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連載企画 人とAIの共創時代 (1) AIに対する各国の動向と中小企業への示唆

本連載記事では、我々が今後AIに対して、どのように向き合っていけばよいのか考察を深めていきたいと思います。2025 年は「AI エージェント元年」と呼ばれ、生成 AI やパーソナル AI が私たちの仕事・生活に本格的に入り込む節目の年となります。本記事では、各国の政策・標準化動向を整理し、中小企業が取るべき実践的ヒントをまとめたいと思います。

1.欧州 ― AI 法で「リスクの4段階」を明確化

EU は 2024 年に採択されたAI 法(AI Act)で「許容できないリスク/高リスク/限定的リスク/最小リスク」の4層に分類し、リスクの大きさに応じた義務を段階的に課しています。医療機器や雇用選考ツールなど高リスク用途では、市場投入前の適合性評価、リスク管理システム、技術文書の提出などが求められる一方、チャットボットやディープフェイク生成など限定的リスク用途には、ユーザーへAI利用を通知し、生成AIコンテンツを明示する透明性義務にとどまります。

さらにAI法で新設されたEU AI Officeは、汎用目的 AI(GPAI)モデル提供者の追加義務を示す指針を2025年4月にドラフトとして公開し、最終版「一般目的 AI モデル提供者の義務の範囲に関するガイドライン」を同年7月に公表しました。これにより、基盤モデルには訓練データやエネルギー消費の概要公開、リスク低減策の実施などが明確に求められています。

●中小企業への示唆:EU市場でプロダクトを展開する場合、自社プロダクトがどのリスク層に該当するかを早期に判定し、高リスクに当たる場合は技術文書・リスク管理計画の雛形を整備しましょう。

2.米国 ― 自主ガイドライン&フレームワーク型

米国連邦政府は EU のような包括的 AI 規制法をまだ制定しておらず、2023 年1月公開のNIST「Artificial Intelligence Risk Management Framework 1.0(AI RMF 1.0)」を核に、自主的なリスク管理を推進しています。AI RMFは、GOVERN–MAP–MEASURE–MANAGEの4機能から構成され、循環的に適用することでAIリスクを低減します。さらに、NISTは2024年7月に「Generative AI Profile(NIST AI 600-1)」を正式公開し、生成AI特有のリスクと管理策を整理しました。

●中小企業への示唆:米国企業や政府調達と取引する場合、AI RMFに準拠した開発プロセスGOVERN機能を中心としたガバナンス体制をRFPや監査で説明できるよう、社内ルールとリスク記録テンプレートを整備し、生成AIを用いる場合はGenerative AI Profileに沿った追加管理策も組み込みましょう。

3.日本 ― ソフトローで機動力を担保

経済産業省・総務省が共同で「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を2024年4月に公表し、今後も状況に応じて改訂を重ねる「リビングドキュメント」方式を採用しています。実際に2024 年 11 月に第 1.01 版、2025 年3月に第 1.1 版 が公開。さらに 2024年2月には独立行政法人IPA内に AIセーフティ・インスティテュート(AISI)が設立されました。

●中小企業への示唆:法的拘束力よりも「取引先に提示できる倫理・品質基準」を整備することが信頼獲得の鍵です。ガイドライン付属のチェックリストを自社のPDCAサイクルに組み込み、AISIから発信される評価項目や更新情報を継続的に確認しましょう。

4.国際標準化 ― ISO/IEC JTC 1/SC 42が担うAI規格化のハブ

AI分野の国際標準作りは、ISO/IEC JTC 1/SC 42(Artificial intelligence)が中心となって進めています。同委員会には 48 か国が参加メンバー、27か国がオブザーバーとして参画しており、計75か国が関与しています(2025年7月時点)。

●中小企業への示唆:海外企業と取引する部品サプライヤーやBtoBベンダーは、契約条件に「ISO/IEC 42001(AI マネジメントシステム規格)への準拠」や「ISO/IEC 27090(AI サイバーセキュリティ指針)/27091(AI プライバシー保護指針)に沿った対策」が求められる可能性を想定し、早期のギャップ分析と体制整備を進めることで競争優位を獲得しましょう。

【まとめ】

AIエージェント時代の競争軸は「速さ×信頼」です。法規制を恐れるより、各国フレームワークを積極的に活かし、透明性と説明責任を担保したプロダクトをいち早く市場投入する。これが中小企業の最大の防御であり攻撃にもなります。

【井上 雅之】

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