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公的機関インタビュー 綾瀬市商工会 ― 地域に寄り添い、企業と共に歩む

神奈川県中部に位置する綾瀬市は、古くから「ものづくりのまち」として知られ、地域には多くの製造業が根づいています。中小・小規模事業者が多数を占めるこのまちで、日々、経営の相談相手となり、時には地域をつなぐ“仕掛け人”として動いているのが綾瀬市商工会です。今回は、同会で経営支援と地域振興を担う中村様に、取組みの全体像と今後の展望を伺いました。

■中小・小規模事業者の“よりどころ”

綾瀬市商工会の会員は約1,300事業所。製造業が多い地域特性を背景に、相談は創業・資金調達・補助金の活用・取引先との調整・設備投資の計画づくりなど多岐にわたります。

「資金や補助金に関するご相談が一番多いですね。事業者様が“次の一歩”を安心して踏み出せるよう、要件整理から計画書の骨子づくりまで伴走します」と中村さん。

商工会の支援は、制度の説明に留まりません。ヒアリングで事業の強み・弱みを丁寧に洗い出し、「何を・いつまでに・誰がやるのか」を一緒に決め切る実務寄りのサポートが特長です。計画が走り出した後も、進捗の詰まりを解消し、必要に応じて金融機関や専門家につなぎます。

「頭の中にある“やりたい”を、言葉とスケジュールに落とし込むところが、商工会の腕の見せ所だと思っています。」

■まちを動かすイベントの力

商工会は、経営支援と並行して地域のにぎわいづくりにも力を入れています。春の「桜まつり」、夏の「花火大会」、秋の「あやせ産業まつり」。青年部・女性部を中心に行政やJA、地元商業者と連携し、“まちぐるみ”の運営で継続してきました。産業まつりでは、地場野菜の優良事業所の表彰や地元店舗・露店の出店が恒例となり、新しいお客さまとのリアルな接点が生まれます。

さらに人気なのが、毎月第1日曜日、市役所近くで開かれる「朝市」です。朝一番徳の市実行委員会を運営母体とし、綾瀬市商工会は事務委託を受けています。わずか1時間の開催にもかかわらず、毎回約1,000人が来場。全国朝市ランキングで6位を獲得しました。新鮮な農産物や朝ごはんを求める人の流れは、そのまま地域の店舗や商店街へと広がります。

「イベントは“売上づくりの入口”になるだけでなく、事業者様同士が顔を合わせる場にもなります。そこから共同出店やコラボ商品の話が生まれることも少なくありません。」

■外国人技能実習生・特定技能を支える“現場密着”の仕組み

綾瀬の製造業は、人材確保が大きな課題です。そこで商工会は、外国人技能実習生・特定技能に関する監理・支援の役割も担っています。特徴は、採用前から定着までを一気通貫で伴走すること。

企業と一緒にベトナムやインドネシアに赴き、現地で面接をします。採用が決まれば、送出機関と連携し、来日前の日本語学習や入国手続き、来日後の生活立ち上げまで並走します。月1回の企業訪問や必要時の病院同行など、困りごとをすぐに解決できる体制を整えています。」

現在、9社で44名が就労。コロナ禍で一時落ち込んだ受入数も回復し、安全・安心の労働環境を求めて日本を志望する人は依然多いといいます。

「“採用して終わり”にしないことが大切。生活・文化・職場の壁を一緒に乗り越えることで、企業にも実習生にも『ここで働いてよかった』という実感が生まれます。」

■診断士との連携で広がる“できること”

商工会の支援体制を底上げしているのが、中小企業診断士との連携です。現在は3名の診断士が毎週水曜日にローテーションで経営相談を担当。商品開発の伴走、補助金計画の磨き込み、販路開拓の実行計画づくりなど、現場直結の支援が進んでいます。

診断士の先生方が入ってくださることで、“やりたい”が“やれた”に変わる。私たちは別の支援にも手を伸ばせますし、企業にとっては複数の視点を受け取れるのが大きいですね。」

女性部では「あやせ姫ブランド」の認定制度を立ち上げ、女性経営者の新商品を後押し。審査やブラッシュアップに診断士が関わり、“売れる設計”へと磨き上げます。相談枠は満席になる日も多く、「困ったときの窓口」として機能しています。

■具体事例でみる“伴走支援”の流れ

支援の流れはシンプルです。
現状把握:数値・現場・人の課題を棚卸し
目標とKPI設定:売上・粗利・新規獲得数など指標を選定
計画に落とし込む:補助金活用の要否、投資と回収の道筋、販路の選択
実行支援:商品試作・価格設計・販促物・EC/LP制作の伴走と専門家紹介
振り返り:イベントや出展結果のレビュー、次施策への接続
例えば、商品開発では、“誰に・どんな価値を・いくらで・どこで”を定義し、必要に応じてパッケージ・写真・販促テキストまで作り切る体制をつくります。ECやホームページが必要な場合は、商工会会員向けの無料ツールを活用して短期立ち上げを支援しています。

支援した会員様から『無料で良いの?』と言われることもあります。商工会の支援メニューを存分に活用し、事業の発展に役立てて頂けたらと思います。

■迫る課題:高齢化と“黒字廃業”をどう止めるか

地域で今、特に深刻化しているのが高齢化による廃業の増加です。製造業は2代目・3代目への承継が比較的進む一方、飲食などの個人店では“黒字のまま畳む”例が目立ちます。

「『やめどき』の相談は確定申告の時期に増えます。お客さまも従業員もいるのに、後継者不在や契約条件の変更で継げなくなる。長年の営みが消えてしまうのは本当にもったいない。」

商工会は、空き店舗情報の収集・居抜き活用の斡旋・創業スクールの案内など、次の担い手につなぐ仕組みを強化しています。物件や賃貸条件、許認可の壁を一緒に解きほぐし、「現実にできる承継」を模索。

「“もったいないを、次へ”が合言葉です。条件が整えば、地域に必要な店を残せます。」

■診断士に期待すること:中に入り、いっしょに決め、動かす

商工会と診断士の連携は、“役割分担”ではなく“共同作業”です。
「私たち職員にも得意・不得意があります。だからこそ、診断士の先生には現場に入り、意思決定を促し、実行を回すところまで伴走していただけるとありがたいです。『整理』『言語化』『スケジューリング』は、事業者様の背中を押す最強の三点セットです。」

また、水曜日の経営相談以外にも、県連のコーディネーター派遣/エキスパート派遣を活用すれば、年数回の個別支援を無償で受けられます。曜日が合わない事業者様にも届く支援線であり、「初回のハードルを下げる」仕組みとして機能しています。

■どうやって“つながる”のか(診断士・専門家の方向け)

「商工会とつながる方法が分からない」という声は少なくありません。綾瀬市商工会では、
・定例の経営相談(毎週水曜)での相談員ローテーション
・事業者様のニーズに応じた専門家の個別紹介
・イベント・展示会での共同企画・出展(産業まつり、朝市、テクニカルショウヨコハマの合同ブース 等)といった接点があります。実際、現在一緒に活動している診断士との連携も、「まずは参加・対話・試行」から始まりました。
「継続的に顔を合わせることが一番の近道。得意領域を率直に伝えていただければ、必要な場面でお声がけしやすくなります。」

■これからの綾瀬市商工会にできること

企業の“第二創業”を後押し
成熟期の事業でも、商品再設計・販路転換・デジタル活用で収益モデルは変えられます。補助金はあくまで手段。先に構想、あとに制度設計が鉄則です。

地域横断のマッチングを仕組みに
空き店舗・居抜き・後継候補の情報を蓄積し、常設のマッチング面談日を設けて接続回数を増やす。小さな機会の積み重ねが廃業抑止につながります。

外国人材の“定着率”で勝つ
採用数だけでなく、定着と成長のストーリーを企業と共有。生活支援・教育・評価の仕組みを軽やかに回し、地域の戦力化を進めます。

■おわりに ― 顔の見える支援を、これからも

経営支援、イベント運営、外国人材の定着支援、事業承継。どれも単独では完結しません。商工会・企業・診断士・行政が手を携え、「現場で、具体に、いま動く」ことが地域を強くします。
「困ったとき、まず相談できる相手がいる」。その安心を、綾瀬市商工会はこれからも守り続けます。“もったいないを、次へ。”――綾瀬のまちづくりは、そんな合言葉とともに、今日も前に進んでいます。

お話を伺う中で、中小企業様の支援において、常に寄り添い耳を傾けるといった姿勢と、その上で適切なサポートの提供といった知識の両輪が必要であると感じることができました。これらの内容は、多くの中小企業診断士にとって深い学びに繋がる内容だと思います。お忙しい時期にインタビューに応じて頂きました綾瀬市商工会経営指導員の中村様に厚く御礼申し上げます。

【大澤 一樹】

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