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(連載企画) 中小企業が知っておくべき組織作り 第1回

2022年に中小企業診断士に登録し、神奈川県中小企業診断協会に入会しました須藤弘幸と申します。

私の前職は百貨店のデパ地下のマネージャーです。部下は30名、取引先スタッフは200名を超える組織の指揮統制を長く行ってきました。まさに一中小企業の社長のような立場で年商40億円を超える現場のマネジメントに悪戦苦闘してきました。言う事を聞かない若手社員の接し方、仲たがいが絶えないチームの仲裁、競合に勝つ戦略立案から、メンバーのマインドの醸成など、組織作りに関わる障壁をいくつも乗り越えてきました。

今回、「中小企業での組織作り」をテーマに連載させていただくのも、前職での経験を背景に、中小企業の成長には組織作りの知識を再度見直し、真剣に取り組んでいく事が必要である、と日頃から考えているからです。将来的には中小企業の組織作りに関わる支援実現を通して企業と自身の成長につなげていきたいと考えています。

第1回:組織がダメになる理由と改善方法について

①中小企業の組織に関する実態とは?

大企業と違って中小企業は人材が豊富にいる訳でなく、現有戦力で戦っていかなくてはならないケースがほとんどだと思います。多くの中小企業では退職者が減らない、管理職が育たない、仕事を任せられない、社内でみんな仲が悪い、不祥事が起こるなど、人や組織の問題が絶えません。事業拡大どころか既存事業の維持すらままならない状況が多いと思います。社長も「ダメな社員は辞めればいい、優秀な社員がいつか入社してくれるし、組織よりもビジネスモデルや各人の営業力が重要だ」と思っているケースが多いです。

私の前職の上司もビジネスモデルにこだわり過ぎ、それを運営する組織に関心が薄かった結果、現場は常に人の問題にあふれ、管理職はその対処に追われる日々でした。会社に対する社員の不安感や不信感が常につきまとい、毎年何名かが退職し、社内は混沌としていました。中小企業のよくあるケースとして、会社がうまく行っていない時には人の問題だと捉える事が多いですが、実際は組織の問題で、正しい組織作りに取り組んでいない事が原因だと言えます。

②無策だと組織はダメになる

企業は事業を開始した時点では少人数で、仕事が増えるにつれて単純に社員を増やしていきます。しかし社員が増えると企業内では徐々にトラブルが増え、そのまま放置しておけば組織は少しずつ停滞し、売上や利益も踊り場状態になっていきます。社員数の増加により、いろいろな価値観を持つ社員が増えることで一体感が薄れ、現場の気持ちと経営の気持ちとの距離も出始めます。ここで管理職を中心としたマネジメント機能を充実させておかないと現場の漠然とした不安感や不信感が増加し、退職者も増えていきます。しかし、これは管理職が悪いのではなく、管理業務をやらせる体制作りとその教育を行ってこなかった会社の問題だと言えます。

また企業はもうかり出すと組織がダメになるリスクが増大します。もうかる事は理想的ですが、本気を出さなくても、管理職が機能しなくても業績が好調である状態には、いずれ組織を崩壊させる危険が潜んでいます。いざ状況が急変した時に組織は変化に対応しきれない可能性が高くなります。事業が好調な時こそ組織や人材を強化する必要があると言えます。

いずれにしても組織は常に対策を講じ、対処しておかないと組織を構成する人の価値観や行動がバラバラになっていき、気が付くと手に負えない状況になりかねないと言えます。

③組織の改善は定義と教育で解決する

ではこうした中小企業ではどのように組織作りに取り組んでいくべきでしょうか?それには「定義+教育」で組織を作っていくことが必要です。定義とは経営者が社員に伝えるべき一貫性のあるメッセージの事です。その大枠は「会社の健全な成長=社員一人一人のメリット」であることが前提になります。

また定義のベースとして、部下との信頼関係や心理的安全性が必須となります。その関係性の構築を行ってから以下の8つの定義を伝えていきます。それは(1)目的の掲示(2)目標の掲示(3)戦略・戦術の掲示(4)編成と指示(5)業務方法の掲示(6)期待能力の掲示(7)採用教育(8)実績の評価、と細かく分けられます。その定義には「みんなで協力し合ってこうやってもうけよう、こうすれば勝てる、だからこんな社員になってほしい、だからこんな企業文化を持とう」といった、全社員に納得性のある内容を盛り込む事が重要です。

教育は新任リーダーや課長職を対象としたマインドセットを中心とした内容になります。組織作りで核心的なポイントは、管理職がいかに自チームの部下が自主的に動けるように促せることができるか、何でも言い合える環境作りに積極的に取り組みお互いが成長できる風土が作れるか、です。

さらに管理職の仕事に対する幼児性を改善していく事が重要です。幼児性とは自分の気持ちや立場を優先してしまう弱い気持ちの事で、自己中心的でわがままに近い性格を指します。ここではいかに幼児性を取り除き、組織を目標達成に導くために真のリーダーとして役を演じ切るかがポイントとなってきます。
この定義の発信と教育を積み重ねていく事で中長期的に停滞化した組織を生まれ変わらせることが可能となってきます。そこには我々中小企業診断士のような第三者が入り込んでいき、経営層や管理職とのディスカッションを繰り返す事で改善支援できることも可能ではないかと考えます。

④中小企業の組織作りは難しくない

中小企業の組織の実態として、能力がある社員に仕事が集中して、そのできる社員がそのまま偉くなり、いつまでもプレイングマネージャーとなっているケースが多く見られます。そのマネージャーは仕事をバリバリこなしますが、日々実務に追われる事で自分の部下に対して関心が薄れ、自分以外は信頼できない状態に陥ってしまいます。結果的に社員はやる気をなくし、社員間のムードは嫌悪化、仲が悪くなり社員が辞めていくようになっていきます。この問題について会社は、会社についていけない社員、仕事ができない社員に原因であると誤解する傾向があります。しかし本当の問題は、マネジメントができないプレイングマネージャーや社員の幼児性、社員教育制度がない、商売で勝つ定義づけがなく社員の意識統一もされていない事、いわゆる組織作りに日々取り組んでいない事が原因として挙げられます。

一方、組織作りは組織定義を行い、管理職研修と幼児性をつぶす事で解決します。基本的な組織化施策として目標や戦略を定め、社員に納得性の高い組織定義を決め、全社員教育で幼児性をつぶし、機能するマネージャーを育て上げれば、自然と組織は生まれ変わる事が出来ます。

私も組織のマネージャーだった時、組織の目標に向かっていかに部下に気持ちよく動いてもらうか、自分の意見やプライドなどを消してでも部下を尊重し、守ってもらいたい約束を発信し続ける事で組織を動かし維持してきました。そこにはチームで勝つことを信念にし、マネージャー役を演じ切る事でメンバーが働きやすく成長できる組織作りをしてきたという自負があります。

最後に中小企業の組織作りは、いかにみんなで協力し合ってもうけていくかを目指していく事が重要です。それは経営者やリーダー層が自身を変える事により、現有戦力でどうやって勝ち組を作れるかにかかっていると思います。

次回は若手社員のマインドチェンジを促す社会と会社の歩き方について掲載します。

【須藤 弘幸】

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