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連載企画 診断士によるDXのポイント (4)外部ベンダー活用時の要点

第4回目となる今回は、IT導入時の外部ベンダー活用時の要点をお伝えします。IT開発はできる限り自社内でと考える経営者は多いと思います。いわゆる「内製化」と呼ばれますが、一方で、自社にITノウハウがない中小企業も多いため、外部のITベンダーへの開発委託は現実的な選択肢となります。

1.外部ベンダー活用とリスク

外部のノウハウを活用できるのは大きなメリットですが、一方でベンダー委託には以下のようなデメリットも存在しますので注意が必要となります。

① ビジネス戦略との乖離 ② 要件変更によるQCD影響 ③ ベンダー依存の進行
外部のベンダーの場合、背景にある「なぜそのシステムが必要か」といった本質的な部分が伝わりにくい側面があります。その結果、開発されたシステムが本来実現したかった価値から乖離してしまう可能性があります。 システム開発では開発途中で要件が変わることは珍しくありません。開発途中に機能追加やデザイン変更の要求が生じた場合、契約上の条件により追加費用が発生したり、スケジュールが延長する可能性があります。 システムの内部構造や運用ノウハウが社内に蓄積されず、結果として運用保守が困難になる場合があります。それにより、ベンダー依存の進行や、有識者の離脱等により長期的かつ継続的な改善が難しくなる可能性があります。

これによる顕著な例として、経済産業省が警鐘を鳴らすいわゆる「2025年の崖」問題があります。システムがブラックボックス化し、それを理解・保守できる人材が不足することで、企業のDXが遅れ年間最大12兆円もの経済損失が生じる可能性が指摘されています。これは、中小企業においても他人事ではなく、多くの企業が直面する可能性のある課題ともいえます。

2.外部ベンダー活用時のポイント

前述のような問題を避け外部ベンダーへの委託を成功させるためには、以下の4点を意識することで、リスクをコントロールし影響を局所化できます。是非意識して取り組んでいただけると幸いです。

①ベンダーと共創関係の構築:
支援先社内に、ビジネス面とシステム面の橋渡し役となるキーパーソンを配置する体制構築が有効です。さらに、ベンダーと対等な立場で交渉可能なプロジェクトマネージャー(PM)を設置することが重要です。特に、ベンダーを単なる「下請け」として捉えるのではなく、共に目標達成を目指す「共創パートナー」として位置付けることで、企業が本来目指すべきシステムの本質を共有し、双方のゴール認識や要件の齟齬を防止することにつながります。

②要件変更に柔軟に対応可能な開発手法:
「要件は変わるもの」という前提に立ち、柔軟な開発体制を構築することが重要です。特に近年のビジネス環境では、要件の変動が常態化しつつあるため、小さなサイクルで開発とテストを繰り返しながら、柔軟に要件変更に対応できる「アジャイル開発」の要素を導入することが有効となります。これにより、開発の迅速化と手戻りによるスケジュール遅延等のリスク軽減につながります。

③契約形態によるリスクへの対応:
外部ベンダーへの委託契約は、準委任型と一括請負型の二種類が一般的です。準委任契約は業務遂行そのものに対する報酬体系であり、成果物責任は伴いません。一方、一括請負契約は成果物の完成を保証する契約となります。要件や仕様が確定後の工程を一括請負契約を選択することで、ベンダー起因によるコスト超過やスケジュール遅延等のリスクを回避することが可能となります。

④保守・運用を見据えたナレッジ化:
開発の初期段階から、ベンダーに対しシステム開発における設計書や仕様書などのドキュメントを明確に定義・整備することで、将来的なシステムの運用や保守、さらには社内ノウハウの蓄積につながります。それにより、ナレッジやノウハウのブラックボックス化を防止し、企業の内製化への移行を円滑に進めるための基盤となります。

3.まとめ:ベンダーとの連携を強化しDXを成功へ

中小企業診断士の皆さまには、これらの要点を踏まえベンダーとの連携を強化し、支援先企業のDXおよびIT化を成功に導いていただければ幸いです。

【恩田 雅】

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