連載企画 中小企業のDXの現実解を考える (1)中小企業のDX
DX(Digital Transformation)という言葉が定着して久しい一方で、「DXとは何なのか」「何から始めればよいのか」という声はまだまだ多く聞かれます。特に、中小企業では大企業の成功事例をそのまま参考にすることが難しく、とまどう経営者も少なくありません。本連載では「中小企業におけるDXの現実解」という視点で、DXの進め方について考えていきます。
■DXとは
一口にDXといっても、その定義・考え方には幅があります。例えば、経済産業省が発表しているデジタルガバナンス・コード3.0では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しています。また、ガートナー社は「デジタル技術やデータを活用して製品、サービス、ビジネスモデルを変革し、最適化や新たな価値の創出を推進・実現すること」と述べています。
共通しているのは「Digital」や「Transformation(変革)」が最終目的ではなく、それを通じてビジネス上の競争優位や新たな価値を創出することを目指している点です。その意味では、手段がIT・デジタルであるというだけで、一般的な業務改善や組織変革と本質は同じという見方ができるかもしれません。
DXの段階は、一般的に以下のように分類されます。
段階1. デジタル化されていない状態
段階2. 情報のデジタル化(デジタイゼーション)
段階3. プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)
段階4. ビジネス・組織の変革(デジタルトランスフォーメーション)
2025年度版「中小企業白書(HTML版) 」(第1部 第1章 第5節)によると、DXに取り組み始めた中小企業は増加しているものの、いまだに初期段階(段階2)の企業が過半数を占めています。
■大企業と中小企業
大企業では、経営層をトップとしたDX部隊を編成して、変革の全体像(グランドデザイン、ロードマップ)や中長期の予算計画をまず策定し、それをベースに施策の詳細化を行うことでDXの全体最適化を図っています。
一方、中小企業の場合は人材や予算に余裕がない場合も多く、DXのノウハウも少ないため、このような大規模なDX計画を策定・実行することは容易ではありません。かといって場当たり的にデジタル化を進めていくと、システムの乱立やデータの分断が発生してDXの恩恵を十分に受けられないだけでなく、システムの維持管理コストが膨らみ、逆に経営の負担となる恐れがあります。
大企業のような壮大な計画を描くことは難しい。一方で、場当たり的な対応では効果を得にくい。このジレンマが、中小企業のDXを停滞させている一因と考えられます。
■中小企業のDX
私は、中小企業が上記のような理由でDXの推進をあきらめてしまうのは大変もったいないと感じます。中小企業の場合、大企業のような大がかりな設計図を描くのは難しくとも、現時点で考えられる「DXで何を実現したいのか、どのような会社になりたいのか」の大まかな方向性を定め、まずは小さな取り組みから始めてみるのがよいのではないかと思います。
中小企業の強みは、経営と現場の距離が近く、改善・軌道修正の小回りが利く点にあります。一直線に目的地に向かおうとするのではなく、現場と専門家の意見を取り入れながら小さな改善を繰り返し、自社にとっての最適なDXの形を見つけていくことが、中小企業にとっての現実的なDXの進め方だと考えます。
次回以降は、具体的なDXの手法や、生成AIの普及でDXの進め方はどう変わるのかなどを考えていきます。
【勝野 大輔】




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