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(連載企画)ベネフィットコーポレーションについて(第1回)

 2022年6月7日「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が閣議決定されました。同計画はその副題のとおり、「人・技術・スタートアップへの投資」にフォーカスしています。人的資本蓄積、先端技術開発、スタートアップ育成は新自由主義の市場だけでは進みにくく、他方で今後の日本の成長に不可欠な投資だからです。
 ここでは同計画の中で、社会的課題を解決する経済社会システムを構築する手法として検討されるベネフィットコーポレーションについて概観します。

1.ベネフィットコーポレーションとは何か

 ベネフィットコーポレーションとは、「公的な役割を目的とする企業」と定義されます。企業の目的が株主利益の最大化だけでなく、社会に対して便益をもたらすことも目的とする企業です。
 日本には「企業は社会の公器」という松下幸之助氏の名言がありますし、「三方よし」の考えもあります。現在の株式会社や合同会社で十分ではないか、というご意見があるのは当然です。それなのに、なぜ国があえて新たな会社形態として検討することにしたのか、その理由を探ってみましょう。

2.ベネフィットコーポレーションが生まれたきっかけ

 ベネフィットコーポレーションは米国で生まれました。米国は株主資本主義の聖地であるにもかかわらず、このような考え方が出てくるところにダイバーシティを感じます。現在、ベネフィットコーポレーションは米国37の州で法制化されています。
 ベネフィットコーポレーションという形態が生まれたきっかけのひとつに、バーモント州で創業されたあるアイスクリームメーカーをユニリーバが買収したことが影響していると言われています。このアイスクリームメーカーは、使用する原材料をフェアトレードで調達し、社会的困窮者を雇用しているサプライヤーと取引するなどしていました。さらに、同メーカーの経営者は財団を設立し、会社の税引前利益の7.5%をその財団に寄付していました。上場にあたっても地元バーモント州の住民だけに株式を公開しました。その後、健康志向の高まりからこのアイスクリームメーカーの株価が低迷し、ユニリーバに買収されました。同社はユニリーバに買収された後も社会的価値を重視した経営を継続したため、ユニリーバは結果的に、社会や環境に配慮したブランドを手に入れたことになりました。このアイスクリームメーカーが後にB corpになります。

3.米国企業がベネフィットコーポレーションを選択する理由

この会社形態を選ぶのは、
■会社が売却されたとしても、また、遠い将来においても、会社の価値観は継続することができる (スポーツ用品メーカー パタゴニア)
■世間に対して、我々の価値観を示すことができる(眼鏡製造業のワービーパーカー)
からだとされています。

4.具体的な法律のあらまし

日本の会社法はひとつですが、米国は州ごとに会社法があり、それぞれ内容が違っているようです。共通点をあげると以下のとおりです。
■定款にベネフィットコーポレーションであることを明記すること
■取締役の義務として、株主のみならず、公共の利益を考慮すること→ベネフィットコーポレーションの取締役は、他の利害関係者の利益を考慮することが法律で要求されています
■株式会社からベネフィットコーポレーションに移行することは可能ですが、株主の2/3以上の賛成が必要
■配当は普通の株式会社と同じく可能

 

ベネフィットコーポレーションとは何か、生まれたきっかけ、このような会社形態を選ぶ理由、米国の法律のあらまし、について概観しました。次回は、どれくらいの数のベネフィットコーポレーションが設立されているのか、などについて見ていきます。
参考資料1.内閣官房 新しい資本主義実現会議 第6回資料
参考資料2.鈴木由紀子「ベネフィット・コポーレーションの展開と課題」『商学研究』33号


【関澤 充】

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