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連載企画第2回 人生のやりがいを求めて中小企業診断士人生を歩む

小職の会社生活の経験を通して学んだことは、独立中小企業診断士として仕事を進める原動力になっています。企業内での経験で学んだことについて振り返ってみたいと思います。

韓国中小企業 前渡金要求、給与支払い遅延

一番の命がけだったのは、韓国の中小企業が倒産した時の経験です。東芝国際調達部時代、同じ課で大卒4年目の女性社員がビデオデッキのプラスチック製フロントパネルを韓国から輸入する仕事をしていました。従来は日本国内で金型を支給し外注工場に製造委託していました。しかし、三星や金星といった韓国メーカーが韓国内でプラスチック成型品を中小企業A社に製造委託し、価格競争力をつけていたので、東芝も韓国のA社へ製造委託を決めました。A社は東芝、三星、金星の三大メーカー向けにプラスチック成型品を生産し供給していました。平成 5 年初冬、A社から東芝に連絡が入りました。受注しているビデオデッキのフロントパネルの生産が遅れ、生産量を確保することはできない。納入後の支払いではなく、前渡金が欲しい。前渡金をもらえないと、材料を購入する資金がなく、材料が手に入らないので成形品ができない。話を聞くと従業員への給与の支払いも遅延しているとのこと。

オリンピックの後は不況がくる? 倒産社長は死刑?

なんで、そんなことになったのかと尋ねると、ソウルオリンピック終了後、不況の波が押し寄せ、三星や金星は生産縮小し、A社への仕事を引き上げたとのこと。また、社長は米国に出張中で、社長の弟が社長業務を代行しているとのこと。あとでわかったことですが、韓国では企業を倒産させ社長は死刑になる可能性が高いとのこと。A社の社長は海外逃亡してしまっていたのです。

戦争が始まる前に脱出せよ

東芝の女性担当者に倒産処理に韓国出張させるわけにはいかないという理由で、小職が代わりに韓国に飛ぶことになりました。その時の小職はお幼い3人の愚息の父親でした。当時、北朝鮮と韓国が軍事衝突するリスクが非常に高まっていて一発触発の危機でした。韓国出張の飛行機のチケットを受け取りに行った旅行代理店の担当者に尋ねました。「もしも戦争が勃発したら、日本に帰ってこれますか」その担当者のアドバイスは「戦争が勃発したら帰国はできません。金浦空港が閉鎖され韓国国外へ出れません。戦争が始まる前に必ず、出国しないと命の保証がありません」小職は命がけの出張に出かけることになりました。もう二度と家族に会えなくなってしまうかもという不安な気持ちでの韓国出張でした。

金型引き上げ交渉

日本では倒産企業の処理の場合、その現場にある金型(東芝の財産)は反社会的勢力が抑えてしまうことが多いと聞きましたが、韓国の場合、賃金をもらえていない、従業員が金型を押させてしまい、東芝に賃金にかわるお金の支払い要求をしてくるとのこと。東芝は、金型を引き上げ、それをプラスチック成型品を作れる代替の中小企業に移動設置しなくてはなりません。小職は東芝ビデオ工場の資材部長
らスタッフと韓国人通訳でA社に乗り込み、社長の弟との交渉に臨みました。東芝のビデオデッキの生産を止めるわけにいかないので必死の思いでの交渉でした。粘り強い交渉で、何とか着地点を見出して、金型の引き上げに成功しました。金型運搬用の大型トラックを 10 台以上手配し業務は完了しました。
この時は韓国の極寒の時期にあたり、身の危険を感じる毎日でしたが、3月末に無事に帰国しました。

韓国中小企業の倒産から学んだこと

1. 1社(または2~3社)だけに頼った経営ではその得意先が仕事を引き上げたら、事業の存続ができず倒産の危機に直面する。1本足打法の経営からは脱却しなくてならない。
2. 資金繰りに行き詰まると事業継続は困難になり、倒産の危機に直面する。
3. 好況な時であっても景気後退期のことを念頭に考え、安定重視の経営に徹すべき。
4. 海外進出する時は、カントリーリスクを常に考えること。
5. 経営者や従業員代表との交渉の成功に導くのは、相手の立場に立って、Win-Win の関係目指
して、誠意をもって交渉すること。(決して高圧的な態度で接してはならない)
上記は、現在、独立中小企業診断士として中小企業と接する時の教訓になっています。

【滝沢 典之】

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