連載企画 「DXレポート2」から読み解く中小企業のデジタルトランスフォーメーション(第3回)
AI、IoT、5Gといった新たなテクノロジーが次々と生まれる一方、コロナ禍という大きな環境変化も起こり、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は喫緊の課題となっています。今回は、デジタル化社会において企業の目指す方向性と、すぐに取り組むべきアクションを見ていきます。
DX 推進体制を整備する「3つのポイント」
『DX レポート2』では、まず DX 推進体制を整備する必要があるとして、以下3つのポイントが挙げられています。それぞれ順番に見ていきましょう。
①関係者間の共通理解の形成
DX 推進にあたっては、経営層、事業部門、IT 部門が協働してビジネス変革に向けたコンセプトを描いてゆく必要があります。しかしながら現状を見ていると、「IT のことはよくわからない。詳しいことはシステム部門に任せてある」とデジタル活用に無関心な経営層・経営トップが依然として多いことに驚かされます。海外ではもはや、IT のことを知らない経営者は経営者失格である、といった言葉も聞かれており、デジタル活用は経営課題であることをあらためて強く認識する必要があります。
一方で IT 部門の方も、自分たちの仕事は既存の業務システムを管理することである、という意識が強く、デジタルを活用して経営課題を解決する役割を担っているという認識がまだまだ浸透していないように感じます。経営層は、まずこれら部門間が目線を合わせ、対等な立場で対話できるような環境やマインドを作ってゆくことが必要です。
対等な立場で対話するためのポイントとしては、変化する状況に俊敏に適応し続ける「アジャイルマインド」や、失敗を恐れずチャレンジする・失敗しても減点されないといった「心理的安全性の確保」を社内に根付かせることが求められます。
②CIO/CDXO の役割・権限等の明確化
CIO/CDXO とは、Chief Information(DX) Officer の略で、デジタルを戦略的に活用する提案や施策をリードする経営層のことを指します。なぜこのような役割が必要かというと、それは業務フローやシステム構築に「全体最適」が求められるからです。
企業活動には強みを活かして他社と差別化する「競争領域」と、差別化要因にはあまり関わらない事務作業などの「非競争領域」に分類できます。この「非競争領域」においては、いかにコストや時間を削減して効率よく行えるかという部分がポイントになるのですが、ここに適切なリーダーシップが欠如していると各部門がそれぞれ個別最適で縦割りとなり、結果として DX の目標である事業変革を妨げたり、独自開発や大幅なカスタマイズでコスト高になったりする懸念があります。
DX のためのデジタル化投資を行うためには、業務プロセスを整理し、場合によっては不要となる業務やシステムの廃止・統合まで検討する必要があります。こうした決断にはやはり、経営層の主導によるリーダーシップが欠かせないものとなることでしょう。したがって、CIO/CDXO の役割・権限を明確化し、これに基づいて適切な人材が配置する必要があります。
③遠隔でのコラボレーションを可能とするインフラ整備
今般のコロナ禍によって、リモートワークが急速な広がりを見せました。これは感染拡大防止の観点から有効であることはもちろん、今後のイノベーション創出においても大きな可能性を秘めています。
これまでも述べてきたように、DX による事業変革には製品やサービスを短期間で市場に投入するスピードが重要になります。そのためシステムは「作る」よりも「使う」「つなげる」という発想に転換し、外部のサービスや技術者とのコラボレーションを迅速かつ活発に行うことが求められるため、こうしたインフラの整備は今後も進めてゆく必要があります。
以上、駆け足でしたが今回は DX 推進に向けた、言わば基礎固めの部分をお伝えしました。最終回では、DX の先にある持続的成長に向けた中長期的取組みについて見ていきたいと思います。
【田中 将統】
この記事へのコメントはありません。