって幅広いサービスを展開されています。

 2月中旬に井上会長と共に、きらぼし銀行営業統括部長の佐藤雅史様、経営企画部広報グループ長の細谷徹様にお話を伺った内容を、以下の通り報告します。
 なお、文中に特に断りがなければ2月中旬時点の情報です。また図表は上記を含め「東京きらぼしフィナンシャルグループ・ミニディスクロージャー誌 第7期営業の中間ご報告」より転載しております。

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きらぼし銀行のビジョンは、首都圏地域NO1。どのような銀行を目指してらっしゃるのでしょうか?また、今年の展望をお聞かせください。

 経営理念として、「首都圏における中小企業と個人のお客さまのための金融グループとして、総合金融サービスを通じて、地域社会の発展に貢献します」を掲げ、お客様から真に愛される地域NO1の都市型地銀グループを目指しています。
 具体的には、金融サービスのみに留まらない「金融にも強い総合サービス業」をコンセプトに、グループ会社の「きらぼしコンサルティング」を活用して、創業・承継・M&A・IT・人材・海外展開など、事業者様の多様な課題やニーズに応えていきます。
 「きらぼしコンサルティング」は銀行や外部人材等により約80名の職員がおり、すでに独立したコンサルティング会社として活動できるような、地銀最大級の陣容に成長しています。コンサルティングを活かした多様なメニューをパッケージ化して営業店での展開を図っています。
 次に、「対話を起点としたビジネスモデルの構築」を掲げ、お取引先様との対話を起点に、提案を行い、信頼を得ることを重視しています。本業支援等にかかる提案を行う「ファーストコール先数」をKPIに設定し、2020年3月期は、対目標比2倍超のファーストコールを達成することができました。また、金融支援を超えた総合的なサービスを提供するために、メイン行としての取引先数を増やすことを推進しています。メイン行となることで、地域の事業者様を支える責務を果たしていきたいと考えています。

公的機関など社外との連携の状況はいかがですか?

 公共団体等が実施している中小企業向け支援施策について事業者様はご存じないことが多いものです。そこで、いわば、水先案内人として、事業者様へ最適な支援施策をピックアップして提案しています。その裏付けとして、公的支援機関への人材出向や、自治体と包括連携協定を締結するなど、連携体制を構築してきました。また、産学連携では、東京都立大学や日本大学芸術学部との実績があります。

事業承継やM&Aではどのような取り組みをされていますか? 

 「きらぼしコンサルティング」を活用し、経営者の思いを後継者へ伝えるために、税制面だけではなく、資本・会社体制のあり方まで含め提案しています。外部の専門業者に過度に依存せずグループ内でFA(ファイナンシャルアドバイザー:M&Aにおいて、買い手または売り手の代理人として携わる)業務を担うことで、ノウハウや人脈も蓄積してきています。M&A専業ファームとは違って、前捌きの事業支援から事後の統合プロセスへの支援、経営者の思いを定着させるところまで一貫したサービスを提供できるところが強みです。更にグループ内にファンドの組成・運営等に関する業務を行う「きらぼしキャピタル」があり、事業承継ファンドを機動的に活用できる体制も構築しています。

創業支援に特に注力されていると伺いましたが?

 「創業支援といえばきらぼし銀行」の実現へ向けて支援体制を強化しています。グループ内に専門部署を設置し、創業者・起業家に対して、金融相談はもちろんのこと、事業計画作成サポートや、特にベンチャー系では、創業後のネットワークの構築、いわゆる「クラブ化」などバックアップをしています。最近の取り組みとしては、東京ベンチャー企業選手権大会への協賛、本店のコミュニティ・スペースでベンチャー企業を対象にしたビジネスプランのブラッシュアップ大会の開催があります。また、金融支援においては、入口の資金提供だけでなく、「きらぼしキャピタル」でスタートアップ企業に対するファンドも保有し出口戦略も用意しています。

また、海外ネットワークも充実しているとも伺いましたが?

 「タイムマシーンモデル」として、日本の成熟した技術を海外拠点へ移転し新たな事業展開を行う手法を、事業者様へ提案していきたいと考えています。
 支援体制は、中小企業が高い関心を持つアジア地域において強化してきました。上海(中国)とホーチミン(ベトナム)にコンサルティング会社を設立し、また韓国大手銀行との提携などのネットワーク強化によって、現地企業とのアライアンス、ビジネス・マッチング、クロスボーダーM&A等の機会を提供していきます。

コロナ感染関連の支援で大変な繁忙感があると思いますが、現在の取り組み状況はいかがですか?

 昨年2月から緊急特別対策融資の取り扱いを開始し、3月に審査期間を原則3営業日以内にした「COVID-19きらぼしファンド」を創設し「休日相談窓口」も設置しました。5月からいわゆるゼロゼロ融資(セーフティネット保証による、実質無利子・無担保、限度額3千万円)が始まり、申し込みが殺到しましたが、感染第1波がほぼ終息した夏にピークアウトしました。直近では第3波の到来と融資限度額が6千万円まで引き上げられる中で、ゼロゼロ融資の申し込みが3月に期限を迎える予定です。期間終了まで案件増加が想定されますが、真摯に対応していきます。
 また、借り換え等で目先の資金繰りは耐え凌げるものの、コロナ禍の長期化に伴い運転資金の不足分が借入額に上乗せされるなど、さらに苦しくなるケースも見受けられます。そこで、昨年7月に専門部署を設置し営業店と一体となって、事業面だけでなく、経営者のメンタル面まで含めて寄り添うべく伴走型の支援を始めました。
 一方で、コロナ禍を奇貨として、長年の課題の解決に向けた動き出しもあります。これまでのビジネスモデルでは対応が難しくなる中、事業承継に真剣に向き合い始めた経営者もいらっしゃいます。以前は抵抗感が強かったような提案が、今は現実的な選択肢として議論できるケースもあります。たとえば、PE(プライベート・エクイティ)ファンド等と組んで、企業価値を高めた上で事業承継やM&Aなどを議論の俎上にあげることが出来るようになりました。また事業承継は、これまでは株式価値や相続税対策に議論が偏りがちでしたが、コロナ禍をきっかけに事業のあらゆる側面を検討する本来の形になってきました。

事業者支援のプロセスの一部において既に診断士を活用されていらっしゃると伺いましたが、伴走者として診断士が十分機能しているかなど診断士への期待や要望がございましたら、お知らせ下さい。

 まず、銀行側は診断士ができること、診断士の保持しているネットワークなどの情報が不足していて、取引先の事業者様へ診断士を紹介する際に、かならずしも十分な説明ができているとはいえない状態です。診断士も銀行も目指すところは事業者様の支援と、方向は同じで、お互いに補完しあえる部分があり、もっと知り合う必要があると思っています。例えば他の専門家との連携事例ですが、メインバンク化の取り組みに絡んで多くの借入先がある時に、どのように整理していくかのノウハウを弁護士や税理士に提供することで、双方の事業機会の拡大につながっています。診断士とも、このような取り組み事例のように紹介しあうような場があれば互いに有益ではないかと思います。

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【おわりに】

 取材を通じて、きらぼし銀行様には、コロナ禍の厳しい事業環境の中で、融資だけなく本業を支援するノウハウや体制が既に整い、その基盤が事業者様には大きな支えになっていると理解しました。今回のお話を通じて地域金融機関の活動や強みの多くを私も含めた診断士が知らないことに気付き、診断士へ広報する必要性をあらためて感じた次第です。
 金融機関とお互いに理解しあうことで、双方でビジネスチャンスを見出し、延いては地域への貢献にもつなげていくことができると思います。ただし診断士が地域金融機関のパートナーとして評価されるには、企業診断・事業計画策定等の診断士ならではの本来のスキルを更に磨く必要性も強く感じました。私自身も大変勉強になり有意義な取材でありました。
 最後に、取材にご対応いただきました佐藤様、細谷様、および取材依頼の窓口となっていただいた公共・政策法人部兼連携推進部の石井貴子様に、改めて感謝を申し上げます。

【宮村康彦】

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