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連載企画 診断士によるDXのポイント (1)まずは業務プロセスの可視化から

DX(デジタルトランスフォーメーション)というキーワードは今や聞かない日はないほど、どこの現場でも求められています。筆者は、23年間IT系企業で従事してきました。IT企業(ベンダー)の立場からユーザー企業の立場まで業務改善に携わった経験から、診断士として診断先企業のDXを加速させるためのポイントについて連載いたします。特に、「ITを専門としない診断士」がどのようにDXに関わり主導できるのか、といった視点を中心にお伝えします。

1. DXにおける課題

DXとは「企業がデジタル技術を活用して、業務プロセス、製品・サービス、ビジネスモデル、さらには組織文化や風土を変革し競争力を強化すること」を指します。一言でいうと、デジタルを活用することで企業の課題解決を目指した活動といえます。ITはあくまで手段となります。そのため、企業の課題認識を起点としてデジタル化へ取り組む必要があります。

以下の図は、2017年と少し古い情報ではありますが、IT人材の所属状況を表しています。約72%がIT企業(ベンダー)に所属しており、欧米と比べユーザー企業内にIT人材が不足しているということを示しています。現在もこの傾向は概ね変わらないと考えます。

<出典>「IT人材白書2017」(独⽴⾏政法⼈情報処理推進機構)

このことから、これまでのIT化はベンダー主導で進められてきました。ユーザー企業もベンダーに頼らざるを得ない状態が長く続いてきました。「2025年の崖」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。長年ベンダーに依存してきたことで技術者のリタイヤ等でシステムがブラックボックス化し、システムの刷新ができず、その結果2025年には年間12兆円の経済的な損失につながるといった問題です。中小企業におけるDXでもこのような状態に陥らないようユーザー企業で主導権を握りつつ、最終的にIT人材の内製化を目指すことが理想となります。

2. DXに向けた最初の一歩

下記の図(筆者作成)はDXの流れを表しています。必ずしもIT人材による支援が最初から必要というわけではありません。

DXの出発点は、企業の現状の業務プロセスを詳細に整理し把握することからはじまります。業務プロセスを可視化することで正しく現状業務の共通認識を持つことができます。その上で、現状の問題点やボトルネックを明確にし、課題を設定することにつなげます。次に最終ゴールの設定を行います。可視化した現状の業務プロセスを変更後のイメージとして可視化します。その際、経営者と経営目標や中期経営計画などを踏まえた目標値の設定から、デジタル化の方式の実証検証などを実施し方針を決定します。

これら現状分析から最終ゴール設定における活動はユーザー企業の経営者からビジネス部門を巻き込んで実施していく必要があり、この部分を中小企業診断士が支援しベンダー等のIT人材との橋渡しをすることに意義があると考えます。

3. プロセスの可視化手法(BPMN)

このうち、最初の現状分析(AS-IS)における「現状プロセスの可視化」の具体的な手法について紹介します。現行の企業内の業務プロセスを可視化する上で、一般的な手法としてBPMN(Business Process Management and Notation)という表記法があります。BPMNは国際標準(ISO19510)に基づいており、標準化された表記法のため誰が見ても同じ意味として伝わります。したがって、通常の業務フローでは人により解釈に曖昧さが生じる可能性がありますが、それを防止することができます。以下の図(筆者作成)は具体的なBPMNのイメージ例です。

実際にBPMNを作成する際の詳細な表記ルールはありますが、簡単にまとめると以下の通りです。

■BPMNの記述ポイント:
・関係部門別に分別しステークホルダー別にアクティビティを表現します。
・各アクティビティは、極力細分化し業務タスクやアクションの単位とします。
・業務に判断の分岐や例外作業がある場合は、条件分岐等の表現を用います。
・業務の流れ(実施順序)とデータ自体の流れは矢印を分別して表現します。

このように、業務プロセスを視覚的に表現することで、顧客の業務を直感的に、かつ正確に表現できます。これを作成することで、その後のデジタル化に向けたインプットの情報として活用できます。そして、ビジネス部門とIT人材との共通認識を可視化したものとなりますので、その後の認識のズレを防止することにつながります。

3. まとめ

DXにおいてユーザー企業側が主導で実施することの必要性とそこに対する診断士として期待される役割について紹介しました。特にDXへ着手する上で業務プロセスの可視化方法についても理解しておくことで、診断先のDXをスムーズに実施していくことができますので、ぜひ積極的に活用いただければと思います。

次回は、DXに向けた内製化の促進とローコード/ノーコード開発の活用について触れたいと思います。

【恩田 雅】

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