連載企画 工程設計とレイアウト最適化(2)
こんにちは!村上卓也です。生産技術開発を約30年行っていますが、その内の7年間はIE(Industrial Engineer)として新工場設計から工程改善、新工程リーダーの改善テーマ指導などに従事していました。前回は「製造工程のレイアウトは最後に決まる」ことをご説明しました。今回は、異なる面から「工程レイアウト」を考える、ことを述べたいと思います。
工程設計とSLP
工場設計・工程設計における「工程レイアウト」を検討するとき、最も大事な2項目、があります。皆様思いつくでしょうか。工程設計のプロなら答えはもちろん「安全・防災」ですね。「環境」を入れた方、これは良いと思います。最近は「安全・防災・環境」の3本柱で考えることが多いです。「コスト・生産性」はこれらの次です。「安全・防災」に十分配慮がなされたレイアウトが、まず優先されること、とても大切なことですのでコンサルタントであればしっかり認識していただきたいと思います。
では実務でどのように検討していくのか、それには古典的でありますがレイアウト手法の古典技術である「SLP(Systematic Layout Planning)」を用いることが良いと考えています。SLPは「運営管理」で学んだと思いますが、おさらいすると下図のようなステップを踏んで工程レイアウトを検討していく技術です。
①工程設計をなすための各工程の詳細なデータを集め分析する。
前回ご紹介したような、各工程、各機械設備単位で必要な設置面積(これには材料や製品の一時置き場を含む)を集めていきます。
工程単位で、通路や仕掛品用のスペースも考慮しておきます。
②工程アクティビティ関係分析
今回、ご紹介する部分です。工場を構成する各工程の様々な関係を分析、可視化します。
③スペースの調査
工程単位の面積情報と、工場建屋構造物、フォークリフトなどの動線が整合するか確認するために配置予定のスペースについて調査を行います。
④スペース関係図
各工程のアクティビティ関係を必要なスペース単位で並べた図を作成します。
⑤レイアウト配置
各工程のアクティビティ関係が最大限合理的になり、かつ工場建屋の制約と整合するような実際のレイアウトを決めていきます。前回ご紹介した各工程の詳細な生産能力や必要スペース、各工程間の運搬量や運搬のタイミングといったことが分かっていると、②を行うことで「安全・防災・環境」を考慮したレイアウトを実現することができます。
では、工程アクティビティ関係図について説明していきます。
工程アクティビティ関係図分析
製品を生産するには、通常複数~多数の工程が必要になります。工程の間には生産設備だけでなく、一時的な保管場所や各種ユーティリティ設備といった部分が必要です。これら各種の要素が「どれくらい近接していた方が良いのか」、「安全・防災面から“離れている”必要があるところはどれか」、「環境面から近接もしくは距離をとる工程があるのか」、ということを一覧にした図のことをいいます。
下図に自分が過去に工場・工程設計を行ったときに作成した「工程アクティビティ関係図」を示します。縦横に前工程から後工程まで必要な工程を並べていき、それらの近接性がA:絶対に必要~XX:望ましくない、までどのような関係があるか、理由と共に図にしたものになります。
基本的には、工程の順序に従って「A:近接性が絶対に必要」または「E:近接性が特に重要」となっていることが分かります。ワークの流れが集中するプレス機は比較的多数の工程と近接することが求められているといえます。一方で、「酸洗水槽工程」は主に「環境面の理由」で、他の作業者が作業する工程とは「離した方が良い」と評価していることが分かります。
以上のように「工程アクティビティ関係図」を作成することで、「安全・防災・環境」面での検討に抜けが無いこと、を保証しながら、効率的なモノの流れを作るレイアウトを考えることができる、ということが言えます。
SLPは「過去の技術」という見方もありますが、「統一的なシステムでレイアウトを検討する」という意味でこれより優れた技術がまだ一般化していないのも事実と思います。時に「コスト・生産性」を重視して、「安全・防災・環境」面が見落とされたり、無視されたりするときに、相手を納得させる良い資料になります。ご活用頂けると幸いです。 次回は実際の工場・工程レイアウトがどうなったかというところを紹介していきます。ではまた。
【村上 卓也】
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