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連載企画 バックオフィスを変える小さな改善 (2)スケジュール管理ツールの運用見直し

私は企業内診断士として高等教育機関で、バックオフィス領域の業務改善とDX推進の担当をしています。本稿では、小さな業務改善の1つとしてスケジュール管理ツールの運用見直しを取り上げます。スケジュール管理にはホワイトボードや紙での手法もありますが、今回はデジタルツールでの管理を取り上げます。

1.スケジュール管理の見直しを取り上げる理由

言うまでもなくスケジュール管理はビジネスの基本です。その為、本稿のテーマ設定に今更何をと疑問を持たれた方もおられるかもしれません。事実、中小企業庁の調査*1においても、コミュニケーション分野のITツール・システムの導入状況は非常に高く、導入・導入中の企業を含めると7割を超えています。

<出典>中小企業庁「2022年度版 中小企業白書」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/chusho/b2_3_2.html

スケジュール管理の見直しをテーマに取り上げた理由の1つには、私がこれまで見てきた事例にあります。私はIT企業や現在の所属組織の情報システム部門で、スケジュール管理機能を含む社内ポータルの刷新や情報共有ツールの導入を担当してきました。業務効率化を目的としてデジタルツールを導入すると、ついつい「どのツールを使うか」「どんな機能があったらよいか」に目が行きがちになります。しかしながら、実際に導入・運用してみると、業務効率化の成果を上げるためには、運用ルールの設定とデータ活用が非常に重要であると痛感しています。言い換えれば、それらができれば、業務が意外なほどスムーズに進み、従業員が気持ちよく働ける労働環境を生み出すことができることを体感しています。特に中小企業は、限られたリソースを最大限に活用し、組織の業務が円滑に進むよう効率的に管理することが必要不可欠です。

以降に挙げる運用例は既に実践済みの企業も多いかと思います。しかしながら、小さな改善として取り組む余地のある企業もあろうかと思いテーマに取り上げました。

2.効率化を目指す運用の例

① スケジュール入力の必須化

スケジュール入力は、忙しいと入力が疎かになることもあります。また、従業員の年齢層が高い中小企業の場合には、オンラインツールへの馴染みが薄く反発もあるかもしれません。しかし、全従業員が入力し、少なくともスケジュールの有無を共有することには非常に意味があります。組織にネットワーク効果※2が生まれ組織全体にメリットを与えます。リアルタイムに社内外で誰もが予定を確認できることにより、従業員同士の連携がスムーズになります。また、上司や同僚がタスクの進捗を確認しやすくなり、適切なフォローアップが期待できます。

また、スケジュールは会議や外出だけでなく、ブロック(作業や至急対応のために予定を入れられないようにすること)も推奨します。予めブロックすることで、従業員が作業時間を確保でき集中できる為業務効率が向上します。また、多忙な部署や役職者に対して声をかけたい場合に、周囲が察したり、伺いを立てたりする必要が減る為、相互のストレスも軽減し円滑な人間関係を 生み出せる可能性があります。

② 入力ルールの設定

スケジュール入力のルールを統一することで、従業員全員が一目で情報を理解でき、混乱を防ぐことができます。例えば、必ず、対面会議/オンライン会議、場所、調整中/確定済、顧客、関係者、重要度を書くなどが上げられます。その際、入力コストがかからないようにスケジュール管理アプリケーションの機能を用いて、テンプレート化や選択式にすることも考えられます。

③ 定期的なスケジュールの分析

①入力の必須化 ②入力ルールの設定を行うことで、従業員のスケジュール入力が標準化されます。その結果、作業時間の可視化と業務分析を行うことができます。これにより、工程・工数管理アプリケーションを使わずとも、非効率な作業や業務の偏りの概略を把握し、時間の削減や業務分担の見直しができるようになります。

④ 日程調整ルールの設定

社内なのに日程調整のアポイントをメールやチャットで取り時間がかかる、スケジュールの空きを確認して会議を設定したのに断られる、そんなご経験をお持ちの企業内診断士の方はおられないでしょうか。①入力の必須化 に加えて、④日程調整ルールを設けることでそれらの課題を解決できる可能性があります。具体的には、スケジュールが埋まっていない場合は、部署・役職に関係なく誰でも相手に予定を登録できるようにすることです。但し、実現には組織上の上下関係や部署連携といった社内文化の変容が必要になるケールもあります。

3. 終わりに

スケジュール管理ツールは、中小企業にとっても欠かせないビジネスツールです。しかし、単にツールを導入するだけでは不十分です。ツールの導入だけでなく、その後のルール作りとデータの分析まで中小企業診断士が道筋をサポートすることで、全体の業務効率を高め、組織の生産性向上を目指せると考えています。

【髙木 明日香】

脚注:
*1中小企業庁「2022年度版 中小企業白書」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/chusho/b2_3_2.html

*2本調査におけるコミュニケーションツールの主なITツール・システムとしては、チャトツール、Web会議システム、タスク・プロジェクト管理ツール、グループウェアがあげられている

*3ネットワーク効果とは、ユーザーの増加が個々のユーザーが利用する製品やサービスの価値を向上させるという概念

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