連載企画 診断士によるDXのポイント (2)ローコード・ノーコードという新たな選択肢
前回は業務プロセスの可視化についてお伝えしました。第2回目となる今回は、診断士および特にITを専門としない診断士に向けたDXのポイントとして、実際にシステム化を行う上での重要なポイントとなる開発手法の選定についてお伝えします。
1.変化するシステム開発の潮流
従来、パッケージ導入、スクラッチ開発が主流でしたが、近年、ローコード・ノーコード開発が注目されています。これらの新たな開発手法は、中小企業診断士にとっても、ITサービス提供の幅を広げる大きな可能性を秘めています。ローコード・ノーコード開発は、その名の通りプログラミングの知識がほとんど不要でアプリケーションを開発できる手法です。また、費用面や導入までの期間も短いため、原資に乏しくITエンジニア不足が深刻な中小企業にとって有効な選択肢となり得ます。一方で、デメリットもありますので、それらを理解した上で最適な手法を選定する必要があります。
2.最適な開発手法・ツールの選定基準
以下の表は、各開発手法の特徴を主要な評価軸で比較したものです。
このうち、ローコード・ノーコード開発は、パッケージ利用とスクラッチ開発の中間に位置づけられます。導入費用が従量課金制の形態も多く、比較的に安価で開始することができます。一方で、画面レイアウトや操作面におけるカスタマイズ性や機能の拡張性の面では、パッケージ利用よりは柔軟に設定できますが、スクラッチ開発に比べると限界があります。
では、具体的に企業へシステムを導入する際、どういった基準で選定すればよいでしょうか。導入費用や導入速度を優先し選んでしまいがちですが、以下の点なども考慮に加えることで導入後のミスマッチを防ぐことにつながります。
- 業務への適合性:企業の業務に対し選定した手法やツールがどの程度標準的にカバーしているか
※特に業務の複雑度によりツールの標準的な機能では難しい可能性があります - カスタマイズ性:導入後の適用範囲の拡大や変更の見通しに対し将来に渡り拡張性が許容されるか
- 社内の推進体制:企業内で導入を主導する体制の構築や、人材の育成も見据えて取り組めるか
また、トライアルでの利用ができるツールも多いため、事前にお試しいただくことをおすすめします。
3.ベンダー主導から内製化へのシフト
ローコード・ノーコード開発の広がりは、企業の内製化を促進する契機にもつながります。これまでベンダー主導で進められてきたシステム開発を企業側が主体的に担うことで、DX推進の新たな展開が期待できます。具体的には、ビジネスとシステムの一体的な運用が可能になり、継続的な改善サイクルを通じて、ビジネスの変化により柔軟に対応できるようになります。さらに、社内のリスキリングの機会としても活用でき、人的資本への投資を通じた生産性向上にも寄与する可能性があります。以上の点を踏まえ、診断士として各企業の実情に応じた開発手法の選定をご支援いただければと考えます。
※なお、参考としてノーコード製品の一覧情報をご紹介しますので、Webサイトからご確認ください。「ノーコード開発バイブル 2024 Spring」(一般社団法人 ノーコード推進協会)https://book.mynavi.jp/manatee/detail/NCPA_eBook20240304
【恩田 雅】
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