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連載企画 流通・物流・運送業に明日はあるのか? (2)

前回は、「送料無料」という販売戦略が、販売者・購入者の双方にとって有効な戦略である一方、物流・運送企業の持続可能性を損ねる「送料無料表示の功罪」について述べました。今回は、社会インフラの役割ゆえに「薄利で赤字体質に陥りやすい中で、どのように対応しているか」について述べます。

1.なぜ赤字でも撤退できないのか 

物流や貨物輸送は全国に物資を届ける社会的使命を担っています。過疎地や離島でも、郵便・宅配便・バス・鉄道・航空路線が維持され、住民生活を支えるために、採算が取れない地域でも公共性を背負うがゆえに、『撤退』は容易ではありません。多くの赤字要因は主に4つに整理できます。

1つ目は人口減少と地域格差です。地方では利用者数が減少しており、採算は悪化の傾向にあります。

2つ目は公共的使命の優先です。郵便法に基づく全国一律サービスや、バスが「交通空白地帯」を埋める役割は、収益よりも公益性が求められます。

3つ目は人件費と安全コストの増大です。運行管理や労働時間規制への対応、ドライバー不足などが採算を一層圧迫しています。

4つ目は料金構造の制約です。運賃自由化が進んでも、「利用者負担を抑えるべき」という社会的圧力が強く、料金改定が容易ではない状況です。   

さらに、経済全体の観点からすれば、モノやヒトの移動コストは低いほど望ましいと考えられています。輸送費や運賃が下がれば、可処分所得に占める交通・物流費の割合が減り、消費や旅行に回る資金が増えるため、移動コストの低減は購買力を押し上げ、経済全体を活性化させる効果があります。

そのため、こうした経済波及効果が社会的に『利用者負担を抑えるべき』との意識の背景となっています。そのため大手鉄道や航空企業の中には事業を多角化しており、不動産開発、金融、まちづくり事業などの周辺分野で収益を上げ、赤字事業を補完しながら社会インフラを維持しています。また、公共性と収益性の共存モデルを模索しながら、株主への利益還元にも応えています。

2.フリーライドとオーバーツーリズム(観光公害)への対応策

近年、この赤字体質に拍車をかけているのが、インバウンド観光に伴う観光公害です。観光地では鉄道・バス・航空便が外国人旅行者で満席となり、地域住民の通勤・通学・通院に悪影響が出ています。観光客は地域の公共インフラを享受しながら、その維持コストを十分に負担していないフリーライダーの側面を持ち、社会インフラの持続可能性を揺るがす大きな課題となっています。

対応策として、共同通信社の2025年8月24日付ニュースリリースによれば、2002年に東京都で導入された「法定外目的税」である「宿泊税」は、2026年までに全国の35の自治体導入済みまたは導入予定であり、さらに32都道府県の92自治体が検討中とされています。また、経団連は10月10日に観光公害対策の財源として宿泊税活用を提言しており、「利用者の一部負担増」の潮流です。

3.ローコストを支える「見えない仕組み」 

厳しい経営環境の中でも、効率化の努力が続いています。低コスト輸送を支えているのが、ハブ・アンド・フォークスと3PL(サードパーティ・ロジスティクス)の仕組みです。各地の拠点(ハブ)に集約し、再び末端(フォーク)へと効率的に分配する構造は、まさに物流の血管のような役割を果たします。この仕組みにより、全国に物資を行き渡らせつつ、重複輸送や空車回送などの無駄を最小限に抑えています。さらに3PLの進展により、在庫・輸送・情報を一元管理し、企業間で物流ネットワークを共有することでスケールメリットを最大化しています。

輸送・運送業の中小企業が取るべき方向は、「地域密着型3PL」です。特定分野に特化した小規模3PLモデルを構築し、「配送+在庫+情報」を一体化して、ラストワンマイルを支える存在として、地域サプライチェーンの要になることです。あるいは、大手3PLの末端配送を担う協業企業として、幹線輸送後の地域内配送を請け負うことです。

さらに、複数事業者の情報を束ねる「物流商社」的機能を持てば、単なる運送から情報による価値創造型ロジスティクスへと転換できます。これらに加えてモーダルシフトへの取り組みも進んでいます。トラックから鉄道・船舶へと幹線輸送を転換し、CO₂削減と燃料費抑制を両立した環境対策に加えて、ドライバー不足や長距離運行コスト上昇を背景に、持続可能なローコスト輸送の基盤として再評価されています。しかし、EC市場の拡大と消費者の即日配送ニーズの高まりにより、一極集中型モデルはすでに過負荷状態に陥っています。

課題は、トラック待機列・夜間仕分けの慢性化、ドライバー・倉庫作業員不足、都市集中による物流偏在、そしてリバース物流(返品・廃棄)の増加などにあります。対応策として、IT・DXと3PLの高度活用が必要となります。AIやIoTを活用したスマートハブ化による無人化、AIルーティングによる動的配送計画、巨大ハブ依存から地域中核のマイクロハブへの移行を通じて、徹底したコスト最適化の努力が続けられています。

【川村 昇】

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