
連載企画 現場から見た「物流2024年問題」(3)Gメンも監視する価格交渉
「Gメン」ってご存じでしょうか。昭和世代ならば、丹波哲郎さんらが出演した「Gメン‘75」を思い出すでしょうが、「Government Men(=公務員)」が転じて、特別捜査員などの意味で使われているようです。日本でも麻薬Gメン(厚生労働省)や、下請けGメン(中小企業庁)などは有名ですが、最近は「トラックGメン」も注目されています。
トラック運送業の価格交渉率は最下位
人件費や燃料代高騰にあえぐ物流業界。一般社団法人神奈川県トラック協会が2024年6月に公表した「物流の2024年問題」に関する意識調査によると、この問題を解決するために運送関係者が必要だと思うことは、「荷物を運ぶ適正な運賃や送料の値上げに理解を示す」が、71.2%でトップでした。経費上昇分をいかに価格に転嫁できるかが課題となります。
中小企業庁が24年11月に発表した「価格交渉促進月間フォローアップ調査結果」によると、発注側企業と受注企業側との間で「価格交渉が行われた」割合は9月調査では86.4%で、3月調査より1.2㌽増。コスト全体の価格転嫁率は49.7%で、同3.6㌽増でした。

価格交渉できる機運は醸成されていると言えますが、「トラック運送」業界の価格交渉実施状況は59.3%で、交渉を得点化したランキングでは全30業種の最下位。受注企業の業種ごとに集計した価格転嫁率は34.4%で29位でした(右図)。回答企業からは「価格交渉の場で一度持ち帰って回答しますと言われたがいまだに回答がない」「価格交渉を申し出たところ、契約打ち切りとなった」という声もあったそうです。 もともと過当競争のトラック業界は、荷主が強い世界。「元請⇒1次下請⇒2次下請」という多重下請構造にもなっていて、2次下請が1次下請に値上げしてもらうためには、元請に値上げしてもらう必要もあり、それもネックとなっています。
是正指導で社名公表も
こうした状況を解決しようと、国土交通省が23年7月、各地の運輸局に創設したのが「トラックGメン」です。
通常はトラック事業者への訪問や、トラック運転手へのヒアリングなどで情報を収集。長時間の荷待ちや、運賃・料金の不当な据え置きがあった際は、荷主などにアポなしで確認に出かけ、違反があれば3種類の是正指導を行います。その件数は24年9月現在、「勧告(社名公表)」が2件、「要請」が175件、「働きかけ」が914件。計1,091件に上り、社名公表という強権発動には衝撃が走りました。
違反内容は、「長時間の荷待ち」が52%、「契約にない付帯業務」が17%、「運賃・料金の不当な据え置き」が14%。運賃交渉に応じない荷主に「働きかけ」をし、合意させるなどの成果もありました。
24年11月には「トラック・物流Gメン」に改組して倉庫業者からも情報を収集。162人だった人員も、総勢360人に倍増されたばかりです。
Gメンが設けている目安箱には中小業者からの情報提供も相次ぎ、それを基にした荷主への調査も増えているそうです。もちろん告発業者への荷主からの報復装置は禁止されています。
運送業界から注目を集めるGメンの働きからしばらくは目が離せません。
【遠田 昌明】
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