
【SDGsレポート】「再生セメント」の普及により脱炭素社会に貢献(三和石産株式会社)
三和石産株式会社


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https://sanseki-inc.com/
1. 企業・事業概要
三和石産株式会社は、昭和39年(1964年)に秦野市で河川砂利採取業として設立しました。その後、昭和43年(1968年)に藤沢市辻堂に生コンクリートプラントを建設して生コンクリート製造販売業を開始しました。昭和61年(1986年)に本社を秦野市から藤沢市に移転。平成20年に辻堂地区の都市開発計画により辻堂工場を閉鎖し、現在の藤沢市菖蒲沢に移転しています。
現在は、本社工場以外に川崎など神奈川県内に複数の工場を持っています。また当社以外に藤沢や岩手県大船渡市に運搬や砕石といった生コン事業に関連するグループ会社をもち、生コン事業を中心とした事業展開を行っています。
項目 | 概要 |
所在地 | 神奈川県藤沢市菖蒲沢仲之桜710番地 |
創業・設立 | 1964年(昭和39年) |
従業員数 | 330名 |
企業理念 | 顧客満足の追求、継続的な品質向上、新技術への挑戦 |
事業内容 | 生コンクリート製造販売、砂利、砂、セメント販売、車両及び建設機械のリース業、不動産の賃貸、管理業務等 |
認証等 | 2016年 <内閣府> 産学官連携功労者表彰(環境大臣賞 2017年地球温暖化防止活動 環境大臣表彰 |
主要設備 | 2軸型強制ミキサー(光洋機械産業製、北川鉄工所製)、乾燥機RH-252 |
2. SDGs・脱炭素に取り組んだきっかけ
以前から、工場に製造現場で余ったコンクリート(戻りコン)が戻ってきていて、砂利や砂を除いたスラッジケーキを工場の敷地内にストックしていました。しかしそれが敷地内に山積みになってきたので、20年前に乾燥機を購入してリサイクルを始めたのがきっかけです。
リサイクル事業を始めた当初は、SDGsといった事は全く言われておらず、世の中ではリサイクル品は安いものがいいと言われる時代でしたので当時は脱炭素の取り組みという意識はありませんでした。結果として現在は脱炭素の取り組みとなっていますが、世の中の流れを先取りした取り組みだったと言えます。
3. SDGs・脱炭素に取り組む目的・目標
以前から、社長自身は、「セメントは主に石灰石から作られるので、環境に良くないことをしている」という認識はもっており、リサイクルを自社の環境対策としても取組みたいという気持ちもありました。
こうした認識と、敷地内に山積みになっているスラッジケーキを何とかしなければという意識から始めた取り組みです。こうしたことから始めた戻りコンから製造した再生セメントの取り組みですが、当初は、低強度の品質要求である地盤改良用の素材として利用しておりました。その後、再生セメントに関する共同研究を東海大学とスタートしたところ、再生セメントの基礎特性が明らかとなり、脱炭素素材として使用できるようになりました。
さらに取引先である鹿島建設も戻りコンの脱炭素問題と環境問題を何とかしたいと考えていたため、いろいろ探していたところ当社を探しあて、その後共同研究の取り組みを始めるようになりました。鹿島建設と一緒に取り組むようになったことで、コンクリートの材料証明(第3者証明)も得て、社外にも販売が可能となり販路拡大に繋がりました。2016年には環境大臣賞も受賞しました。戻りコンのリサイクルに関する特許も鹿島建設と一緒に取得しています。
戻りコンの利用がどのくらい脱炭素に貢献しているかという具体的な数字ですが、通常生セメントを製造するのにセメント1トン当たり800KgのCO2が排出されますが、戻りコンから製造した再生セメントは1トンあたり100KgのCO2排出量となり、CO2排出量が8分の1と大幅な削減につながります。
現在、再生セメント事業自体は、まだ利益がほとんど出ていない状況ではあるものの、色々な形で販売量が拡大してきている状況です。今後は販路拡大に努め、設備の稼働率を高め、コストを下げて事業としてしっかりとした利益を出せるようにすることが今後の目標です。




4. SDGs・脱炭素の取り組み体制
社内の組織体制としてはテスティング事業部と資源生産部がリサイクルセメントの生産から品質管理まで実施しています。また、グループの生コン工場だけでなく、営業部門では社外への販売も積極的に行っております。
脱炭素の取り組みとしては再生セメントの生産だけでなく、グループの運送会社のエッグ株式会社では、既存の車と異なり、最大積載量11.5トンのミキサー車を新たに開発し(特許取得済み)、運搬回数を減らすことによるCO2排出量の削減にも取り組んでいます。

5. SDGs・脱炭素に取り組んだことによる効果
脱炭素の取り組みによる効果としてはまずは環境にやさしい取り組みをしている企業として三和石産という会社自体のPRに繋がっていることが挙げられます。最近は地方の同業者からの視察希望も多くなり、見学等を実施しております。
雇用面では、再生セメントに関する研究を通じて、大学との繋がりが広がり、学生の入社につながる事例がでてきました。
販売面では、再生セメントの過程で発生する砂や砂利を廃棄するのではなく、25Kgの袋に詰めてホームセンター用のPB製品用や、建設業者に対して販売するなど新たな販路拡大にも繋がっています。
再生セメントの価格自体も、従来は安い価格でしか販売できなかったが、現在は通常品よりも高い価格で販売できるような事例もあり、脱炭素に取り組んでいる環境にやさしい商品という付加価値が購入者に認められるようになってきています。

6. SDGs・脱炭素の取り組みに関して今後の課題・抱負について
前述したように、現在半分の設備稼働率をフル稼働させることが今後の目標ですが、そのためには、再生セメントが脱炭素の取り組みにつながることの認知度アップが大きな課題です。共同研究先の鹿島建設の取引先でも、再生セメントの利用を認める施工主と認めない施工主もいるためより認知度を上げてく必要があると考えています。ただ社会の脱炭素の取り組みに対する関心の高まりから再生セメントが脱炭素に貢献する認識は徐々に高まってきており、認知度アップは時間の問題とも考えています。
最近は竹中工務店とも戻りコン由来の骨材(砂や砂利)を活用したリサイクルの取り組みがスタートしています。今後はこの再生セメントの取り組みを全国に広げていきたいと考えています。特に需要の多い首都圏、関西圏で鹿島建設と一緒になって再生セメント製造工場を技術供与により作っていく事も考えています。どこの生コン工場でも戻りコンの問題はあり、夕方帰ってくる戻りコンの処理のために残業時間が増えていることが問題となっています。こうした取り組みが生コン業界の労働環境改善の取り組みにもつながることが期待できます。
戻りコンの発生は生コン全体の出荷量の約2%です。これを廃棄物とせず、再生過程で発生する砂や砂利も含めて廃棄ゼロとすることを目標とする脱炭素の取り組み目標に向けて、当社は今後も積極的に活動していきます。
以上
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