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連載企画 工程設計とレイアウト最適化(4)

皆様、こんにちは!工程設計の村上 卓也です。本連載も最終回となりました。工場・工程を構築することを考える=レイアウトを検討する、上で重要なことは、①安全、②防災、③環境、④品質、
⑤生産性、の順番で考える、ことでした。その上でSLP(Systematic Layout Planning)を紹介し、実際にレイアウトに落とし込む例を挙げました。最終回の今回は、「現状のレイアウトをどのように改善するか」という例を挙げてみたいと思います。

実務における「レイアウト改善」はどのようなことを行っているか、少しでも参考になれば幸いです。
今回、例に挙げるのは、食品流通業の小規模倉庫です。米、もち米や砂糖、グラニュー糖などの一般的には低温~常温流通する食品を取り扱う倉庫です。

2023年にレイアウト改善を手掛けた食品倉庫です。一部要冷蔵・冷凍のものがあり、冷蔵室・冷凍室を備えていますが、小規模な倉庫です。
斜めマスになっているところは、2段ラックになっており、下段が右下、上段が左上の表示としています。

フォークリフトはありますが、通路をほとんど商品が占めており、台車によるピッキングを行い、トラックに積み込む作業を行っていました。

米、砂糖といった商品は20~30kgのものも多くあり、人手による運搬が作業者の大きな負担となっていました。

現状調査で、まず建屋規模の割に在庫量が多すぎる点は明らかでした。
また、2段ラックが少ないため、パレット平置きで1段しか高さを使っていない、在庫も多くありました。

保管している品物が多すぎる状態を解消するため、商品の P-Q 分析、回転率分析を行い、過剰在庫を見つけて適正在庫量にすることを行いました。適正な在庫量を割り出す仕組みを製作し、適正在庫量が把握できたら、レイアウト改善の出番になります。

上図が現状のレイアウト、次ページの図が改善したレイアウトになります。

①重量作業の軽減:20~30kgの商品を人力作業でハンドリングするのは、腰痛などの危険もありますし、積み荷崩れでのケガということもありえます。これらは2段ラックにパレットで収納し、フォークで荷役することとしました。ただ、現状のフォークでは十分な通路が確保できないため、小回りの利くリーチフォークをリースで導入し、重量作業をできるだけ減少させることを行いました。
②10kg以下の商品は台車でハンドリングすることとし、台車の動線を確保しました。
台車は図の左下から出発し(出入口があります)、右回りで移動していく間に商品をピッキングするようにしました。
③置く場所の3S (整理・整頓・清掃)と見える化:不稼働の在庫を処分し、整理・整頓を徹底的に行いました。その上で清掃を行い、食品を扱う倉庫に適切な衛生レベルを達成しました。

これらの施策を実行に移す前に、商品の十分なP-Q分析を行い、回転率が高い商品をアクセスの良い場所に置く。
回転率が中くらいから低い商品は本社倉庫から、供給するなど物流支援アプリを使用することにしました。

このレイアウトに行きつくまでに数案の検討、フォークリフトの変更など費用の必要な施策の提案、実行など、ご依頼いただいた経営者の方には大変なご協力をいただくことになりました。

施策の実行中は、整理・整頓の徹底を指導し、厳しい場面もありました。

ただ、結果的に
・重量作業が大きく減って、体の負担が大きく減った。
・衛生的な環境を保つことの重要性を確認した。
・非常に使いやすい倉庫となった。

といった感想を社員の方々から聞くことができ、「成功した」といえる事例となりました。

このように「工場・倉庫のレイアウト改善」は大きなメリットを生むことができる施策の一つです。これからはAMR・自動ラックの普及など、レイアウトに求められる機能も大きく変わる可能性があります。新しい技術を常に取り入れ、新しい「あるべき工場・倉庫を造る」ことを行っていきましょう。
皆様とお会いできることがあれば嬉しく思います。有難うございました。

【村上 卓也】

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