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(連載企画)トレンドを見据えた成長戦略(第3回) 攻めの健康経営

 一企業の努力だけではどうしようもない外部環境の変化があることは、コロナ禍が突き付けた、厳然とした事実の1つです。そして今、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、外部環境の大きなうねりは収束するどころか益々激しさを増しています。中小を含むすべての企業には、こうした外部環境の変化・トレンドに沿った戦略が求められます

企業経営と従業員の健康との関係

 企業経営と従業員との間での健康管理に関する緊張感が少しずつ高まってきています。
 背景の一つは健保の危機。健保組合の多くが赤字化しています。中小企業の従業員や家族が加入する協会けんぽについてはまだ黒字とのことですが、75歳以上の後期高齢者医療への拠出金は増え続けており、団塊の世代が加わってくると、非常に厳しい状況になることが予想されます。現役と高齢者の間の負担割合の見直し機運と併せ、保険給付費を抑制するため、加入者即ち従業員の病気予防を積極化する動きが今後益々活発になるでしょう。もう一つは人的資本の開示にまつわるもの。金融庁は23年度にも人的資本に関する一部の情報を有価証券報告書に記載することを義務付ける方針を示しております。この情報開示項目の中には、従業員の欠勤率が入る予定です。体調不良によって従業員が多く欠勤するような企業は人財をうまく活用できていない会社と看做されることになります。企業は従業員の体調に今まで以上に留意することになるでしょう。
 本来、健康とはまったく個人的なものであり、例え家族であっても当人以外分からない点が多いものです。そんな従業員の健康に対し、企業が関与度を増していく必要性が高まっていると言えます。

健康経営とは

 こうした流れは昨日今日始まったものではありません。例えば「健康経営」という概念。これは社員の健康を重視し健康向上を図ることで、会社の生産性を向上させる経営手法を指します。元々は1980年代にアメリカで生まれたものですが、国内でも関心を持つ企業が増えてきています。増加の背景の一つとして、2017年度から経済産業省が「健康経営優良法人認定制度」を開始したことが挙げられます。これは従業員の健康に留意した経営を行っているかどうか、をモニタリングし、評価・表彰する制度です。様々な自治体が同様の趣旨の制度を設けています。認定を受けると低金利融資が受けられたり、自治体の入札評価の際に加点される等のインセンティブがあることも手伝って、建設業から始まり、様々な業種で認定取得に取り組む企業が増えているのです。
 認定においては、経営者自ら健康宣言を行って、従業員の健康増進に向けて主体的に働きかけを行っているか、が問われます。従業員に健康関連情報を提供したり、健康に配慮した食事をするよう働きかけたり、運動を促すような取組みがその例です。ここに入札加点等とは別種類の、他社の健康経営を商機に変える、いわば「攻めの健康経営」の可能性があると考えます。

他社の健康経営志向を商機に

  大手飲料会社は企業向けに健康経営アプリを作り、自社飲料製品の購入と連動させることで、企業側から従業員に購買奨励させようとしています。大手ホテルやスポーツジムも健康経営を志向する企業に対する提案力を高めています。他にも健康管理アプリを開発するIT会社、従業員が健康改善に繋がる料理を自分でできるようになることを提案する料理教室、自社の健康器具を社内に設置してみてはどうかと提案する器具メーカー等もいます。
B2Cの企業にとって、健康経営はB2B2Cという新たなモデルへの進出・展開の契機になります。
 地域密着の飲食店においては、まず周辺の企業や事業所が健康経営に取り組んでいるかどうか、確認してみてはいかがでしょうか。健康経営の担当者がいるようなら、その担当者に従業員の健康に配慮したメニュー開発を提案してみるのはどうでしょう。宿泊業やスポーツ施設も、健康に関する研修や料理教室等と合わせたサービスの可能性について、地域の企業の声を聞いてみたら面白いと思います。
 何かを加速させようとする時は、やろうとする側だけでなく、それを商機にしようとする側からの盛り上げも大事になります。企業が何年もの間勤務する従業員の健康に配慮することは、個人にも社会にとっても重要です。そして、それを商機に変えようとする企業も貴重であると私は愚考します。

【小泉 孝朗】

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