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神奈川県の有名優良企業の成功事例から学ぶ

「5 年間で売上高倍増、赤字 24 億円から黒字 5 億円超、来客数 1.76 倍」、「4 年間売上が 37%増加、ランキングで日本 1 位獲得、人件費を 50%増加」。いずれも、少子高齢化による市場の成長鈍化が言われる環境下では非常に優秀な業績に聞こえます。また、ビジネスモデルも技術革新を担う IT 関連や海外展開を行う企業ではなく、「歴史が長い国内の成熟市場で、自社の企業規模も中堅から小規模」の状況下で、私達が支援する企業像に近い様に思います。

前者が横浜 DeNA ベイスターズ、後者は湘南ベルマーレになります。中小企業診断士として改善提案等において他社の成功事例を用いることは多いと思いますが、より身近で理解しやすい成功例であれば聞き手に伝わり実施されやすいのではないかと思い、今回はこの 2 社から成功のエッセンスをまとめます。

企業理念と組織文化に根差した戦い方 ~ 湘南ベルマーレ

私達が耳にする「湘南スタイル」の背景には、変革期であった 2005 年に明文化された「訓」と「基準」があります。ベルマーレは、市民クラブ(当時)の懐事情の厳しさもあり、監督の実績や有名選手等の個人に依存せず、これらの理念を軸に中長期的なチームの底上げに重点を置いてきました。また、勝利だけを目標とせず、「いかに負けるかにフォーカスする」と表現し、どんなゲームでも観客を魅了することと選手が与えられた役割を遂行するプロセスに拘って来ました。その結果、昨年のルヴァン杯決勝に向かうチームに、下部組織から「湘南スタイルで戦ってください」という応援メッセージが多かったそうで、自らの存在価値が共通認識として組織に広く浸透していることがわかります。

曺監督のリーダーシップに目が行きがちですが、自らの存在価値(理念)からゲームプラン(戦略)まで丹念に落とし込まれた強い組織文化(湘南スタイル)が他チームも含むファンを魅了しています。

全社一丸のマーケティング強化と大胆な財務戦略 ~ 横浜DeNAベイスターズ

収支の悪化で存続の危機にあったベイスターズは、売上高アップのため世界中から「理想のスタジアム像」を学び、またスタッフ全員からアイデア出しを行い、集客力を高め顧客経験価値の向上に努めました。スタジアムは「単価×稼働率」が勝負のビジネスモデルですが、その中で「飢餓感の醸成」、「満員プロジェクト」や「ファンの共感」等の施策実施で、売上高の限界(満席)の打破に取り組んでいます。また、サービス面では、スタッフ全員を変革に巻き込んで“熱狂の渦”を作ったことも成功の重要な要素です。

もう一つ大きな取り組みは、横浜スタジアムの買収(友好的 TOB)でした。もともと球団が赤字の一方で、スタジアムは黒字の優良企業でした。買収により、主要固定費である使用料を内部コストに取り組むと同時に、スタジアム改修や店舗開発も自社の指揮下に置くことで一貫性のあるブランディングが可能になりました。

業界の常識に囚われない新しい視点で、様々なマーケティング施策を打ち続けた池田社長の取り組みが大きな渦となり、またその裏にある緻密な財務戦略と相まって、球団の V 字回復を実現しました。

ビジネスパートナーとしての地域社会

両者に共通しているのが、地元地域との関係性の重視です。ベイスターズは“理想のスタジアムづくり”の過程で、自治体や事業者との関係づくりに努めました。街全体にベイスターズが浸透することで、経済的なメリットの提供に加え、スタジアムの周辺エリアにおける聖地化に成功しました。

ベルマーレの真壁会長は、「地域社会で評価されれば野垂れ死ぬことはない」と語り、目標に掲げる「総合型地域スポーツクラブ」として積極的に本業(プロサッカー)+αの価値を高めることで、親会社のスポンサー料に依存しない経営の実現に取り組んできました。

神奈川県は東京に次ぐ人口(マーケット)や多様性を持つ大都市ではありますが、地元地域に密着して熱心なファンを作り自社の代弁者とすることで、スポンサーやスタジアム来場者という枠を超えて、経営理念の遂行やマーケティング活動における良きパートナーとしています。

【池田 篤】

<参考文献>
「低予算でもなぜ強い」戸塚啓 光文社、「常識の超え方」池田純 文藝春秋、「次の野球」横浜 DeNA ベイスターズ ポプラ社

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