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連載企画 経営コンサルタントの視点による建設業の多様性 (3)売上高規模と費用構成

建設会社や専門工事業者の経営支援を専門としている経験を踏まえて、情報をお伝えしていきます。前回は収益に影響を及ぼす受注ルートと受注階層についてお伝えしました。受注ルートによっても違いが生じるのが工事1件当たりの売上高(工事高)です。野丁場と町場のどちらが得意かで変わります。また、費用構成は施工体制の違いによって生じます。内製化と外注依存、材料の取り扱い方などです。今回は、建設会社の建設工事への関わり方を数値で現す売上高規模と費用構成について解説します。

野丁場と町場のどちらが得意か?

建設会社や専門工事業者の規模とその会社が関わる工事現場の規模は一致するとは限りません。小規模であってもゼネコンが手掛ける大きな現場で作業することもあります。マンションや大型施設などの大規模建築物の現場は野丁場、住宅などの小規模建築物の現場は町場と言われ、どちらの工事を得意としているか建設会社毎に分かれることが多い。野丁場と町場で工事1件当たりの工事高が変わります。工事高が異なれば1件の工事に要する期間や投入人工数、外注の金額なども変わってきます。1年間で受注する工事の件数も野丁場中心だと少なく、町場中心だと多い。野丁場の工事はゼネコンや大手建設会社、大手サブコンなどからの下請、若しくはその下請会社からの受注となります。町場はハウスメーカーや地場工務店、リフォーム会社などからの受注です。どのような工事を受注しているかよって現調や見積もりなど営業に要する手間やコストも変わります。同じ工種の専門工事業者でも野丁場と町場のどちらの工事が多いか確認することで、営業や施工スタイルなどが想定できるようになるでしょう。

工事原価の費用構成も建設会社毎に異なります。国道交通省が告示している“完成工事原価報告書”の原価構成は「材料費・労務費・外注費・経費」とされています。建設会社でも税理士が“製造原価報告書”で決算書を作成していることも多い。その仕訳では外注費が経費に計上されていたり、労務費や工事経費の一部が販管費の給与や経費に含まれたりしています。その場合は工事原価分を仕訳直して分析する必要があります。職人を雇用して施工を内製化している建設会社は労務費の割合が多く、協力業者に依存している建設会社は外注費の割合が多くなります。また、材料費の割合からも材料を自社で調達しているか、協力業者に材工で発注しているのかも想定できるでしょう。工事原価を複数年並べてみると、費用構成が変わってくることがあります。工事種類が変わらなくても施工の携わり方や職人の増減、受注ルートなどが変化していることもあります。昨今の建材価格の高騰やその高騰分を受注金額に反映できているかなど、工事原価の割合やその変化などから想定できることも多いです。

事例

支援中の管工事業者は大手ハウスメーカーからの受注が大半を占めています。施工は直接雇用している職人と専属外注が多くを行い、外注費も実質的には固定費といった状態です。昨今の建材価格の高騰の中でも受注単価は上げられず、複数年に亘って営業損失が続いていました。特に材料費割合の増加が顕著でした。令和5年11月29日に公表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を踏まえて交渉に取り組んでもらい、受注単価の改定による損失の解消を図ることが出来ました。

まとめ

建設会社の原価構成は事業規模や受注階層だけでなく、野丁場と町場、施工への関わり方によっても変わります。更に、税理士の仕訳方によっても変わるため、経営指標などと比較する場合には注意が必要です。傾向分析で変化が見られる場合には、施工に対する方針や外部環境が変化している可能性もあります。経営診断を行うときの着眼点にもなるため、費用と事業の関係性についての理解は重要です。次号では所在地が都市部か地方部か、現場が近隣か遠方かによる違いについて解説します。

【加藤 仁史】

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