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(連載企画)トレンドを見据えた成長戦略(第2回) 「推し地方」を作る

 1社の企業努力だけではどうしようもない外部環境の変化がある事は、コロナ禍が突き付けた、厳然とした事実の1つです。そして今、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、外部環境の大きなうねりは収束するどころか益々激しさを増しています。中小を含む全ての企業には、こうした外部環境の変化・トレンドに沿った戦略が求められます。

地方を見直してみる

 急速に円安が進行しています。輸入部品の価格高騰に苦慮している製造企業も多いでしょう。食糧争奪戦も激化しています。輸入食材をどの様に工面するか、為替とのダブルパンチに苦しむ食品関連企業も多いでしょう。そうした中、国内について見直してみるのも一案です。為替の懸念は不要ですし、安全保障上のリスクもありません。神奈川県は首都圏に属している為、意識する機会が少ない人もいるでしょうが、国内の地方、特に非都市部の疲弊は年々深刻さを増しています。神奈川県の企業や人材に対する地方の期待は想像以上です。彼らは皆、首都圏企業との連携を望んでいます。しかし、地方に工場を作るとか、わざわざ高い国内品に切り替えるとか、こんな一足飛びの国内回帰をイメージして尻込みする会社も多いかもしれません。又、自社の活動は地方とは無縁と思っている会社も多いでしょう。
 もう少し気軽に、幅広に考えてみてはどうか、と思います。

地方との関係企業化

 交流人口・関係人口・移住人口という言葉をご存じでしょうか。大雑把に言えば、交流は観光目的、移住は文字通り移住。関係人口はその中間。よく例えられるのは、A温泉に行った夫婦が帰り道で交わす会話は「あー、やっぱり温泉はいいね。次はどこの温泉に行こうか?」これでは一過性の交流でしかありません。「A温泉のBさん、今年も元気だったね。来年も又A温泉に来ようね」関係人口とは、こうした特定の地域に対する継続的な関心や関係を持ってくれる人を指します。交流から始まって、関係人口化し、いずれは移住も、というのが地方の期待です。
 私の提案は首都圏企業も特定地方の関係企業になってみましょう、というものです。イメージとしては、例えば地方の製造業企業に技術指導を行って、原価低減の進展に応じて少しずつ調達量を増やしていく長期の契約を結ぶ、その土地の食材を継続的に扱う、その地方の特産品を使ったメニューを地元と一緒に開発する、企業版ふるさと納税を活用する、社員報奨としてその地方への旅行券を毎年出す、店舗やHP等でその地の魅力を発信し続ける、社員有志がお祭りに毎年参加するのを後援する、そんな感じでしょうか。
 首都圏の企業がそれぞれに自社の「推し地方」を持って出来る範囲で応援する、こんな事からでも、地方にとってはとても有意義な事です。

若い人達が後押し

 と、まあ勝手に申し上げましたが、この背景には本年3月迄福島の原発被災地支援組織に出向していた経験があります。ご案内の通り、原発被災地とは、3.11以降居住を制限されている、されていた地域ですが、制限の解除後に人口減少や高齢化が急激に進んだ地域でもあります。出向先で私は、被災地復興にはより多くの企業や人の関わりが大事と、首都圏からの呼込みを推進してきました。様々な施策で訴求していますが、それでもまだまだです。
 そうした活動の中で、感心した事の1つは、大勢の若い人達がはるばる被災地を訪ねに来る事です。彼らは地方部の価値を経済的な物差しだけでなく、社会や環境の観点からも見ています。食文化の継承、生物多様性の維持、CO2を吸収する緑地帯、人間らしい健康的な生活環境等、財務諸表の外にある地方の価値を重んじ、効率性の追求だけではサステナブルな社会は出来ないと彼らは本気で思っています。加えて被災地の場合には、多くの社会課題に通じる題材も沢山あります。そんな所に惹かれて、彼らはやってきています。彼らが社会の中心になるのもそう遠くありません。地方を応援する企業への評価は更に高くなっていくでしょう。経済的な見返りが足りないと躊躇する企業も多いと思いますが、長期的には経済性もついてくるのでないでしょうか。
 海外情勢が不透明な今、地方との関係強化は、成長戦略の選択肢になりうると考えます。

【小泉 孝朗】

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