協会活動のご案内

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 会報
  4. (連載企画) 中小企業のSDGs戦略 CSR監査 第1回

(連載企画) 中小企業のSDGs戦略 CSR監査 第1回

中小企業にもSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の波は押し寄せています。帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2022年6月調査、対象2万5405社)」によると、SDGsに積極的な企業は、大企業で68.6%、中小企業で48.9%に上ります。中小企業は20年調査(22.1%)から倍増しており、2社に1社が取り組んでいる状況です。

筆者は今年3月、城西国際大大学院の診断士登録養成課程を修了し、修士論文「SDGs経営を基盤にした中小企業生存戦略の有用性」でMBAも取得しました。その蓄積も基に、中小企業のSDGs戦略に役立つ情報を連載していきます。

■中小企業に厳しいSDGs

企業のSDGs戦略には「正の影響を最大化する戦略」と「負の影響を最小化する戦略」とがあります。前者は攻め(矛)の戦略で、SDGsを経営計画に盛り込んだり、脱炭素などの環境対策に取り組んだりして企業価値の向上や従業員の意識向上を目指すものです。後者は守り(盾)の戦略ですが、中小企業の場合、今、緊急度が高いのは、この守りの戦略、つまりリスク対策だと考えます。

SDGs自体は「国連が提唱する世界の諸問題を解決するためのキャンペーン」であり、取り組まない企業への罰則もありません。しかし、「SDGsが創り出す未来は、日本のものづくり中小企業にはむしろ非常に厳しいものになる」(森健人著『ものづくり中小企業のためのSDGs入門』)と言われています。

SDGsの17の目標群は消費者やサプライチェーンに対し、企業の監視を促すため、リスク回避できない企業は、代償を課せられ、市場から排除される場合もあるからです。

例えば22年春、レジ袋などを製造していた北陸地方のある中小企業は会社解散に追い込まれました。レジ袋製造で売上高10億円を上げていましたが、20年からのレジ袋有料化やコロナ禍の影響で事業環境が急変し、収益の大幅減少が続いていました。従業員は解雇となりました。

■「CSR監査」とは

「CSR監査」などの名目で、取引先に人権尊重、環境対応などを求める社も増えています。

セブン&アイ・ホールディングスは、「お取引先サステナブル行動指針」の下、調達先の従業員の働き方改革や外国人労働者の雇用、地球環境保全などの課題に適切に対応する、PB商品「セブンプレミアム」の製造委託先工場へのCSR監査を実施しています。

19年度は328工場、20年度は271工場、21年度は371工場(全体の約30%)で実施し、21年度の監査では、約92%の工場で不適合を計825件確認し、是正対応を実施しています(下表、セブン&アイ・ホールディングスのHPから転載)。「強制労働」「児童労働および若年労働者」「生活賃金(最低賃金)」「懲罰」の不適合を発見した場合は、取引中止勧告を行いますが、これはなかったそうです。

Apple(本社・米国)は、世界で最も厳しい基準を調達先に求めるといわれ、ホームページで公開されている「サプライヤー行動規範」は日本語で6頁、より詳細な「責任基準」は109頁に及びます 。行動規範の冒頭に記されているのは「労働者の権利」、次いで「差別の禁止」「ハラスメントや不当な扱いの禁止」「強制労働と人身売買の防止」です。

日本能率協会総合研究所の今年3月調査(回答155社)によると、大手企業(従業員2000名以上)の86.5%がアンケートかヒアリングの手法を用いて、取引先へコンプライアンス、CSR調達に関する取り組みの把握を行っており、特に製造業での実施割合が高い傾向にありました。

以上のように、SDGsの意識が高まるにつれ、中小企業は納入先から厳しく監視されるようになります。また、消費者の購買行動は、かつては値段やデザインに左右されましたが、いまや「社会問題や地球環境に配慮しているのかどうか」などの信念でも選ぶようになっています。

こうしたリスクの芽を早期に摘み取ること、診断士がそれを支援することが、中小企業では肝要です。

【遠田 昌明】

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

関連記事

活動のご報告