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コロナ禍における支援機関からみた景況感と今年の取り組みについて~神奈川県中小企業団体中央会様に伺いました~

【はじめに】

 新年を迎えてもコロナによる異常な状況が続く中で、協会会員の皆様も今年の業務の展望を立ち止まって考えておられることと存じます。そこで、支援機関の活動の紹介と同時に、支援機関が「どのように感染に立ち向かっていくか、また診断士にはどのような期待をされているか」など報告したく、中小企業診断士の日イベントの後援を頂いている神奈川県中小企業団体中央会様(以下、中央会と略す)に診断協会の齋木理事とともに訪問いたしました。

 中央会について診断士業務の経験が少ない方にはイメージしにくいかもしれませんので、ここで、簡単に業務内容を紹介します。中央会は県内で1000を超える組合(協同組合等)に対し、その組織化・企業間連携による生産性や技術の向上・資金確保等の支援を行っています。具体的には、組合に対する延べ年間5千件もの実地指導や各種セミナー開催等のほか、関連事業として、ものづくり補助金の事務局も運営されています。

 2021年新春、取材にご対応いただいたのは、診断士資格も持っていらっしゃる連携開発部長の鎮野様です。

中央会ホームページ(HP)(https://www.chuokai-kanagawa.or.jp

以下、報告です。
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景況感について、昨年を振り返るとどのような1年だったのでしょうか? また、今年の展望をお聞かせください。

- 昨年は年間を通して、業種ごとにタイミングのずれはありましたが、全体としては緊急事態宣言の5-6月がボトム、その後、秋までは徐々に回復傾向にあったものの、冬に入り感染拡大で再び落ち込んでいるという状況でした。
感染の報道が出始めた昨年の年明けから飲食店・商店街で景況が悪化し始め、続いて営業時間短縮要請の影響もでてきたようです。食品業・酒販売の組合からの情報では、一般消費者からの巣ごもり需要で伸びた部分もありましたが、飲食店への卸売りの減少のほうが大きいという声がありました。

 緊急事態宣言が発出された5月にはいると、部材輸入が滞り、製造業で操業度が低下してきました。工業団地が共同で受電している電気使用量でも顕著な減少がみられました。緊急事態宣言終了後に一部では回復が始まりましたが、自動車など完成品メーカーの減産の影響で操業度の低下が続いた事業者もいらっしゃいます。

 建設業では人手不足を主因に受注残を多く抱えていたため、6月までは落ち込むことはほぼありませんでした。また、建て替え工事などが取りやめになる一方で、防水・塗装など外壁補修や内装工事などのメンテナンス関係はむしろ底堅い動きでした。しかし、新規の受注が停滞したため、秋口からは全体としては厳しくなっているようです。

 飲食・宿泊は一時、GOTO TRAVELなどの後押しで持ち直した時期もありました。しかし、中央会も推進したGOTO EATの第2弾が見送りになるというようなこともあり、ほぼ1年間を通じて厳しいまま年末を迎えることになりました。

 中央会では支援先の組合から鮮度の高い情報を業種別に収集・整理して、会報「商工神奈川」に「業界情報・情報連絡員の声」として掲載しています。詳しい状況を確認されたい方は中央会のHPを是非ご覧ください。

(中央会HPから商工神奈川12月号及び中小企業団体景況グラフを加工・転載)

 今年は、中央会の支援先である組合の財政を注視していきます。組合の財政は中小企業の業績変動に対し遅れる傾向がありますので、組合の決算ベースでみると令和3年度(令和4年3月期)から財政の悪化が懸念されます。組合の収入は組合員(の中小企業)から頂く賦課金や共同購買などの収益事業がメインなのですが、組合員の事業規模の縮小によるマイナス影響がありそうです。中央会としては、組合員の経営体力の低下や業務活動の縮小に伴う組合活動の停滞を軽減するための取り組みを強化する年になりそうです。

そうした中で、中央会として中小企業・組合支援にはどのような施策に注力していきますか?

- 中央会としては組合員(の中小企業)の間での事業承継・M&Aに注目しています。従業員10人-20人程度の小規模な企業・事業を組合員の仲間うちで承継するというものです。売上が急減した事業者様で特に高齢の方が経営されているような場合、いまから新規に借り入れをして自力で再建するよりは、しっかりした方に引き継いでもらいたいという話がでてきています。まったく知らない他所の会社に売却するのに比べて、気心の知れた組合員に自社の従業員を任せたほうが安心できるという側面もあります。 組合員の間での事業承継・M&Aであれば、組合員の数は減っても事業領域を維持することで組合活動の強化にもつながると考え、中央会としてもサポートしていくこととしました。

 昨年7月には、中央会が中心となり、外部専門家も招きスモールM&A支援事業キックオフミーティングを行いました。今年度中には支援実績ができる予定です。課題のひとつは、事業承継の入口のところで、キャラクターの濃い経営者の皆様と対話して中央会を信頼していただき、どう会社と会社を結び付けていくか、にあります。そのため、コーディネーター的なスキルのある方、405事業等の経験のある専門家へのニーズが大きくなると思います。

 政府の政策で中小企業の再編による生産性の向上が掲げられています。その具体策としても、組合の関係を活用して友好的なM&Aで企業の規模を大きくしていく方法は、取り組みやすく効果が大きいと考えています。

 また、M&Aの前段階ともいえる協業の推進にも取り組みたいと思います。生産設備を相互利用する協業組合は古くからある組織化のスキームですが、自動車関連などで成功例があるものの広く普及するには至っておりません。そこで、エリアが近い企業同士が手軽に取り組めるようにしていきたいと考えます。

 なお、中央会が事務局を担っている「ものづくり補助金」については、今年、内容が一部変わりますが、引き続き重要な施策ですので、より事業者様が使いやすい形での運用を志向します。支援者の方には審査基準に留意して事業者様への指導をお願いしたいと存じます。

コロナ禍で、診断士に対する社会的な要請が高まる一方で、診断士側もIT化など新たな環境への適応も必要です。診断士へ期待されていることやアドバイスがあればお聞かせください。

- 組合員への教育は組合の重要な役割のひとつですが、コロナ禍で会議室からオンライン・セミナーへの転換を迫られている状況があります。そこで、組合員向けにZOOMのセミナーを行いましたが、大変盛況でした。そうした中で、中小企業のデジタル化の遅れにたびたび気づかされました。

 今年は、診断士へデジタル化指導の依頼が増えると思います。しかしながら、各種の講演を依頼して感じたことですが、ツールの基本的な使い方にまだ慣れていない診断士もいらっしゃいます。この動きは始まったばかりで仕方のない面もありますが、診断士側でも一歩先を読んでデジタル化のスキルや指導力を高める必要があるように思います。

 次に、支援者としてのスタンスです。コロナ禍の中、売り上げを伸ばすことは大変困難だと思います。それでも、事業者様の話を聞き、寄り添い、一緒に考える姿勢を持っていただくことを望みます。事業者様の中にはほぼ動きようがないと思っている方もいますが、そうした方に、一歩、踏み出そうという気を起させるようなアプローチを期待しています。

 もう一言、中央会は約30名の人員で1000以上の組合を支援しています。そのため診断士を含む外部専門家との連携は今後ますます重要となっていきますし、コロナ禍の中で、診断士との連携をさらに強化したいと思っています。また、診断士の皆様が事業者様に支援をされる中で組合関係の話題や困りごとを耳にされたときなど、ご相談は大歓迎いたします。

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【おわりに】

 組合の現場に深く入っている中央会ならではの現場感覚のある景況感やそれに基づいた施策の方向性について具体的かつ示唆に富んだお話で大変勉強になりました。やや辛口のメッセージも頂戴しましたが、診断士に期待するゆえの叱咤激励だと思い、真摯に受け止め協会の皆様と共有させていただきました。また、最後の「もう一言」に要約しましたが、診断士との連携を強化したいという意気込みはインタビューの間、一貫して感じられました。私たちの支援活動の中でも中央会との連携を頭にいれておくと引き出しが増えるのではと思います。

最後に、取材に応じてくださった中央会鎮野部長様には厚く御礼申し上げます。

【宮村康彦】

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