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連載企画 現場から見た「物流2024年問題」(4)荷主に求められる意識改革

企業の「CLO」ってご存じでしょうか。大企業では、「CEO(Chief Executive Officer=最高経営責任者)」「CFO(Chief Financial Officer=最高財務責任者)」などを置く社がありますが、日本では設置する義務はなく、名乗るかどうかは企業の裁量次第。しかし、一定量の荷物を扱う企業では、来年から「CLO (Chief Logistics Officer=物流統括管理者)」を設置することが義務付けられます。

■物流業務の地位向上を

物流は、調達から製造、販売までのサプライチェーンマネジメント(SCM)を担う業務ですが、その重要性が社会や企業で十分に認識されているとはいえず、軽視されがちです。

例えば、企業では、製造、販売などの職種での新卒採用はしますが、SCM部門での採用は、物流専門企業をのぞけばごくわずか。そもそも、物流専門の学科やコースを持つ大学は多くはありません。

国土交通省国土交通政策研究所の「物流分野における高度人材の育成・確保に関する調査研究」(2021年)によると、日本で物流分野に特化した学部・学科・コースがある大学・高専は、流通経済大や東京大など7校のみ。研究者は計185人でした。上場企業3774社で、役職名に物流、ロジスティクス、SCMが含まれていた役員は、100社113人だったそうです。

一方で、米国の大学には物流分野の専門プログラムが約50あり、上場企業4340社に、物流を担う経営幹部は199社227人。中国では物流専攻がある大学は数百校に上るそうです。

例えば、アップル社CEOのティム・クック氏はSCM分野の出身。日本でもSCMの重要性が高まる中、物流の効率化や高付加価値化を担う「高度物流人材」を育成することが急務になっています。

■統括管理者の選任が義務化

こうした中、2025年4月に施行された「改正 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(流通業務総合効率化法)」では、物流事業者だけでなく、荷主の企業にも、荷待ち時間の削減や積載率の向上などの努力義務が課せられました(図1)。

図1 荷主・物流事業者に求められる義務   出典:国土交通省HP
https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/jidosya/ouensaito/shiryou/20241031/20241031_03.pdf

さらに年間取扱貨物量9万トン以上の「特定荷主」では、中長期計画を策定し、定期報告をすることが義務となり、「物流統括管理者(CLO)」の選任も義務付けられました。物流統括管理者は物流担当の役員というイメージです。

想定されるスケジュールは以下のとおり。
▽25年4月以降 基準である重量の把握
▽26年4月末  基準を満たす場合、統括管理者の選任届出
▽26年10月末  中長期計画の提出

特定荷主は、全国で3200社程度とされますが、自社が取り扱う貨物のトン数を把握している企業は意外に少なく、多くの企業では、自社が特定荷主にあたるかどうかの確認作業を進めているはずです。

中小企業では特定荷主にあたる社は少ないでしょうが、物流効率化の努力義務があることは同じ。これを機に、物流担当者の権限を強化し、業務の見直しを進めてみてはいかがでしょうか。

「物流2024年問題」の影響は25年になっても続き、「物流2024年から問題」と言われるようになっています。30年にはドライバー不足などで輸送能力が34%不足するとの予想は変わりません。持続可能な物流に向けての意識改革は、すべての荷主企業に必要です。

【遠田 昌明】

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