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(連載企画)経営資源が限られる中小企業における経営管理の環境整備(第1回)

「そんなに困ってないから。」

 中小企業で経営を支援される方々がよくIT化や業務効率化を提案する際に、よく経営者から耳にするであろう言葉と思いますが、本当に困っていないものでしょうか。「~を…して、そのデータを~すれば、従来の作業時間が効率化できますよ!」と熱く語る支援担当者とのやりとりが現在、困っている事であるといわんばかりの顔をされてしまうことはよくあるかと思います。

1. IT化・効率化した際のメリットとIT化・効率化する面倒くささ

 上記のことがなぜ起こるのかというと、中小企業の取引や処理の量の少なさに尽きると思います。筆者がある日、半年ぶりに銀行にお金をおろしに行くと、年配の女性が自分の手帳を確認しながら大量の振り込みをATMに向かって入力していて、その女性は自分が帰るときまでずっと作業をしていました。もう最近では銀行へ行って、窓口やATMから支払業務を行う企業は、そんなに多くはないかと思いますが、納税関係や社会保険料関係などを窓口で行っている中小企業はまだ一定数いるかと思います。
 こういったことは規模が大きい企業や人的リソースがある企業はネットバンキングを開いた上で、そのネットバンキングでの支払作業も手入力ではなく、業務系システム又は会計系システムから出力したデータをアップロードして完了することが一般的ですが、中小企業ではこういった経営管理業務を行うのは規模が小さいほど社長や社長の配偶者の方がやられることが一般的です。
 そのため、それがどれくらい効率化に寄与するのか判断して、インフラや手順を整備することには相当の心理的なハードルが高く、それほどの時間と手間をかけるのであれば、現状の業務手順でいいと思ってしまうことが多いと思います。中小企業を支援する側はいかにIT化・効率化する環境整備・運用の提案を負担の少ない状態で中小企業が抱えている潜在的な課題に対する解決の手段として提供していくことが重要な役割の一つと言えます。

2.IT化・効率化の手段の選択

 では次に社長や配偶者の方が前向きに取り組んでくれるフェーズになった場合、既存のパッケージシステムを導入するのか、Excelなどで関数やマクロを作成して業務を効率化するのかという選択肢がでてきます。その際にはその業務に「法改正が関係するのか」、「他の外部システムと関連するか」、「運用済のパッケージシステムと関連するか」の3点が重要な判断基準になります。
 「法改正が関係するのか」は言わずもがなですが、毎年の法改正の把握、システムへの反映の手間や事業者ごとのカスタマイズ性などの点を考慮すると、該当する場合にはパッケージシステムを導入すべきです。主に給与計算や会計・税務系のシステムなどがこれに該当します。
 「他の外部システムと関連するか」は主に銀行系のネットバンキングや政府系のe-tax、el-tax、e-Gov等へデータのアップロードや電子申請する必要がある業務になり、この類の業務が“やると効率化になるけど、窓口いけばやれちゃうからIT化・効率化をやらずに放置している”中小企業が多いかと思われます。ネットバンキングを利用しての支払業務などはシステムから支払データ出力して、それをネットバンキングへアップロード、支払の実行処理を行えば100件以上ある振込が5分程度で終わるので、やっていないようであれば、どんな中小企業にも喜ばれるポイントだと思います。
 「運用済のパッケージシステムと関連するか」は上記の二つのシステムを導入するにあたって、シナジー効果が望めるシステムになります。あるシステムで管理運用しているデータベースや基本設定が連動して共有できる場合や処理がシームレスに連動できる場合は、導入コストと勘案して検討すべきです。
 それ以外のIT化・効率化については、例えば資金繰り管理や原価管理などの業務は事業者別に必要とするアウトプットが異なることや、業務フローから抽出したインプットする情報の粒度や形式が様々な点を考慮するとExcelなどでカスタマイズしながら環境構築を図るのがベストであり、この辺りの業務は従業員と共有しながら行う業務が多く、業務改善の提案をフレキシブルに取り込んで経営に活かしていくためにもExcelなどで業務を構築していくことにメリットがあります。

 次回以降、このパッケージシステム以外で対応する必要がある資金繰り管理や原価管理といった経営管理業務の改善に資するExcelでのテンプレートを作成して、公開したいと考えております。筆者がマクロを使用するスキルがないため、関数をベースに作成を行っていき、使用する方が状況に応じてカスタマイズを行い活用していただければと考えております。

【山盛 朋哉】

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