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連載企画 儲けの出る製造業のカイゼン活動 (1)生産性を高めるとは

本連載では4回にわたり、「儲けの出る製造業のカイゼン活動」について考察していきます。

私は長く、生産技術者として日本国内の生産工場に駐在し、設備投資の計画立案や生産サイクルの短縮、あるいは生産現場の人たちと共にTPM活動に取り組んできました。また、年間予算の策定も改善アイテムの積み上げと実行で取り組んできましたが、経営層からは少しもPL(損益計算書)にヒットしていないと長年叱責を受けてきました。どのようにしたら工場の損益すなわちPLにヒットする活動となるのかを自身の経験も踏まえて整理してきたいと思います。連載は以下の4つ内容で進めます。

  1. 生産性を高めるとは
  2. TPM・QC活動が目的になっていないか
  3. 小ロット化・納期短縮の目的とは 
  4. スループットを出すカイゼンと簡易指標

連載1回目の今回は、「生産性を高める」について考察を進めます。

そもそも生産性とは

「生産性」をインターネットなどで調べていくと、必ず付加価値という言葉も見かけます。中には付加価値生産性という言葉もあり、会計学が専門ではない私にとっては混乱するばかりですが、生産性に関して中小企業庁の「経営力向上計画策定の手引き」(2023年5月1日)によると、

労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷ 労働投入量

と表現されています。また、付加価値に関しては中小企業方式では

付加価値=売上高-外部購入費用

と示されており、上記の営業利益+人件費+減価償却費を粗付加価値と説明している書籍を多く見ます。付加価値と聞くと何か特別な機能を追加することや使い勝手の良いデザインなどを想像してしまいますがそうではなく、上記式のようにはっきりと数値で表現されるものを改善していく必要性があります。

日本の生産性が低迷している

公益財団法人日本生産性本部のホームページによると、日本の製造業の生産性は、2000年ではトップであったものの、2021年ではOECD加盟国35か国中18位と順位の低落が続いており、米国の6割程度にとどまっていると書かれています。ビジネス環境の変化や労働条件の変化している中で、従来通りの改善活動や評価指標では十分に成果(利益)が出せなくっていることがうかがわれます。

作業者の労務費は固定費か変動費か

製造現場での改善を進めるにあたっては、材料費や労務費などの変動費に関してメインに進めていくことが多いと思いますが、労務費に関して昨今の雇用条件の改善などにより期間社員や派遣の方々に関して一定期間の雇用の後は簡単には契約を解除できず、正社員と同じように定時時間などの最低労働時間を契約しなければならないなど、昔のように生産量に応じた雇用形態は難しくなっています。また正社員は定時間が決められていることから残業や夜勤の早出などを除けば固定費として考えることが自然と考えられます。自身が工場勤務の監督職を務めていた時に外国人の上司に週単位の作業者の延べ人数を報告するように言われたことがあります。日本では体調不良などで多少は増減しますが作業者の数はそう大きくは変わりません。週単位での把握がなぜ必要なのか最初は全く意味が分かりませんでした。その上司はインドの工場も監督する立場で、彼らの工場では日本の工場のようにきっちり来るということがなく、また生産の負荷に応じて出勤する人数を変えている、毎日人数を把握していないと生産性の指標が大きく変化するため集計をしっかりしている、とのことでした。そのような話の中で日本ではフル稼働状態で生産しないと収益が出ないタイプの工場だ、いうことになり今後より設備稼働率を高く維持するように指示をもらいました。このことからも先述の生産性に当てはめてみても労務費は固定費として考えていかないと生産性は向上していかないことが考えられます。

結果として労務費は資産とも考えられ、有形固定資産回転率のように売上(出来高)を上げるなど、局所的な改善だけでは手待ちが増えるだけなので人的資源の効率性を高め、変動費などのコスト改善とあわせてスループットを増やしていくことが生産性を高めるということになります。

次回はTPM・QC活動の実態について考察していきます。

【松田 陽介】

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