連載企画 人的資本経営は攻めの経営戦略になる (2)
皆さん、こんにちは。今年、診断士登録をした清野(せいの)と申します。前回は人的資本経営が注目される背景について整理しました。今回は視点を変え、大企業の人的資本経営の現場に目を向けたいと思います。
1.人的資本経営を通じ期待される成果
以下は、リクルートマネジメントソリューションズが2024年1月23日〜24日にかけて、大企業・中小企業の人的資本経営の取り組みに関わる826名を対象に実施した「人的資本経営・開示に関する現状調査2024」のインターネット調査の結果です。
企業規模による差は見られるものの、人的資本経営への取り組みを通じて共通して期待されている効果として、①従業員のエンゲージメント向上、②従業員のスキル向上、の2点が挙げられます。

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2.企業が従業員のエンゲージメント向上、スキル向上に力を入れる背景
人的資本経営の取り組みにおいて、企業が前述の2点(①従業員エンゲージメントの向上、②従業員スキルの向上)に期待を寄せる背景には、複数の目的や要因が絡み合っています。人材業界の現場に携わる中で、私が共通して感じている、そして理由として最も大きいのは「労働力の確保」です。
すなわち、従業員のエンゲージメントを高めるのは「人材に長く定着してもらうため」であり、スキル向上に注力するのは「生産性を高め、限られた人材リソースで最大の成果を上げるため」です。さらに、この2つの取り組みが効果的に機能している企業ほど、人が自然と集まる傾向にあります。
実際、パーソル総合研究所が2023年に実施した「20代が仕事を選ぶ際に重視する要素」に関する調査結果からもそれが確認できます。(赤字はより重視されるようになった項目:2019年から2023年で+5pt以上の差。一部表を筆者が加工)

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3.大企業の人的資本経営の取り組み
それでは、大手企業において人的資本経営の取り組みとして、どのような施策が講じられているのか見てみましょう。ここで紹介するのは、「人的資本リーダーズ2024」で10社のうちの1社に認定され、さらに「人的資本経営品質2024」でゴールドに選出された SCSK株式会社 の事例です。SCSKでは、2012年から「専門性認定制度」 を導入し、同社の成長ドライバーとなるIT人材の充足度を可視化する仕組みを構築しています。さらに、事業戦略や時代の変化に合わせて必要なスキルを獲得できるよう、社内育成制度「SCSK i-University」 を開講。また、年収3,000万円超も可能な処遇・報酬制度 を整備するなど、高い専門性を持つ人材のモチベーション維持にも力を入れています。
一方で、長時間労働が常態化しやすいIT業界において、SCSKは「社員の健康を守る」ことを明確に打ち出し、残業時間20時間以下への削減と、有給休暇20日(取得率100%)の推進に力を入れていきました。クチコミ就職情報サイト「みん就」が実施した「2026年卒IT業界新卒就職人気企業ランキング」で第3位 に選ばれるまでに至っています。もちろん、資本力のある大企業だからこそ実現できた側面もあります。
しかし、同じ規模の企業であっても、ここまでの成果を上げられるのは「人的資本経営に真剣に向き合っている企業」だからこそだと言えるでしょう。これからさらに人材確保が難しくなる中、中小企業においても“本気で人的資本経営に取り組む”姿勢が問われる時代 に入っていると感じます
【清野 裕樹】




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