
(連載企画) データ活用経営のすすめ 第2回
近年、業務のDX化が注目される中、特に中小企業にとって、そもそもデータをどのように取り扱うべきか、という課題が浮かび上がってきます。前回の記事では、データ活用経営の基本として、そのメリットや課題や中小企業の現状について触れました。今回は、中小企業がデータ活用を進める上での第一歩として、業務プロセスの可視化とその際のポイントについて掘り下げていきたいと思います。
【1】なぜ業務プロセスの可視化が必要なのか?
経営者にヒアリングすると現場の業務の詳細や問題を把握していないケースもあります。可能であれば現場に行き、担当者に業務プロセスの詳細をヒアリングして業務プロセスを明らかにすることが重要です。業務プロセスを明確にすることは、データ活用の土台となるステップとなります。各部署の担当者の業務プロセスを明確化した後に、各部署間の連携が分かるように業務プロセスを可視化することで、業務プロセスの中でどの部分に時間がかかっているのか、どの部分で問題が多く発生しているのか見えてきます。このように業務全体の地図を得ることで、改善の方向性を明確にすることができます。また、業務の流れを理解することで、どのようなデータが出力され、どのデータを活用すれば効果的かが見えてきます。
【2】業務プロセスの可視化の方法
業務プロセスの可視化には、フローチャート、業務フロー図、スイムレーン図などの作成が有効です。中小企業の場合、まだ紙ベースでの業務が多いかもしれませんが、まずはその業務プロセスの可視化をしてみることから始めることをおすすめします。具体的には、各部署や担当者がどのようなデータをインプットし、どんな業務を行い、その結果としてどのようなデータが生まれるのかをマッピングします。
【3】効果的なデータ活用のポイント
業務プロセスの可視化が完了したら、次にデータの活用方法を考える段階に移行します。以下、ポイントをいくつか挙げます。
- データの正確性を確保する:データ活用の基本は、データの質です。データが不正確であれば、それを元にした判断も誤ったものとなります。
- 過去のデータを分析する:過去のデータから傾向やパターンを抽出することや、過去データから予測モデルを構築し未来予測に役立てることができます。
- データの視覚化:グラフや散布図などを使ってデータを視覚的に表現することで、一目で傾向や問題点が分かるようになります。
【4】中小企業における実践例:ある弁当製造会社のデータ活用への道
某地方都市に位置する弁当製造の老舗企業。長年、弁当の需要予測はベテラン社員の豊富な経験と勘に依存していました。しかし、このアプローチは、弁当の廃棄が頻繁に発生するという課題を抱えていました。
そこで、まず、現場担当者への詳細なヒアリングを実施しました。ここから業務プロセスを精緻に把握し、スイムレーン図でその全体像を明確化・可視化。この図を用いてデータの流れをマッピングし、業務の詳細まで理解を深めました。
そして、予測の精度を悪化させている要因を特定。関連する過去データを取り上げ、欠損値やノイズの影響を排除した上で、データを分析に適した形に整理。この整理されたデータを基に、弁当の需要予測モデルを構築。結果、ベテラン社員の予測能力をも凌ぐ、約24%の精度向上を実現できました。
【まとめ】
データ活用経営は、業務プロセスの理解から始まります。中小企業でも、しっかりとしたステップを踏むことで、データの有効活用が可能となります。次回は、データ活用経営の導入段階の注意点について詳細を見ていきたいと思います。
【井上 雅之】
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