【SDGsレポート】企業活動を通して幸せを共有する企業を目指します(石井造園株式会社)

1. 企業・事業概要
石井造園株式会社は「まもる・ふやす・つなぐ」をキーワードに、まちのみどりの維持・管理から、新しいみどりの提案、さらに、地域の人がみどりと触れ合う機会をつくる取り組みを行っています。
具体的には、
①工場や個人邸の緑地の維持管理、社員樹木医が調査して倒木を防ぎ、まちのみどりを「まもる」活動
②ライフスタイルに合った庭や室内の壁面緑化などみどりを「ふやす」活動
③みどりを身近に感じることができる場づくりを通して、ひととみどりを「つなぐ」活動となっています。
| 項目 | 概要 |
| 商号 | 石井造園株式会社 |
| 本社所在地 | 〒247-0006 神奈川県横浜市栄区笠間4-11-5 |
| 設立年月日 | 個人事業から1966年有限会社石井園芸を設立、その後1994年石井造園株式会社に組織変更 |
| 従業員 | 17名 |
| 経営理念 | 企業活動を通して、幸せを共有する企業を目指す |
| 主な事業内容 | 官民顧客の緑地管理、ガーデンデザイン、壁面緑化、カフェ(「UCHISOTO CAFE」)の運営 |
(表1:同社ホームページを参考に作成 https://www.ishii-zouen.co.jp/)
2. SDGsに取り組んだ契機
同社は現在、企業の社会的責任であるCSRを経営の主軸として実践しており、結果としてSDGsの理念を体現している企業といえます。SDGsのトップランナーといえる同社がそれらに取り組んだ契機は、大きく分けて2つです。
第一に、創業家である石井家のDNAに組み込まれた地域社会との共生志向です。
子供の頃から社長になることを強く意識していたという、石井家としては12代目にあたる現代表の石井社長は、先祖代々大事にしてきた地域との関わり合いの重要性を自然に我が事と感じており、当たり前のこととして取り組んでいたと言います。
第二に、1993年から2006年40歳で卒業するまで、当時参加していた青年会議所での活動から、「明るい豊かなまちづくり」のテーマで、地元横浜を盛り上げる活動をし、その考えを規範とした経営を継続していることです。
順序としては、SDGsが提唱されたから取り組んだのではなく、地域志向CSR経営がSDGsの考え方にも合致していたと表現した方が適切でありましょう。
3. SDGsに取り組む目的・目標
前述の同社の経営理念から導かれる基本的なCSR方針は、
①活き活きとした活力ある職場環境を作り、
②仕入れや発注先は地元を優先し、地域経済の発展に寄与する、
③緑を扱うものとして地球環境の改善に貢献する、
④法に抵触する事はもとより、事後に発覚し格好の悪い事は、絶対にしない、
⑤この活動の有効性を監視し、永続的に改善する、の5つです。
これらの方針は、同社が事業遂行上歩むべき道であると同時に、経営そのものがSDGsと同期している状態ともいえます。
営利企業である以上、利益を上げ事業を存続させることは当然重要であるとの認識のうえで、代表の石井様は、売上を上げるための「やり方」ではなく、企業の「あり方」を重視し、その「あり方」に共感した顧客や地域社会が同社を存続させ、また、同社も顧客や地域社会の課題解決に貢献できるのだと言っていたのが印象的でした。
さながら、日本古来の「三方よし」を地で行く存在であると感じました。

(写真1:社長室室内壁面緑化前、ネイチャーポジティブを語る代表の石井直樹様)
同社のSDGsに関する具体的な行動は、照明のLED化、事業所における電気の100%再生可能エネルギー発電での確保、本社の笠間地区からとった「カサマルシェ」にて地域の得意技の発掘、工事現場のCO2オフセットと工事の透明性確保、ネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること)への貢献、2024年からはリトアニアでの桜の植樹など多岐にわたっていますが、本事例では特に以下を抜粋して紹介します。
(1)苗木配布
同社は、2007年から横浜市の150万本植樹行動に賛同して、ブルーベリーなどの苗木を無料で市民に配布しています。2030年までに3万本を配布する目標を立て、2025年時点で18,372本の配布を達成し、「市民自身が参加し、庭で育てる」ことで、地域の緑化に貢献し、自然の恵みを楽しみながら、未来のみどりを育てる一歩目を提供するものとなっています。
(2)緑化基金
工事代金請求額の下三桁の金額(例えば、請求金額が25万5430円であれば、430円)と同社がこれと同額の430円を基金に組み込み、1年間貯めた基金を地域活動に貢献している様々な団体に寄付しています。
2008年から開始し、累計で約550万円にもなっているとのことです。(2024年現在)
(3)みどりのアップサイクル・雇用創出
主力事業の1つである緑地管理等で伐採した樹木は、廃棄することが手間の面では合理的ですが、「伐採した樹木は、そのまちのCO2を固定したみどりのエネルギー資源」であるとの想いの下、約30cmの長さに切り揃え、薪用の丸太として販売しています。
持続可能な資源の利用を推進する取り組みの一環として、木材を再び地域社会に還元しているのです。
また、事業で発生した伐採材を厚み1㎝に加工し、コースターとして販売もしています。単に木材の有効活用という側面だけではなく、コースターの表面加工仕上げを地元の就労継続支援B型事業所に依頼し、就労支援、地域雇用にまで波及させるなど徹底ぶりで一貫したストーリーがあることも見逃せない点です。

(写真2:コースター 同社ホームページより)
(4)職場体験、地域小中学校等への出前授業、
同社では、マンションの樹木の剪定作業や清掃などの職場体験を開催し、また、社長だけでなく社員も地域小中学校等で環境等に関する先生として出前授業を提供しています。これらの活動により、「本物の道具を用いて働く」ことで本当の意味でリアルな学びの機会を提供するとともに、将来を担う地域の子供たちに豊かな自然環境を守る重要性を感じてもらう経験をしています。
4. SDGsの取組体制
(1)内部体制
社員1人を「CSR推進責任者」という名で指名するものの、全社員がCSRの担当者であり、役割を固定化させ過ぎずその時々のテーマに合わせてアサインする体制をとっています。
いわゆる本来の業務がある中で、SDGsの活動を全員の取り組みとするための方法として、SDGsの活動は「業務である」としていることです。
業務ではあるけれども、「ついでに、無理なく、達成感のある活動」の範囲内でのもので、「ついでに」は本業を通じた活動で、「無理なく」は、時間と経費をかけ過ぎない小さな活動、「達成感」は、小さな活動が運動となり、やがて社会現象になることを願いながらとの意味であるとのことでした。結果に繋がれば社員が達成感を感じることができるのです。
もう一つは、本業とSDGsは「車の両輪である」こと。どちらが欠けても事業活動はできず、自動車でいえば、本業が駆動輪で、SDGsの活動が駆動輪と同じ方向へ、同じ速度で進む車輪であるという意味だそうです。
このように、会社内部での意思統一の下、経営とSDGsを見事に同期する内部体制を構築しています。
(2)会社外部との関係
外部とのかかわりでは、前述のさまざまな活動のほか、「キワを繋ぐコーヒーショップ」をコンセプトにカフェ事業として、「UCIHSOTO CAFE」を展開しています。
このCAFEは、ショールームとしてガーデンデザインの売上につなげる会社の「内側」の機能にとどまらず、地域住民など会社の「外側」にある人たちが、みどりの中で安らぎ、園芸よろず相談ができるようにするなど、憩いの場としての機能を併せ持っています。
カフェのロゴマークがのれんになっているのは、内と外の境界は確かにあるけれども、壁のようなものではなく、シームレスに繋がっていることを意味しているのだそうです。

(写真3:UCIHSOTO CAFÉのロゴ、同社ホームページより)
また、同社では毎年「環境負荷報告書」と「CSR報告書」を作成、ホームページで公開、実際に地域住民等も参加できる報告会を開催しています。
ありのままの姿を正直に発信するとともに、次の目標を提示することで、自らにもある種の厳しい関心が向くような形でSDGsへの取組体制を構築しています。


(上の表:直近3年の「環境負荷報告書」の抜粋、下の画像:直近2年の「CSR報告書」の抜粋。同社ホームページより)
5. SDGsに取り組んだことによる効果
(1)社員の成長への効果
前述の出前授業は、2025年の実績で社長以外に社員4名が先生となり、子供たちにみどりの大切さ等を教えたそうです。「全従業員の3分の1が先生しているなんてすごいでしょ」と目を細めながら嬉しそうにされていた代表の石井様の姿が印象的でした。
この活動を通じて、先生役を担った社員は、本業の造園事業においても顧客目線に立ち、的確にコミュニケーションをする能力が向上したとのことで、本業そのものにも好影響が波及したそうです。
(2)外部とのパートナーシップへの効果
同社は「一貫したストーリーで徹底的に本気で」SDGsに取組んできた結果、その趣旨に賛同する多くのパートナーを引き寄せてきました。
結果、たとえ1つ1つは小さくても、活動が運動となり、やがて地域社会等に沢山のファンができたということです。
売り上げにつながる地域住民や自治体との協働のほか、他社との連携も生まれており、例えば、同社の「CSR報告書」の印刷を担当しているのは、同社とともにSDGs等の取組みのトップを走っている大川印刷様で、志を重ねる企業同士のつながりはより良い社会変革につながります。
(3)売上、利益やご利益の効果
社員の成長や外部とのパートナーシップの構築は、結果として売上や利益への好影響ももたらしています。
例えば、最近、近隣地域で大型マンション建設計画が立ち上がった際、地域住民が同社を工事に参加させることを強く推薦し、受注に繋がったことがありました。
代表の石井様は、地域とのパートナーシップを徹底的に本気で重視してきたことが、結果として売上に繋がったことを嬉しそうに話してくれました。
また、当該案件は、まちの大型緑地の創出に貢献し、2つの鎮守の杜、1つの大型工場緑地、2つの中央公園をつなぐ拠点になりうる立地で、生物の多様性やネイチャーポジティブといったまちの価値を向上させ、まち全体の豊かな暮らしにご利益のある仕事になったということです。
6. 今後の課題、抱負
今後の活動について、代表の石井様は、「みどりを通じたコミュニティの中心」であり続けることで、仲間を増やし「未来からのいいね!」が集まるような社会変革にまで高めたいとのことです。
CSRやSDGs等の社会課題解決志向は、グローバルスタンダードであり重要なものではありますが、一方で日本古来からの、独自のものを大切にする文化や地域固有の特性などローカルスタンダードを駆逐してしまうおそれがあるとも考えておられ、だからこそ、継続的に、小さくても、地域を大切にすることに軸足を置いて、「ついでに、無理なく、達成感」のある活動を継続されるのだということです。
また、SDGsに踏み込めていない企業等の皆様に対しての始め方のコツについて伺ったところ、良かったら、地域に軸足を置く一歩目として、すぐにでもできる会社周辺のごみ拾いなどから始めても良いのではないかと言っていました。
始めるにあたっては、企業の「あり方」を意識し、「一貫したストーリーで徹底的に本気で」やることが重要なのは前述のとおりです。この活動を広めるために、代表の石井様は忙しいさなかにありながら、講演会や研修講師などインタビュー当日にも、さまざまな普及活動にも精力的に取り組んでおられます。




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