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「空き家問題」の対策を、中小企業診断士の目線で考える

日本中で空き家が増えています。商店街の空き店舗、耕作放棄地等の空き畑、私は日本の活力を落とす「三空(さんあき)」だと考えています。
2018 年に行われた総務省住宅・土地統計調査では、普段から人が居住しない空き家は846万戸、空き家率 13.6%になっています。

神奈川県ホームページより https://www.pref.kanagawa.jp/documents/14815/akiyaritsu.pdf

(1)地域により実情が違う空き家問題

神奈川県では、空き家戸数は約 48 万戸、全国 3番目の多さ、空き家率は 10.8%、全国3番目の少なさです。県内の市町村別空き家数と空き家率を表したのが、神奈川県のホームページに掲載されている右上のグラフです。三浦半島、県西部の相模湾沿岸地域と丹沢の麓地域で空き家率の高さが目立ちます。

人口の都市集中や人口・世帯の減少、毎年 100 万戸以上供給される新築に有利な融資制度等が生み出す空き家は、居住環境に悪影響を与え、周辺の不動産の資産価値を下げ、地域の魅力を低下させます。人口が減少すれば税収も減り、いずれ交通や買い物等の利便性も低下していきます。市町村の中で負の連鎖が回り始めることから、2014 年に空き家対策特別措置法が成立し、空き家対策は市町村の重要な施策となりました。2018 年からは空き家バンク等も運用されるようになっています。

(2)空き家が「コミュニティのつながり・新しいまちづくり」を生み出す

一方で、空き家が地域のまちづくりに寄与する事例や新たな企業体も出てきています。私が住む町の中心部にある築 80 年の古民家、海にも山にも歩いて 15 分、クラウドファンディングで資金を集め、明確なコンセプトのもと改装を行い、宿泊やスペース活用ができる施設に生まれ変わろうとしています。

その進め方は、不動産会社が一方的に進めるのではありません。地域住民、地域活性化を図りたい起業家、想いのある事業に投資したい投資家、物件を愛するオーナーが、さまざまな意見を出し合う場を共有して共感を生み出す。共感を集めるだけでなく、クラウドファンディングでお金も集める。いろいろな形で自分が当事者になれる「参加型」で進んでいくのです。その中心には、事業のコンサルティングからコミュニティづくりを進める 30 代のプロデューサーがいて、自治体や金融機関・地域住民をつないでいる。行政や大手建設会社が行う手法とは違う新しいまちづくりの現場がそこにはあります。

(3)新しい働き方「面白そうじゃん、一緒にやろうよ」との親和性

その 30 代のプロデューサーがそうであるように、テーマに共感し合うつながった人々と価値を生み出す、“会社に戻って上司に相談して”ではない働き方が若い世代を中心に支持を集めています。コミュニティという世界を自分達で作り、プロジェクト単位で仕事を回す。さまざまな人とのつながりを武器に価値を生み出していく。こうした働き方と、これからの「まちづくり」はとても親和性があると思うのです。

(4)中小企業診断士にできること

そこで求められるのは、地域や空き家の特色をふまえ、その空間をどう活用するか、付加価値を生み出す存在です。これは、中小企業診断士の本来求められる力に通じていないだろうか。そして、診断士には3つの活躍パターンがあると考えています。ひとつめは、顧問先・支援先の遊休資産の有効活用を提案するアドバイザーとして、2つめは、地域活性化のため当事者としてこうした資産を利活用する起業家として、3つめは、地域のさまざまな関係者をつないで価値を創り上げるプロデューサーとして、です。私は地域に根差す診断士を目指し、3つめの仕事ができるように自己研鑽を積んでいきます。
【増田 竜雄】

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