(連載企画)ベンチャー企業支援のいろは(第1回)
「中小企業診断士がベンチャー企業を支援する余地はあるのか?」
長くベンチャー企業に勤めていた独立診断士の筆者にとって、この問いは重要です。ベンチャー企業にはどんなニーズがあり、どのようなアプローチが正しいのでしょうか。本連載では今回から4号にわたって「ベンチャー企業支援のいろは」をテーマにその実態を紹介していきます。まず本号(111号)と次号(112号)で、沖縄県でベンチャー企業支援活動に従事していた小池俊介さんのインタビューをお届けします。
【小池俊介さんのプロフィール】
1979年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、金融機関にて融資・格付・融資営業のほか、創業・事業再生支援等に従事。2017年に退職後、沖縄県産業振興公社のコーディネーターとして沖縄発のスタートアップ企業支援に従事。現在、株式会社drivest代表取締役、株式会社フォレストファーム取締役、神奈川県よろず支援拠点コーディネーター。2011年4月に中小企業診断士登録。
-中小企業診断士になられた経緯を教えてください。
地元の信用金庫入庫2年目の時、返済ができず条件変更を繰り返す多くのお客様を目の当たりにし、根本的な経営改善のサポートが必要では、と感じました。その頃から企業支援についての勉強を始め、信用金庫在職中の2011年に中小企業診断士の資格を取得しました。
-なぜ沖縄県でベンチャー企業支援に携わることになったのですか。
時代の流れから勤務先の信用金庫にも企業支援の専門部署が発足し、私は課長職として、希望していた中小企業の経営改善支援に取り組めることになりました。非常にやり甲斐のある充実した仕事でしたが、管理職ということもあり社内向けの仕事が増え、徐々に企業支援の現場仕事から離れてしまう結果となりました。そこで「企業支援にもっと現場で取り組みたい」と一念発起し、全国に選択肢を広げて可能性を探したところ、たまたま沖縄県産業振興公社がベンチャー企業スタートアップ支援事業の専門家を公募していることを発見したんです。
沖縄県は開業率が高く、社会課題先進県という側面もあるため、その社会課題をベンチャー企業が解決するという取り組みに魅力を感じた私は、すぐに履歴書を送り面接へと向かいました。合格後に信用金庫を退職、沖縄県で開業届を出し、新たな生活を始めました。
-沖縄県では具体的にどのような活動を行っていたのでしょうか。
「新しいイノベーションで世の中を変える企業を沖縄から輩出する。」「沖縄県で6社目の上場企業を生み出す。」を目的とする5ヶ年のプロジェクトの、3年目と4年目を担当する専門家として私は参画することとなりました。私を含めた3名体制で「1年で10社、急成長を目指す企業を選定し、2年間ハンズオンで支援する」という活動方針でした。活動内容は主に伴走支援と、直接金融やソーシャルビジネスなどの啓蒙活動です。起業家へのメンタリングや顧客紹介、メディアへの接続など、中小企業診断士が一般的にサポートする領域に加え、エクイティファイナンスの支援や、ベンチャーキャピタルやエンジェルを招いたイベントの開催などを行っていました。
-ベンチャー企業支援で感じた特徴的な課題を教えてください。
一般的な中小企業の支援とベンチャー企業の支援で、唯一異なる点は「資本政策」です。通常、創業期における資金調達の支援は99%が日本政策金融公庫か保証協会の創業融資になりますが、ベンチャー企業は赤字状態を続けてでもシェア拡大を優先させる展開を志向するため、融資を受けられない可能性が高いです。この場合、資金を直接金融で賄う必要があります。そのため、起業家に対しエクイティファイナンスを支援することが極めて重要だと、この取り組みで強く認識しました。
(小池俊介さんへのインタビュー後編は、次号につづきます。) 小野 慎介
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