協会活動のご案内

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 会報
  4. 連載企画 儲けの出る製造業のカイゼン活動 (4)スループットをだすカイゼンと簡易指標

連載企画 儲けの出る製造業のカイゼン活動 (4)スループットをだすカイゼンと簡易指標

儲けの出る製造業のカイゼン活動の連載第4回目(最終)はスループットをだすカイゼンと簡易指標ついて実際に製造工場でカイゼンに取組んできた生産技術者としての経験を踏まえ考察していきます。

●スループットをだすカイゼン

スループットという言葉は製造業ではTOC理論で有名ではないかと思われます。TOC(制約条件の理論, Theory of Constraints)はエリヤフ・ゴールドラットにより提唱された理論ですが、製造工程のみならず販売も含めてサプライチェーン全体で制約となっている要因(ボトルネック)を取り除き利益を上げていく考え方になります。ボトルネックというと製造工程のように実際にモノが流れているとイメージしやすいですが、販売での値引きによる売上の減少がスループットに影響が大きいならボトルネックと言ってもいいかと思います。このスループットを増やすカイゼンを製造工程に限って考えると本誌のNo.120、121号でも掲載しておりますが、①ボトルネック工程の負荷時間の最大化、②現場の分析をしっかり行い設備の復元や予防保全に取り組む、③小ロット化による短納期化により売り上げをあげる、などいろいろな活動をやみくもに行うのではなく目的をもって取組んでいくことが大事なポイントになります。生産性向上のアイテムによく出る多能工化も同じですがボトルネック工程の稼働率を上げるために非ボトルネック工程から応援に来られるように設備の改善でスキルの難易度下げたりして必要な産出量の増加につながればスループットをだす改善となります。ただこれらの改善は従来の財務分析ではなかなか見えるようにならない為、それには原価計算とは別の管理会計が必要となってきます。

●簡易指標

工場の経理担当者と管理会計の話をしたことがありますが2つの指標を追いかけると業務量が増えてとてもできないと聞いたことがあります。特に人のいない中小企業では複雑な管理指標を追いかけては時間が足りないのとそのような人を雇う余裕もないと思います。ただ改善を見えるようにするには最低限変動費と固定費は分けて管理する必要があります。固変分離というと直接原価計算が挙げられると思いますが、あくまで製造原価を中心とした考えであり管理会計の書籍をだされている吉川武文氏によれば製造原価はその計算の過程で販管費のようなものも含めて費用の配賦の段階で複雑に変化し、また、製造原価≠製造費用の為に上記のような改善は埋もれて評価できなくなると述べられています。簡便で且つ効果が見える指標として付加価値会計という会計手法が現場目線ではしっくりくると思います。

利益=売上高-変動費用-固定費用
スループット(付加価値額)=売上高-変動費

これを図示しますと以下のようになります。

ここで大事になるのは変動費と固定費を企業の実情に応じてしっかりと分離するということです。しっかり分離すことで管理する側の役割も明確になります。変動費用はオペレーションによる管理指標となるので製造課長や工場長の管理となりカイゼンの効果を計る対象として確認していきます。固定費は資源と考え戦略性のある人材獲得や育成、投資などの経営判断をしていく、というように分けて考えることが可能になります。ここで営業外収入や特別損失などは因果関係が比較的わかりやすいのと一般的には売上高に占める割合が小さいと思われるためスループットを考える上で管理外としても大きな問題にはならないと考えています。このように費用を明確に分けることで損益分岐点分析をするにしても何をするのかわかりやすくなるなど利点も多くなるため儲けを出す管理指標としてまずは変動費用と固定費用の分離を強く推奨したいと考えています。

【松田 陽介】

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

関連記事

活動のご報告