連載企画 経営コンサルタントの視点による建設業の多様性 (1)多様な業種・工種区分
建設会社や専門工事業者の経営支援を専門としている経験を踏まえて、情報をお伝えしていきます。建設会社は事業者数が多いので、中小企業診断士として経営支援に携わったことがある方も多いことでしょう。ただ、建設会社といっても事業規模の大小はもちろん、工事内容や建設業許可の種類、元請・下請・孫請けなど受注の立ち位置や施工管理(技術者)と職人(技能者)など、会社ごとに経営の在り方は異なっています。今回は、建設会社の仕事内容が把握できる業種や工種の区分について解説します。
建設業の工事種類は本当に29種類だけ?
建設業許可は2014年に解体工事業が加わり29業種になりました。更に許可の区分には、知事許可と大臣許可注1、特定建設業と一般建設業注2があることをご存じの方も多いでしょう。建設会社がどの許可を保有しているか、その売上高がどれくらいかを確認するとある程度は把握することができます。しかし、許可業種だけでは詳細な工事種類(工種)はわかりません。例えば土木会社といったらどのような会社をイメージされるでしょうか?
公共工事を元請で受注して、下請の協力業者を使って現場管理している土木工事業(図1)が真っ先に思いつくかもしれません。しかし、金融機関の担当者等から土木会社と紹介された場合、とび・土工工事業の建設業許可で、職人を抱えて下請の立場で施工する土工工事業だったりもします。地盤改良工事や外構工事を行う会社の場合もあります。
また、建設業許可を複数保有している会社も多いです(表1)。業種ごとに売上高を集計して報告しているため、業種ごとの規模は数字で把握することができます。一方、許可は保有していてもその許可では売上高が無いこともあるので、具体的な数字で確認することが有効です。
なお、建設会社の支援をしていると、建設業許可を保有していない会社や個人事業主も多くみられます。それは、単に許可の取得要件を満たしていない場合と社長が必要と感じていない場合があります。
事例
3年ほど前にM&Aの事業DDでとび・土工工事業の支援をお手伝いしました。許可業種は1種類のみです。主力事業は狭小地でのくい打ち工事ですが、既存杭などの撤去工事(はつり工事)も可能な技術がありました。住宅の地盤改良工事も別事業として行っていましたが、それぞれの工種は技術も使用する機械も異なります。
まとめ
建設業許可の業種区分(図1)に記された建設工事の例示(工種)を数えると約190種類あります。実際の現場を考えると100種類ぐらい加わるのではないでしょうか。それらの工種を自社の職人で施工することもあれば、様々な協力業者を使って施工することもあります。支援する建設会社の事業内容を正しく把握するためには、何の許可業種を保有していて、どういった工種であるのか、数字やヒアリングなどから最初に把握することが必要です。次号は受注階層と受注ルートについて解説します。
注1: 1つの都道府県だけに営業所を置く場合は「知事許可」、2つ以上の都道府県に営業所を置く場合は「大臣許可」が必要である。
注2:特定建設業と一般建設業では、元請として工事を請け負った場合に下請に出せる金額が異なる。
【加藤 仁史】
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