【SDGsレポート】障がい者の感性や特性を付加価値に変える(株式会社Nextwel)
株式会社Nextwel
障がい者の感性や特性を付加価値に変える
ホームページ
https://nextwel.co.jp/
▮代表 日野 信輔
▮所在地 川崎市川崎区
▮事業内容 障害者支援事業、メディア事業、Webマーケティングコンサルティング事業、Web制作事業
1. 企業概要
神奈川県のSDGsパートナー登録企業である株式会社NEXTWELは、2013年に起業し、2017年5月に会社設立、現在5年目を迎えました。JR川崎駅前のシェアオフィスに事務所があります。創業者で社長の日野さんと従業員1名の会社です。
WEB制作、動画編集、ライティング、データ入力、WEB広告運用代行、オフラインの仕事を主な業務としています。障がい者の就業支援や待遇の向上を目指しています。
2. 具体的なSDGsの取組内容
当社は本業を通じて、5つの機能を提供し価値創造をしています。
①全国で約3000人に及ぶ障がい者とのネットワークを構築
②パートナー(協業先)へのBPOを通じて障がい者に業務委託
③障がい者ならではの感性やスキルを活かし、付加価値の高いWeb制作などを請け負い、委託先からの業務受託及び パートナーとのデザインやコーディングなど水平的分業
④自社がコミュニケーションのハブ機能やオルガナイザー機能を果たして、障がい者とのコミュニケーションを円滑に実施し、製品やサービスの納期や品質を担保すること
⑤障がい者の就労機会の拡大、待遇条件の改善
3. 取組を始めたきっかけ、理由、目的
日野社長が参加された法政大学のオープン講義の中で、障がい者雇用率が7割という日本理化学工業株式会社(チョーク製造、川崎市高津区)を知ることになりました。たまたま自宅に近い企業でもあり、自分自身も障がい者就労支援をしたいと大いに触発されました。
障がい者に対しては、これまで経済条件よりも雇用創出支援を優先すべきであるとの発想が強くありました。障がいの部分にフォーカスされてしまうことが多く、才能があるにもかかわらず発揮されていませんでした。しかし、障がい者は逆に強みを持っており、ここに付加価値をつけられる仕事を見出せれば、付加価値の高い仕事を障がい者に与えることができ、工賃も上げられることに気づきました。
4. SDGs活動の成果 ~本業・従業員・取引先など色々な視点から~
Nextwelが仲介した事例です。ペーパークラフトの制作を受注していた障がい者の事業所は受注単価が安い製品の制作を行うことで、百均にも勝てない苦境に追い込まれていました。ペーパークラフトの制作技能を活かせるランプシェードを制作することで、単価は13000円~15000円に飛躍的に上昇しました。付加価値を付ける、大量生産しない、(敢えて)短納期で受注しないことが重要で、制作過程を顧客に情報発信することで、待つ楽しみも生まれています。
また、後継者不足の伝統産業の職人の技能継承では、工程別に切り分けて(分業)、一工程に特化することで、障がい者にも職人の伝統技能の承継が可能になっています。また、感覚過敏などの生まれつきの理由で、生活の中で雑音が苦手な方が多いので、できるだけ静かな場所に住みたいといったニーズがあります。例えば、こうしたニーズを増加する空き家の利活用とも結びつけられれば、社会的課題の解決にも繋がる可能性があります。
障がい者の就労環境を整備・向上させるために、事業者に配慮事項を伝えることにも腐心しています。例えば、音が苦手な(集中力をそがれる)障がい者の周辺には、音を常時発する機器(例えばコピー機)を置かないことや、知的障がい者でも色の判別ができるので、食器の色を塗り分けることで、収納場所に同じ色のシールを付けて分かり易くすることも出来ます。この結果、作業の生産性は大きく向上し、障がい者に留まらず、一緒に働く健常者にとっても、生産性の向上に繋がっています。結果として、当社は当事者の双方にメリットがある架け橋役ともなっています。
5. 実際に取り組んでわかったこと・連携先との関係の変化・思いがけない効果
022年5月に神奈川県のSDGsパートナーに登録しました。川崎市、小田原市からSDGsパートナーにも認定されています。行政機関に当社への興味を持って頂いたことで、企業連携がやり易くなりました。神奈川県の課題を知ることにも繋がっています。県が主催するパートナーミーティングへの参加を通して、ベクトルが一致している仲間とのネットワーキングが図れています。
神奈川県産業振興課のスタートアップ支援事業を活用して、ファンドレイジング(資金調達)も実現しています。この資金を利用して、障がい者に利用しやすいWeb Accessibilityに配慮したWeb制作に着手しています。読み上げソフトの標準装備や、感覚過敏、弱視、色覚特性に配慮した背景色の採用など、障がい者であるからこそ気付くことができる潜在的なストレスを改善することで、滞在率、コンバージョン率、SEOの改善に繋がっています。健常者にとっても使いやすいSDGs特化型のWeb制作を目指しています。
6. 今後の課題・さらに取り組みたいこと
事業活動を通じて認知度が上がり、「こんなことも出来るのか!」と障がい者就労による付加価値について、理解・啓発が進んできたと手応えを感じています。
事業拡大(売上高増加)よりも、工賃をどれだけアップできるか、就労人員をどれだけ増やせたかなどのSocial Impactを重視しています。売上高アップを志向すると、障がい者はついて来られないので、急な成長をなるべくしすぎないように意識しています。
障がい者だからこそできること、障がい者の弱みを強みに変えること、障がい者だからこそ解決できることを目指して、障がい者就労におけるパラダイムシフトを起こしていきたいと考えています。
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