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(連載企画)零細企業への公的支援の認知と活用の促進 第1回

このテーマにした理由は、小売店を営む私の実家、そして私の会社の取引先であるカメラ店などの零細企業が、公的支援を知らないケースが多く、支援策を活用できていないのではとの仮説があったからです。もしそうであれば、少しでもその支援策が伝わるように仕組み化し、活用されることで零細企業を活性化させたい。それは、私の診断士資格を取得するきっかけでもありました。

今後連載する内容としては、1回目「テーマ設定の背景と公的支援の認知・活用の実態」、2回目「零細店存在の意義と支援の実態」、3回目「成功している零細店の共通事項」、4回目「公的支援の認知・活用促進の提言」について事例を取り入れながらご紹介と提言をしていきます。

1.連載テーマ設定の背景

私の実家は、四国、香川県小豆島(人口約28,000人 企業数約1,000社)で、日用雑貨から食料品までを扱う小売店を経営しています。現在兄が4代目となり80年目に入っております。売上は1980年代の日販40万円(月商1,200万円)を最高に、現在は日販4万円(月商120万円)と1/10となりました。人口が30%減少なのに比べ、大幅ダウンです。よって新たな設備投資は厳しく、消費税改定など制度の変更、また自然災害に伴う設備の買替は経営にとって致命的です。さらに新しい取り組みでの投資は論外となります。

しかしながら、5年前、売上低迷の中、外販強化のため、鮮度のよい野菜を武器にしようと、大型冷蔵庫を借金して購入しました。「商工会などに行政支援相談したの?」との私の問いに、兄は、「そんなの恥ずかしくて、できるわけないやろ!」「そもそもそんな支援なんあるんか!」と返答しました。全く、行政支援については無関心だったのです。

一方、私が現在勤めている会社の取引先であるカメラ店に写真プリンター機器を導入するため、カメラ店を対象にした持続化補助金セミナーを中小診断士の方にお願いしたことがありました。カメラ店主より「このような情報・セミナーはなかった。今まで一番役に立った」とのコメントをいただくなど、好評を博しました。このケースでもやはり、公的支援の内容がいかに伝わっていないのかを実感すると同時にその必要性を強く感じ、今回の連載テーマとしました。

2.公的支援の認知・活用状況

それでは実際どれくらい公的支援が認知活用されているのか、中小企業白書で確認しました。図1の調査結果にもあるように、支援策としての「各種経営相談への対応」の存在を約80%が認知しているものの、約80%が利用していません。また、その他の公的支援のメニューにおいても、小規模事業者の方が、中規模企業よりも「認知していない」傾向がありました。

 図1 代表的な公的支援メニューの直近3年間の利用実績および理解度・認知度

<出典 2020年版小規模企業白書> (株)野村総合研究所「中⼩企業の経営課題と公的⽀援ニーズに関するアンケート」 2019年11月から12月にかけて、中小企業・小規模事業者(23,000件)を対象にアンケート調査(回収4,445件、回収率19.3%)

また、図2で「企業規模別に支援メニューを認知した主なきっかけ(ルート)」をみると、企業規模を問わず、半数が「人づて(日常的な経営に関する相談相手)」と、最も多い状況です。

 図2 ⽀援メニューを認知した主なきっかけ(企業規模別)

<出典 同上>

さらに図3にあるように、中小企業支援策を認知したとしても、今後の利用意向について、「どちらともいえない」、または「利用したいと思わない」と回答した方に、その理由を聞くと、「利用に際した手続きが煩雑だから」という回答が最も多く、「情報が複雑で、理解が困難だから」という理由を挙げる方も一定程度いました。支援策の利活用を促進する上で、申請手続きの簡素化や、利用者目線に立った分かりやすい情報発信に取り組むことが重要だといえます。

 図3 今後、中⼩企業⽀援策を利⽤したいと思わない理由

 <出典 同上>

以上のように公的支援策の認知・活用については、①中小企業の公的支援策に対する認知は高くなっているものの、利用していない方は8割に達している②認知方法は「人づて」が多い③「申請手続きが煩雑だから」「情報が複雑で理解しづらいから」という理由で支援策の利用を躊躇しているケースが多い――ことが現状です。

コロナ禍で公的施策に触れたことで、以前より、飛躍的に公的支援を身近に感じたところはあるかと思います。今後も行政は伴走型支援を強化していく姿勢をとっていきます。零細企業が、その公的支援をいかに認知活用していけるのか、可能性を見出したいと思います。

いずれにしても私たち中小企業診断士の支援が今後ますます重要となってきています。

 【明田 知大(あけだ ちひろ)】

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