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連載企画 経営コンサルタントの視点による建設業の多様性 (2)受注ルートと受注階層

建設会社や専門工事業者の経営支援を専門としている経験を踏まえて、情報をお伝えしていきます。前回は多様な業種・工種区分についてお伝えしました。それに加えて建設会社の事業を複雑にする要因に挙げられるのが受注ルートと受注階層です。受注ルートの分け方でイメージし易いのは公共工事と民間工事でしょう。工事内容が同じでも公共工事と民間工事とでは要求される業務は異なり、利益率にも影響してきます。今回は建設会社の収益に影響を及ぼす受注ルートと受注階層について解説します。

公共工事と民間工事は何が違うのか?

発注者が国や地方公共団体などのいわゆる公共工事の場合と、企業や一般消費者などの民間工事の場合では、工事の進め方は異なります。一概に言える訳ではありませんが、公共工事は施工に至るまでの手続きが煩雑で検査などの記録やその報告にも多くの手間や時間を要します。一方、民間工事は公共工事と比べると手続きは簡素になり、早い完成引渡しが期待されることが多いでしょう。その分、事務作業の負荷や工事に要する固定費の負担にも影響してきます。もちろん、その費用については請負金額に含まれると考えられますが、どちらが得意であるかは会社毎に異なります。ちなみに、公共工事に占める土木工事の割合は3/4ほど、民間工事に占める建築工事の割合は2/3近くになります(図1より)。しかし、公共工事と民間工事のどちらが多いか、片方に集中しているかは会社毎に異なります。

また、収益性(特に粗利率)に違いが見られるのは、受注階層です。元請で受注しているのか、一次下請けやそれ以下の立ち位置なのかで、粗利率や費用構成、営業費の多寡なども異なります。また営業の取り組み方なども元請と下請とでは大きく違ってきます。図2の全体を見ると元請の割合が60%近くを占めています。しかし、集計対象に占める大臣許可や特定建設業の割合が、前号で示した建設業許可業者数の割合と大きく異なっています注1。建設業の支援を行っている筆者の実感としては、元請が1∼2割、下請が7~8割程度ではないかと思います。

事例

支援中の空調会社はこれまでサブコン3社から下請で受注していました。元請毎に粗利率は異なるため忙しさ具合により受注量を調整します。最近になって自治体の公共工事が受注できるようになり、公共工事が売上高の半分となることを経営目標に掲げました。受注階層の見直しが図れたのは経営判断によるものですが、それを実行に移せる体制や人材などの経営資源があったことも重要な要素でした。

まとめ

公共工事を受注する手段といえば入札だと考えるのが一般的だと思います。入札の仕組みは複雑で、請負金額や参加条件、参加対象工事など一つとして同じ条件は無いといっても過言ではありません。また、入札以外にも公共工事が受注できる方法があったり、売上に貢献させる方法があったりします。それぞれ期待される売上高も粗利率も異なります。支援する建設会社の受注ルートと受注階層を確認して、改善の余地が無いか探っていくことが必要です。次号は売上高規模と費用構成について解説します。

注1:一定の資本金が必要な特定建設業が許可業者に占める割合は10%程だが、図2の集計対象では50%超だった。

【加藤 仁史】

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