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連載企画 「DXレポート2」から読み解く中小企業のデジタルトランスフォーメーション(第4回)

 

 AI、IoT、5Gといった新たなテクノロジーが次々と生まれる一方、コロナ禍という大きな環境変化も起こり、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は喫緊の課題となっています。最終回となる今回は、DXの先にある持続的成長に向けた中長期的取組みについて見ていきます。

IT投資を「協調領域」と「競争領域」に分別する

 DXの最終的なゴールは単なる「業務のデジタル化」ではなく、「デジタル活用による持続的な競争優位の確立」です。これを実現するためにはまず、IT投資を「協調領域」と「競争領域」に分けて考えることが必要であると、DXレポートは述べています。
 協調領域とは、たとえば経費精算や備品購買など、必要ではあるが独自性を持つことにあまり意味のない業務を指します。競争領域はこれとは逆に、生産や販売・サービスなど、他社との差別化要因となり売上や利益を生み出す業務です。DXを進める大きな流れとしては、協調領域は徹底的に効率化・低コスト化し、貴重な予算や人材を競争領域に投入することで成長を図っていくという方針になります。

協調領域は「標準化」「共通化」を目指す

  これまで日本のシステム開発は、受託開発によるオーダーメイドの自前主義が主流でした。しかしこの方式は時間もコストもかかるため導入ハードルが高くなり、これが日本のIT化を遅らせている原因のひとつであると筆者は考えています。一方最近では、勤怠管理や経費精算などの業務システムがクラウドサービスとして広く提供されるようになったため、これらを積極的に活用することが効率化への道筋であるといえます。
 このとき留意したいのが、カスタマイズは極力避けパッケージによる標準化を図るということです。よく「ウチのやり方は特殊だから、このシステムじゃ無理なんだよね…」と、IT導入に消極的な話が聞かれます。しかし効率化・コスト削減を進めるのであれば、既存の業務フローにシステムを合わせるのではなく、パッケージに合わせて業務フローを変えていくといったアプローチも必要になります。だからこそ、DXは情報システム部門だけの話ではなく、経営層や事業部門も一体となって取組む必要があるのです。
 またもうひとつ最近では、業界内の他社や地域と協調領域を形成して共通プラットフォーム化するといった流れも出てきています。たとえば競合する小売店同士で共同配送の仕組みを構築するといった取組みは、コスト削減のみならずCO2削減など社会課題の解決にも貢献します。特に中小企業では、個々の投資余力が小さくても共同投資によって充実したプラットフォームの形成が期待できるので、今後の重要検討課題といえます。

コロナ禍を契機に企業が直ちに取り組むべきアクション

 上記のような方向性を前提に、DXレポート2ではまず取り組むべきアクションとして、市販製品・サービスを活用した迅速な対応を推奨しています。代表的なカテゴリとして「業務環境のオンライン化」「業務プロセスのデジタル化」「従業員の安全・健康管理のデジタル化」「顧客接点のデジタル化」が挙げられており、これらのツールはコロナ禍における事業継続だけでなく、次回以降で解説するDXを推進するために必要となる社外とのコラボレーションや業務プロセスの再設計にも利用されます。

競争領域は「スモールスタート」「データドリブン」で進める

 協調領域はどちらかと言えば社内的・汎用的な性質を持つため、IT化を進めることは比較的容易です。対して競争領域は、顧客や社会の課題を見つけ新たな価値提供を行うことが求められます。この領域においては、まず課題がどこにあるのか、どのような提案が有効なのかを捉えることが難しかったり、またその課題は日々目まぐるしく変わっていったりと、不確実性が高い点が特徴です。
 そこで重要になるのが「スモールスタート」「データドリブン」という考え方です。課題を発見したら、まずは小さくても仮説としての製品・サービスを早期に市場へ投入し、データを取りながら検証すると同時にその結果を用いて改善を繰り返す。そのサイクルを、効率的にスピード感を持って進められる体制作りが重要となります。
 そのために必要なのが、外部との連携・パートナーシップの構築です。アジャイル(素早い)な開発体制、と口で言うのは簡単ですが、実際にそのような変革を社内で行うことは一朝一夕ではいきません。変革を確実に推進させるためには、対等な立場で活動してくれる企業や、必要な技術・ノウハウを提供してくれるITベンダーとのパートナーシップが不可欠となります。

以上、経済産業省「DXレポート2」の要点まとめでした。この記事が皆様の支援企業におけるDX推進の一助となれば幸いです。

【田中 将統】

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