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(連載企画) 矛と盾 – DXと情報セキュリティ 第2回

経営を戦いに例えるならば、常に攻め(矛)と守り(盾)のバランスを取り、限られた経営資源を配分していく、まさに“矛盾”を抱えながらも前へと進む営みです。IT・デジタルの分野で言えば、矛となる活動がDX、盾となる活動が情報セキュリティ対策となりましょう。

本連載では、4回にわたり、小さな会社(※)のDX・情報セキュリティ対策支援について、考察していきます。
(※)本連載では、従業員20名以下の事業者さんを「小さな会社」と呼ばせて頂きます。

連載2回目の今回は、公表されているデータや筆者の実体験をもとに、小さな会社におけるDXの実像に迫ってみたいと思います。

●進みはじめた「デジタル」、進まない「トランスフォーメーション」

こちらは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)より公開されているDX白書2023の副題です。現在の日本におけるDX推進状況を表現しています。白書に掲載されている、DXへの取組状況(従業員規模別)を見てみましょう。

<出典>IPA DX白書2023 10ページ 図表1-8 DXへの取組状況(従業員規模別)

こちらのグラフは、IPAが2022年度に実施した「企業を中心としたDX推進に関する調査」の結果に基づくものです。実施時期は2022年6月~7月、回収数は日本が543社、米国が386社。なお回答企業の業種比率においては、日本は製造業が41.4%で1位、米国はサービス業が37.3%で1位、と構成比に違いがあります。

図表1-8によれば、日本の従業員100人以下の企業においては、ほぼ6割(57.7%)が「取り組んでいない」と回答しています。一方DXの取り組みが先行する米国においては、「取り組んでいない」は23.8%(「わからない」を加えても35.9%)に留まっており、今後日本の小さな会社においても、DXの取り組みが加速する可能性は、低くはないでしょう。

●進まない理由は、今痛みを感じていないから?!

DX白書2023にも引用されている、中小企業基盤整備機構が行った2022年中小企業のDX推進に関するアンケート調査を見てみましょう。

<出典>中小企業基盤整備機構 中小企業のDX推進に関する調査 アンケート報告書 令和4年5月

調査対象は、全国の中小企業経営者、経営幹部(個人事業主等を除く)1000社。調査方法はWebアンケート調査。調査期間は2022年3月11日~18日です。

図-20によれば、小さな会社においてDXに取り組みにくい主な理由は、
①予算の確保が難しい、②具体的な効果や成果が見えない、③DXに関わる人材が足りない、④何から始めてよいかわからない、の4つとなっています。

これらの理由を、筆者の支援経験も加味して考察すると、
①予算の確保が難しい ⇒(緊急性を感じていないので優先的な予算は確保しにくい)
②具体的な効果や成果が見えない ⇒(解消したい痛みがはっきりしないので効果も見込みにくい)
④何から始めてよいかわからない ⇒(今困っていることがないので優先的にやりたいこともない)
というようにも読み取れ、そもそもデジタル化の遅れについてあまり痛みを感じていない可能性があります。

小さな会社においては、取引先とのメール、経理、労務、売上管理や受発注などのパッケージ製品等が使えさえすれば十分に業務が回り、業種業態や従業員数によってはPC1台で事足りてしまう場合もあります。このような場合、今以上のデジタル化やDXに取り組む動機は持ちにくいでしょう。

今後さらなる世の中の変化に応じて、小さな会社における取り組みがどのように変わってくるのか、注視したいところです。

●小さな会社でも”盾”は必要だが・・・

ここまで見てきたように、小さな会社においてはDXへの取り組みはまだまだ進んでいないのが現状ですが、たとえPC1台であってもIT機器を導入する以上、情報セキュリティに関するリスクは無視できないものとなります。

先述の図-20によれば、③DXに関わる人材が足りない、⑥ITに関わる人材が足りない、など人材不足も課題としてあげられており、潤沢な経営資源を持たない小さな会社においては、IT人材が確保出来ていない状況も明らかです。情報セキュリティ対策においてもある程度のITリテラシーは必要とされる為、DXの取り組みと同様に情報セキュリティ対策もあまり進んでいないことが推測されます。

さて、連載1回目・2回目と、”矛”といえるDXへの取り組みについて、小さな会社のおかれた現状と支援のあり方を考察してきました。次回からは、”盾”となる情報セキュリティ対策に焦点を当て、考察していきます。

【若杉 廣】

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