神奈川県中小企業活性化協議会 ~企業の新陳代謝を促す伴走者~
物価高騰やゼロゼロ融資の返済本格化など、資金繰りに悩む中小企業は増加しています。こうした中、収益力改善や再生支援、再チャレンジ支援のプラットフォームとして重要な役割を担うのが中小企業活性化協議会です。今回は、神奈川県中小企業活性化協議会で金融機関からの出向者(トレーニー職員)として研鑽を積む永田真由さんにお話を伺いました。
■神奈川県中小企業活性化協議会について
―神奈川県中小企業活性化協議会とは、どのような組織ですか?
中小企業活性化協議会は「産業競争力強化法」に基づいて経済産業省から委託され、47都道府県それぞれに設置運営されている公的支援機関です。主に、事業者の収益力改善や事業再生のための計画策定の支援や、再チャレンジのための円滑な廃業支援を行っています。組織の体制としては、統括責任者に加え、金融機関出身者や公認会計士、弁護士等、事業再生の実務に精通した統括責任者補佐、およびトレーニーと合わせて現在17名で構成されています。

神奈川県中小企業活性化協議会
統括責任者補佐 永田真由さん
―最近の相談の傾向を教えてください。
2025年度は相談企業が386社あり、そのうち3期連続赤字が164社、リスケ(借入金の返済猶予)を受けているのが181社と、深刻な業績不振に陥っているケースが半数を超えていました。廃業についての相談に来られた事業者も94社あり、これは相談全体の24.4%に及びます。
財務状況がかなり傷んだ状態になってから協議会に来てくださる方が多いように感じますが、これは協議会の知名度が低いことが一因とも考えられます。そのため、金融機関向けに勉強会を開催して、協議会についての理解を深め、金融機関経由でのご相談が増えるように取り組んでいるところです。
■活性化協議会の重要ミッション「廃業支援」
―永田さんは川崎市信用保証協会からの出向という立場ですが、支援の現場で感じる両組織の違いはどんな点ですか?
支援フェーズの違いを特に感じます。協議会に相談に来られる事業者は、金融機関からの借入金の返済に困っていたり、場合によっては廃業も検討していたりとかなり経営状態が逼迫した状態であることが多い印象です。事業者の進退に関わる相談を受ける立場として私自身もより気を引き締めて臨んでいます。
―協議会の支援のひとつである「廃業支援」の具体的な支援内容を教えてください。
私たち活性化協議会の根拠法である産業競争力強化法は、産業の新陳代謝を促す方針が定められており、再生だけでなく廃業の支援も行っています。ご相談を受けて計画を作っていくと、その中でどうしても現実が見えてきてしまい、再生ではなく廃業の選択肢をお示しするケースも少なくありません。
廃業するにしてもなかなか決心がつかない、けれどこのままだとジリ貧になって法的整理しかないという場合には、経営者保証ガイドラインの制度を使い、保証債務の免除を受けることができる場合もあることをお伝えしています。
ガイドラインの制度利用は私的整理になるので、信用情報に傷がつかず、事業者として再チャレンジしやすくなるという利点もあります。協議会にアクセスいただければ、このような制度に詳しい専門家がアドバイスできるため、早めにご相談に来ていただきたいと思っています。

「中小企業活性化協議会を通じた再チャレンジ事例集」パンフレットより
―それだけ逼迫していると、相談内容が第三者に知られることを不安に思う事業者もいるのではないでしょうか?
私たち協議会は「公正中立・事業性重視・秘密厳守」の三原則に基づいて運営されています。事業者からのご相談は一切口外しないので、安心して相談に来てほしいです。財務的には公正中立に、一方的に返済を迫るようなこともありません。ただ、一時的に財務面が改善しても事業そのものが改善しなければ根本的な解決にはならないため、事業の将来性分析や収益力向上についてもご支援させていただいています。
―そういった方は、金融機関から早期につながっていただきたいですね。
そうなんです。活性化協議会を知らない事業者も多く、協議会の認知度向上が課題の一つであると考えています。保証協会では、条件変更や専門家派遣等の申込を通じて経営に課題を抱える事業者と接する機会が多くあるため、事業者を早期に適切な支援につなげることができます。
収益力改善支援のフェーズから業況回復を目指すことは比較的取り組みやすいのですが、事業再生支援、再チャレンジ支援のフェーズになると、どんどん元の業況に戻るのが難しくなってしまうので、資金があるうちに相談していただけた方が、傷が浅くて済むケースが多いです。
■活性化協議会と金融機関の連携を強化する「トレーニー制度」
―活性化協議会は、金融機関からの出向者を受け入れる「トレーニー制度」があります。この制度について詳しく教えてください。
トレーニー制度は、活性化協議会における事業再生支援ノウハウを、各地の金融機関に還元するための制度として2024年に始まりました。信用保証協会や銀行、信用金庫、信用組合などの職員が半年から一年間の任期で協議会へ出向し、実習やOJTでノウハウを習得して各組織に持ち帰るためのプログラムです。
全国のトレーニーで行う集合研修もあり、私も先日参加してきました。各協議会の支援内容に関する情報交換が行われたり、中小企業診断士や弁護士、再生系サービサー等のセミナー研修が行われ、貴重な学びと交流の機会になっています。
―トレーニーの経験を通じて、どのような学びを持ち帰りたいと考えていますか?
生支援の手法そのものであったり、協議会の支援メニューを詳しく知ることで、事業者に適した支援と、それを把握するための能力を身に付けて持ち帰れたらいいなと思っています。保証協会に戻った後、事業者の話を聞いて「この事業者はもしかしたら専門家派遣より協議会の支援メニューの方が合っているかもしれない」と想起できるイメージです。迷ったときにも「ちょっと協議会に相談してみよう」ができる関係性が築けているのは心強いです。
他にも、協議会のオフィスがある神奈川中小企業センターには「よろず支援拠点」や「事業承継・引継ぎ支援センター」もあり、私が持っているそれらの繋がりを後輩にも繋げることで、この経験を組織へ還元できるのではないかと思います。
■支援の現場で光る、中小企業診断士としての学び
―今年、永田さんは中小企業診断士登録されました。資格取得の経緯について教えてください。
診断士の資格を取ろうと思ったきっかけですが、保証協会で代位弁済の業務を担当していたときに、廃業される方や連絡がつかなくなってしまう方が結構いらっしゃることに衝撃を受けました。事業者がそのフェーズに至る前にアドバイスができる知識がほしいと思い、診断士の勉強を始めました。ほかにも、職場内で診断士資格を持って輝いている先輩たちに憧れたというのもあります。
取得にあたっては、職場の支援を受けて中小企業大学校の養成課程に通いました。半年間の研修期間を経て、今年5月に登録となりました。大変だったこともありますが、即戦力を育てるカリキュラムは学びがいがあり、一緒に学んだ仲間にはこれまで自分が関わったことがない職種の人もいて、視野が広がったという点でも良かったなと思います。
―診断士として学んだことが、支援の現場でどのように役に立っていると感じますか?
事業者の話を聞いていると、自社の強みや弱みがあまり見えていないと感じることがあります。そんなときに、診断士として学んだ知識やフレームワークが頭の中にあると、状況を整理したり、改善のための課題を見つけやすくなったりします。
ヒアリングでも、これまでは自分の気になった点を中心に質問してしまうこともあったのですが、診断士の勉強をして頭の中にフレームワークが出てくるようになったので、質問すべきことが自ずと浮かぶようになりました。たとえば、組織の話をしていればバーナードの「組織の3要素」のことを思い出し、コミュニケーションに問題がありそうだからより深く聞いておこう、というような感じですね。診断士の勉強は、支援の現場でもしっかり役に立っていると感じます。
■まとめ:活性化協議会と中小企業診断士との連携
―最後に、中小企業診断士に向けてのメッセージをお願いします。
協議会の立場としては、『早めの相談が大切』ということを重ねてお伝えしたいです。事業性の回復については、事業者さまご自身や診断士の皆さまが尽力される部分かと思いますが、複数の金融機関の調整などは、診断士だけでは対応が難しい部分です。そういうときに、国の補助金を使って専門家のアドバイスが受けられる協議会の支援を受けてほしいなと思います。もしご支援先や身の回りで経営に困っている方がいらっしゃる場合は、まず協議会のことを思い出して、なるべく早めにご相談をいただけると幸いです。
【水野 愛子】




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