協会活動のご案内

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 会報
  4. (連載企画) データ活用経営のすすめ 第1回

(連載企画) データ活用経営のすすめ 第1回

筆者は大学でAI・データサイエンスの教鞭を執りつつ、中小企業診断士としても活動しています。本連載では、実際の中小企業の現場での支援を念頭に、データ活用経営を効果的に進めるための重要なポイントを、中小企業支援の中で実施した筆者の経験に基づいて紹介していきます。近年、DX化やAIがブームとなり、中小企業でもデジタル化やデータ活用への関心が高まっています。より付加価値の高い経営を実現するためには、データを活用した経営が必須の条件となっています。

しかしながら、実際に中小企業の現場に足を踏み入れると、まだ多くの業務が紙で行われているケースも見受けられます。また、データを電子的に記録しているとしても、その活用がエクセルへの転記のみで、エクセルの関数を使ったことがない従業員が現場を運用している場合もあります。実際は、AIブームと中小企業の現場が大きく乖離しているケースも少なくありません。

本連載では、こうした課題に直面する中小企業診断士の皆さまに向けて、実践的なデータ活用のアプローチや導入方法を紹介していきます。この連載を通じて会員の皆様がデータ活用経営を成功に導く手助けとなれば幸いです。

●データ活用経営とは?

データ活用経営とは、企業が蓄積したデータを活用し、経営戦略や意思決定、現場の生産性向上に役立てる取り組みのことを指します。なお、経営用語に「データドリブン経営」がありますが、大企業のように高度なIT技術を駆使しなくとも、中小企業においてもデータを活用することで十分効果が得られるという意味を込めて、本連載では「データ活用経営」と表現します。

●データ活用のメリット

データ活用によるメリットは大きく、例えば以下のような点が挙げられます。まず、過去のデータを分析することで、傾向や課題を把握し、将来の展望を立てることができます。また、効率的な業務プロセスの確立や生産性の向上、さらには顧客ニーズの把握やマーケティング戦略の最適化にも貢献できます。

●データ活用に対する課題

中小企業の現場ではデータ活用に対する課題も見られます。データの収集や整理、分析方法、AIや機械学習の経験や知識の不足などが挙げられます。これらの課題を解決し、データ活用経営を進めるためには、どのようなアプローチが必要でしょうか。

以下、データ活用経営に向けたアプローチについて概要を説明したいと思います。大きく、データ活用経営の構想段階と導入段階に分け、導入段階をさらに細かく分解して段階的なアプローチを試みます。

【1】データ活用経営の構想段階

データ活用経営の構想段階では、現場の現状把握を試みた上で、全体の業務プロセスを可視化するとともに、現状どのようなデータが、紙あるいは電子で収集・記録・活用されているのかを整理する必要があります。その上で、業務プロセスのどの部分で、データを活用すると効果的か大枠を考える必要があります。

【2】データ活用経営の導入段階

以下の3つのフェーズに分けて導入していきます。

1)設計

目的を明確化し、その目的を達成するために活用できるデータを精査し、顧客要望を踏まえ仮説検証に必要な費用・体制・期間を決定します。

2)検証(PoC)

現場のデータを活用し、モデル構築・検証・最適化し、検証結果を踏まえ業務への適用を検討します。

3)実装・運用

現場の運用者のスキルレベルに合わせて実装していく必要があります。エクセルで運用したいという要望があれば、現場にのっとった実装を考えていく必要があります。現場によっては最先端の技術導入が、必ずしも正解とは限りません。現場との対話を重視して丁寧に運用を定着・安定化させます。

【井上 雅之】

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

関連記事

活動のご報告