
連載企画 工程設計とレイアウト最適化(3)
遅いですが、あけましておめでとうございます(原稿を3が日に書いています)。村上 卓也です。生産技術開発も約30年以上となります。その間IE(Industrial Engineer)技術者として新工場設計、工程設計、現場の改善テーマ指導を行ってきました。前回はSLP(Systematic Layout Planning)技術を用いて工場レイアウトを検討する方法を紹介しました。今回は、その結果、実現した「工程レイアウト」を見ていきます。
工程設計とSLP・その2
前回、「工程レイアウト」の検討において、「安全・防災・環境」の3本を重要視していることをお伝えしました。「コスト・生産性」はこれらの次の優先順位ですが、これは優先順位が低いことを意味しません。「安防環」配慮した上で「経済効率が良い」レイアウトの実現が技術者に求められている、と思います。
前回ご紹介したレイアウト手法の技術、「SLP」を用いた実際のレイアウトの例を紹介していきます。SLPは次のステップで工程レイアウトを検討する技術です。
①工程工程設計のため各工程の詳細なデータを集め分析。
各工程、各機械設備単位で必要な設置面積(これには材料や製品の一時置き場を含む)データを集めます。工程ごとに通路や仕掛スペースも考慮します。
②工程アクティビティ関係分析
前回ご紹介した下図を作成します。工場を構成する各工程の様々な関係を分析、可視化します。

③スペースの調査
工程単位の面積、工場建屋構造物、フォークリフトなどの動線が整合確認のため、配置予定のスペースを調査します。
④スペース関係図
各工程のアクティビティに応じて必要スペースで並べた図を作成します。
➄レイアウト配置
再掲しますが、各工程のアクティビティ関係が合理的、かつ工場建屋制約と整合する実際のレイアウトを決定します。初回にご紹介した各工程の生産能力やスペース、工程間の運搬量や運搬タイミングなどが把握できていると、最大限合理的なレイアウトを実現できます。
SLPを用いて実現した工場レイアウトの例
下図は、あるお客様の工場新設の際、SLPを用いてレイアウト設計を行った状態を示します。製造業の製造工場で、「板金加工」の工場と考えて頂ければ良いと思います。実際には工場全体の設計を行ったのですが、ご紹介できるのは一部となります。ご了承ください。
上記が工程関連アクティビティ図分析を行い、スペース配置最適化を行ってレイアウトした工場の図を示します。アクティビティ相互関連図により、「場所を離した方が良い」判定をした、酸洗工程、塗装工程は別の建屋に配置することで、安全・防災性と、環境対策を集中することができました。
安全・防災対策や環境対策は、相応の導入コストがかかるため、別建屋として面積を小さくすることでコストを抑えることができました。
このレイアウトの利点は、「動線が一筆書き状にスムーズに進む」ようになっていることです。下図に「ワークの動線」を青→で示しました。これからわかるように建屋右方向から材料が搬入され、切断、穴あけなど前加工を行ってから、溶接組立を行い、別建屋の塗装工程に運搬するレイアウトとなっています。このようにSLPを用いると、「レイアウト検討の過程が合理的に説明できる」ため、出来上がったレイアウトが、自然と合理的な配置になります。ぜひ、本技術の採用をご検討いただければ幸いです。今回は以上となります。ではまた。
【村上 卓也】
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