連載企画 工程設計とレイアウト最適化(1)
初めまして! 村上卓也と申します。平成20年登録で、長く製造業に勤め生産技術の開発と現場導入を経験してきました。今回、機会を頂き、「工程設計とレイアウト最適化」の題で1年間連載を担当します。よろしくお願いします。
まず、工程設計と(工場などの)レイアウトが関係するのか?と疑問に思う方も多いと思います。実は工程設計を担当する生産技術者の間では、
「レイアウトは最後に決まる」
ということが半ば常識になっています。普通、家を建てたり、お店を作ったりするときは、「レイアウトをどうしようか」と最初に考えることが多いと思います。自宅のレイアウトを色々考えるのはとても楽しいですね。もちろんこれは間違っていません。ですが、工場の建設や新規の製造工程の構築、既存工程のリニューアルを行うときは「レイアウトは最後に決まる」ものなのです。本連載にわたって、このことが少しでも理解頂ければと考えて解説していこうと思います。
さて、工程設計とはどのような業務でしょうか。「運営管理」科目で若干触れるものの実務経験が無いとなかなか理解が難しかったと思います。
工程設計とは「ある製品を製造する」ときに材料、部品、にどのような加工を行い製品になるか、各工程に作業者は何人、何分(または何秒)作業をするのか、生産活動に必要な何(材料・部材)をどれだけいつまでに準備するのか、それらの情報はどのタイミングでどんなデータで接続されるのか、工程間の運搬と出荷はどんな手段で行うのか、といった「製品の生産」におけるあらゆることを決定するプロセス、またはその結果のことを指します。
なぜこのような複雑なことが必要か、というと新工場の建設や新規工程の導入には、まとまった投資が必要で投資を回収し、利益を生み出す必要があるからです。この投資は通常 3~7年程度で回収され、その後利益を生み出すよう計画されます。ですから、その期間(ざっと10年以上)は第一線の競争力を持った工場・工程であることが期待されますし、必要です。加工工程一つとっても、旋盤を複数台で加工するか、多軸マシニングセンタを使い、1回で加工してしまうか、または近いうちに射出成形に代わる可能性があるかといった製造技術を、要求品質を確保した上で設備投資と加工工数・必要コストを比較し、最適の設備とその配置を決定する必要があるからです。
以下に自分が過去実施したある製品の工程設計の要約図を示します(社名等は伏せています)。
材料・部材がどのようなプロセスを経て、製品になり出荷されるのか。
各工程に必要なスペースは何㎡か、各工程間で必要な材料・部材・中間製品の保管形態、必要な保管スペース、工程間の運搬はどのように行うのか、およそ生産活動に必要な多くのことを分析し、慎重に決定していきます。
ここまで様々なことが決まると基本的なレイアウト案が集約されてきます。
「レイアウトは最後に決まる」のはこのためです。次回は他に検討すべき点をみていきます。それでは。
【村上 卓也】
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