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連載企画第3回 横浜市の外資系企業

1.横浜市の外資系企業の特徴

 横浜市の外資系企業に関する連載記事も今回が最終回である。まだまだ浅薄な分析しかできておらず物足りない思いはあるが、ここで横浜市の外資系企業の特徴を取りまとめてみると次のようになる。
(1)横浜市の外資系企業の業種は卸売業が多い。
(2)他の地域と比較すると欧州の企業が多く、特にドイツの企業が多い。
(3)ドイツの企業の業種も卸売業が多い。
(4)外資系企業が立地している地域はみなとみらい地区と新横浜周辺に集中している。
(5)近年は情報・システム・ソフトに係る業種の進出が増えており、当該業種ではアジア企業の存在感が際立っている。

2.ドイツの卸売業が多い理由

 ドイツの企業が多い理由は、前回の記事で新幹線の新横浜駅と東京横浜独逸学園の存在が大きいことを挙げた。これは見方を変えると、外資系企業で働く外国人が子弟の教育環境を重視していることを物語っている。つまり外資系企業を誘致する場合には、経済的な利便性だけでなく教育や宗教などの文化面にも留意しなければならないということが類推される。
 ドイツの卸売業が多い理由は、同国の製造業の地理的な条件に基づく経営戦略も大きく関係している。日本国内では卸売業だが、親会社のある本国では製造業を営み、EUを主要な商圏として世界にビジネスを広げているような企業が多い。重要な生産拠点や研究開発拠点は、できる限りドイツ国内またはEU内に置き、日本を含むそれ以外の市場には製品の流通機能を置くという傾向が強い。これは、知的財産を保護し、メイド・イン・ジャーマニーのブランドを維持するという目論見があると推測できる。この点については、日本企業が海外進出する際には経営戦略の範とすべき点である。勿論、業種により企業の経営戦略には大きな差が生じている。具体的には、一部のドイツ系自動車メーカーは大規模なアッセンブリー工場をアジアの主要国に配置しているような事例があげられる。

3.みなとみらい地区の意義

 みなとみらい地区の外資系企業の集積を見ると、やはり将来を見据えたインフラ整備の重要性に着目せざるを得ない。同地区開発の基本計画である「横浜市都心臨海部総合整備計画」が発表されたのは1979年であり、その後、半世紀近くに亘って様々な紆余曲折を経ながら横浜駅東口から桜木町にかけての広大なエリアで大規模な開発が進められている。
 財政逼迫の中で、現在のPPP(官民パートナーシップ)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の先駆けとなる「民活法」(「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」)などを活用しつつ、造船ドックと貨物の引込線だった地域を国際見本市場、国際会議場、ランドマークタワー、大型客船ターミナル等の複合的な国際ビジネスの基盤に変容させようとしている。
 都区や市レベルで比較すると横浜市が全国4位の外資系企業数を保持していることは先に述べたが、みなとみらい地区の開発がこの外資系企業の集積に大きく与っていることは明らかであろう。

4.情報・システム・ソフト(以下IT系という)の外資系企業の動向

 近年IT系の外資系企業は、特にアジア企業の進出が多く、みなとみらい地区でもそれなりの存在感を示している。横浜市は、外資系企業の誘致に積極的な地方公共団体を政府及び独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が一丸となって支援していく「地域への対日直接投資サポートプログラム」の支援対象自治体に選定されおり、手厚い施策がこれらのIT系の外資系企業の横浜進出に寄与していることは言を俟たない。
IT系の外資系企業の業務内容を見ると、依然日本からのオフショア開発受注が大きな比重を占めていることは間違いないが、日本だけでなく米国企業等とも取引を行っている企業も多い。技術水準も高く最新の開発言語によるアプリケーション開発等においては、日本企業が後塵を拝するケースさえ出て来ているようである。

 横浜市は、これまでと同様に、今後も多くの外資系企業を引き付ける誘因を持ち続けるであろう。まだまだ時間はかかるであろうが、国際ビジネスが旧に復した時には国内外の企業の国際展開を診断士として支援できるよう周到な準備をしておきたい。  

【高木 富士夫】

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